受託開発(クライアントワーク)や客先常駐(SES)と比較してホワイトな環境で仕事ができると人気の「社内SE」。
この社内SE、求職者に対して求人数の割合が少なく、少ない椅子を多人数で争う傾向にあるんです…!
求人サイトの社内SEは落ち尽くしたから自社開発してる企業探してるけど、ほんとSES企業ばかりで探すの大変
— ひよち🦋C98 5/3(日)南リ37b(絵担当) (@hiyohiyo8426) March 17, 2020
社内SEは人数少ないところが多いので、基本欠員がでないと求人を出さない。
居心地がよければ長く続けられるので、いい職場の求人はなかなかない。
社内SEの求人は最初から疑ってかかるくらいがちょうどいい!
— ゆゆ@副業で月利30万達成 (@YU_meigunshi) March 17, 2020
今回は社内SEへの転職に興味がある方に向けて、仕事内容や求人の探し方を解説します。
社内SEとは?一般的なSEと社内SEの違い
ご存知の通り社内SEとは、社内で管理しているITシステムの保守やIT資産の管理などを行うエンジニアの総称です。
第一線でシステム開発を行う受託開発会社のPGと比べるとヘルプデスク業務や外注管理が多い傾向にあります。
社内SEに求められる業務範囲は主に以下の6つです。
1. ヘルプデスク業務(問い合わせ・トラブル対応)
「ログインパスワードがわからなくなった」「社内システムにトラブルがある」「急にインターネットにつながらなくなった」など、社内のスタッフから寄せられる問い合わせや、トラブルへの対応をする仕事です。
2.社内ITインフラの管理(サーバーやネットワーク環境の整備)
社内システムを安定的に運用するのに必要な、ネットワークやサーバーなどインフラ周りの構築・運用・保守を行う仕事です。ネットワーク機器の故障やサーバーダウンなどの不意のトラブルにも対応します。
3.セキュリティ管理(サイバー攻撃対策)
事業会社が力を入れているサイバーセキュリティ対策も、社内SEの重要な業務のひとつです。外部からのサイバー攻撃や、内部犯による情報漏洩を防ぐためには、セキュリティ環境の向上や、日常的な監視が重要です。
4.社内業務システムの管理(ソフトウェアのインストール)
社内で使う、勤怠管理システムや会計・在庫管理システムなど、所属する会社で利用するシステムの運用やバージョンアップ、データ管理も、社内SEの仕事です。開発業務を外部に委託する場合は、開発ベンダーとの調整も進めます。
5.IT資産管理
社内のIT資産管理も、社内SEの業務のひとつです。IT資産とは、以下のようなものが含まれます。
【IT資産の一例】
- ハードウェア
- クライアントPC・サーバー
- ソフトウェア
- OSシステム・ソフトウェアライセンス
- 周辺機器
- プリンタ・複合機・ネットワーク端末
- 外部記憶媒体
- メモリーカードやUSB、外付けHDD
- インフラ
- ケーブルや無線LAN
たとえば、新入社員や中途採用が入社した際、貸与できるPCがどれくらいあるのかといった数の把握、利用できるソフトウェアライセンスの残数などの把握が、IT資産管理業務に含まれます。
6.社内ツールや自社向けアプリケーションの開発
これは一般的なPG/SEと同様の開発業務ですが、発注者(お客様)ではなく社内(営業部、総務部、マーケティング部などいろいろ)であることに大きな違いがあります。
こうして見ると社内SEは業務範囲がとても広いですね。大きな会社になるとこれらがシステム部門の中でも細分化され、担当者が分けられたり「部」や「課」として分類されたりしています。
法人契約を代理で取り交わして契約してきた。社内SEって業務が多岐に渡るな。
— のんちゃん (@lovely_nonpass) March 18, 2020
開発に集中できない環境で、今ひとつエンジニア業務としての魅力に欠けるように見えるのですが果たしてそのメリットとはなんでしょうか?
社内SEが人気の理由ベスト3
1.給与や福利厚生が安定している
社内SEが人気の理由として一番にあげられるのは、「働きやすさ」です。
社内SEの給与や年収の相場
マイナビエージェントの調査によると、社内SEの給与平均は516万円です。
(引用元:社内システム企画・社内SEの平均年収・給料(給与)を紹介|マイナビエージェント)
エンジニアとしての年収は決して飛び抜けた金額ではありませんが、一度ポストに付くと立場や給与も安定するのが事業会社の正社員。
事業会社では福利厚生制度が整っていることが多く、厳しい納期に追われることもありません。
産休・育休制度が整っている企業も多いため、結婚後も続けやすい職場です。有給休暇もしっかり消化できます。
2.キャリアパスがわかりやすい
社内SEの出世コースは管理職への昇進です。
システム部門も「ヘルプデスク」と「社内向け開発」で部門やチームが分かれていることが多いので、まずはその中のマネージャーやリーダーを目指すことになるでしょう。
スタートアップなら実力次第で企業のIT戦略の立案や推進を行うCIOやCTOとして役員の仲間入りを果たすことも珍しくありません。
3.納品相手の顔が見える仕事
社内SEの一番のクライアントは、一緒に働く社員です。営業が受注してくるクライアントワークと異なり納品相手の直接やり取りできますし、ときに感謝の言葉をいただけることもあるでしょう。メンタルによい仕事とも言えます。
下記の表は、Dodaの調査による社内SEの転職前、転職後の職種です。どちらも社内SEが一位なことからも職種としての人気が伺えますね。
(引用元:社内SEとはどんな仕事?|Doda)
転職体験記:長期的な雇用とキャリアアップを求めて
(引用元:Notesエンジニア、中小SIer(客先常駐)から、総合リース会社の社内SEへ | ELITE Network)
こちらは、実際に転職して社内SEになった方の転職体験記です。
この方は、Notes専門で事業を行っている企業に所属して、派遣契約という形で単身客先に常駐する形態でシステムエンジニアの仕事をしていました。
しかし、こうした形態は40歳を超えると案件の獲得が難しくなる傾向があるため、前職での長期案件が終了したタイミングで転職を決意。
「今後10年以上継続して働けること」「プロジェクトマネージャーを経験できる可能性があること」の2つを条件として、転職活動を行い、最終的に長期のキャリア形成が望める事業会社の社内SEの職につきました。
これは、社内SEのメリットである「安定した働きやすさ」と「キャリアパスのわかりやすさ」を求めて転職された典型的な例でしたが、こうした転職理由はこの方に限った話ではありません。
最前線でプログラミング等の製造業務に携わり続けることを望まない方にとって、社内SEは理想的な職種なのです。
とはいえ、社内SEにもメリットばかりがあるわけではありません。ここからは、社内SEのデメリットとはを確認していきましょう。
企業体質に合わないと地獄?社内SEのデメリット3つ
1.業務の幅が広すぎる!
社内SEの仕事は、IT資産管理からヘルプデスク業務まで、いわば「IT関係のなんでも屋」です。
配属によってはプログラミングに携われないこともあります。(大手企業の社内SE求人はほとんどがヘルプデスクかPM的な業務です)
第一線でモノづくりをし続けたいという職人タイプのエンジニアには不向きです。
「社内SE」って仕事内容の幅広すぎるから求人を見るときは要注意
ヘルプデスク、ただの総務や事務、オペレーター、発注係、プログラマ、SE、プロマネなんでもあり
— えいじおー@Webサービスを作った (@eizio_studio) July 1, 2019
2.「パソコンの先生」的な扱いに耐える必要がある
社内SEは、その性質上ITリテラシーの低い方に対する「社員のパソコンの先生」的な立ち回りが求められるため、それがストレスになる方も多いです。ヘルプデスク部門はこの典型です。
学術系の会社の社内SEから、文系の会社の社内SEに転職したんだが、詳細な説明をしないのは何かつらい。
今までは「Aという原因があったのでBという方法で解決しました」だったのに、今は「解決しました」です。
説明しても相手の頭は「?」だし、上司から工数の無駄だから結果だけ伝えろと・・・— そよ@ダイエット中 (@soyofutaro) August 7, 2019
3.業界・会社の方針に左右される!
社内SEは業界や会社の方針に、業務範囲が大きく左右されます。
筆者が以前在籍していた会社ではセキュリティリスクを恐れるあまりに新しいシステムを導入できず、超非効率な思いをしながらレガシーなシステムを使い続けていました。
新しい技術にどんどんチャレンジして、経験を積みたいエンジニアにとって社内SEは不向きです。
社内SEの求人はどうやって選ぶ?
前述の通り社内SEに転職するメリットは「安定・福利厚生・自由」であり、デメリットにもなりやすいのは、「社風と仕事内容」です。
つまり社内SEへの転職を成功させるには、自分に合った社風・仕事内容を見極めることが重要です。
そのためには逆説的ですが「自分が社内SEとしてやりたくないこと」を明確にすると良いかと思います。
例えば
- なんでも屋ではなく開発に専念したい
- 開発環境やプロダクト、フレームワークが明確な求人を選ぶ
- 「パソコンの先生扱い」は避けたい
- ヘルプデスク系の求人は避ける
- レガシーなシステムに関与したくない
- 重厚長大系(建設・建築・不動産・重工業)老舗企業または銀行の求人は避ける
といった具合です。時にはやりたいことよりも絶対にやりたくないことを鮮明にした方が転職先を選びやすくなるものです。
結果として自分が開発系業務メインで携わりたい、と考えるのであればスタートアップ企業、
そうではなく社内システムの保守業務に魅力を感じる場合は大手企業への応募にチャレンジすることをおすすめします。
※クリックで解説にジャンプします
スタートアップへの転職ならGeekly
スタートアップではヘルプデスク業務は少ないですし、サクラダファミリア化してしまったレガシーな技術に翻弄されることもありません。また、保守より新規開発の業務が多いのも特徴です。
このような環境を望まれるのであればスタートアップへの転職に強いGeeklyを利用すると良いでしょう。
比較的新しいサービスとなりますが、GeeklyはWeb系企業やスタートアップの求人紹介に力を入れている転職サイトです。
「スタートアップの中でも業績が伸びているところを中心に教えてくれた。自分では情報が探しにくいので助かりました。」、「ゲーム系の求人が充実していた。特にWeb系スタートアップのエンジニア求人は高年収の募集が多かった。」という口コミの通り、ITスタートアップ・ゲーム業界に特化しており、大手志向というよりスタートアップでチャレンジングな環境に身を置きたい方にマッチしています。
大手・メガベンチャーへの転職ならマイナビIT AGENT
大手企業の社内SE業務はヘルプデスクやIT資産管理、インフラ構築などの保守業務が中心です。(そのためActive Directoryの設計・導入やITIL対応の経験があると内定率が上がります)何より充実した福利厚生は大手企業の最大の魅力。
ナショナルクライアントやメガベンチャーの求人はやはり大手の求人代理店に集まります。中でもマイナビIT AGENTはドメスティックな大企業の社内SEや大規模開発案件に絡んだ求人に強いことで有名です。
口コミでは「担当者のITリテラシーが思った以上に高く、ストレスなく転職活動を進めることができた」、「大手系の案件は確かに多かった。スタートアップ志望なら他社も見た方がいいと思う。」という評価で、特に大手やメガベンチャー系安定企業への転職に強みがある大手転職エージェントです。
どちらにも共通するのは、転職の相談に乗ってくれるアドバイザーがIT業界や伸びている業界企業に詳しいこと。もう1つは、スキルやフレームワークのミスマッチが少ない(要は変な案件を紹介されてイライラしない)ことです。
安定した大手企業への転職をご希望であればマイナビIT AGENT、
プログラミングに関われるWeb系スタートアップ求人を狙っているのであればGeeklyと使い分けるといいと思います。
内定のポイントは非エンジニアとの折衝力
面接で最も問われるのは「非エンジニアとの折衝力」です。
社内SEに仕事を依頼して来るのは営業部署や経理部門、マーケティング部などの非エンジニア部門です。
相手の立場にたって考えてみてください。依頼者側もエンジニアと話が噛み合わず苦労した経験が少なからずあるものです。
技術の知識が無いのですから当然です。
例えば以下の求人を見てください。
<実際の求人>
(引用元:リクナビNEXT)
これはとある保険会社の求人です。
歓迎されるスキルとしてActive Directoryやグループウェアの知識に加え、他部署とのコミュニケーションスキルがピックアップされています。
志望動機例①
5年間、開発会社のエンジニアとして勤務して参りました。ここ数年はActive Directoryや仮想サーバーの導入といった案件にメインで携わってきました。
Active Directoryやサーバーの仮想化に関してはクライアント担当者もまだまだ詳細をご存知で無いことも多かったため、いつの間にかディレクターや代理店さんに連れ立って私もお客様先にご説明にいくようになりました。一般的にエンジニアは客先に立つことを嫌うケースが多いようですが、その経験もあり私は非エンジニアの方とのやり取りを苦にしないタイプだなと感じています。
社内SEという業務はまさにこの非エンジニアとのやりとりが重要であろうと予想しています。今回はActive Directory周りの経験とサーバーインフラ周りの経験を重視した社内SEの募集ということでしたので、仕事の幅を広げながら貢献できる仕事内容であると感じご応募いたしました。
志望動機例②
人事系コンサル会社のSEとしてお客様向けに稟議書の回覧や開発タスク依頼システムをRubyで開発・運用していました。与件の中にサーバー構築が含まれることも多かったので、インフラ系の業務にも自信があります。
この経験の中で、私の最大の強みは非エンジニアとのやり取りを資料化する能力だと感じるようになりました。
というのも、発注者は人事部署、依頼者は営業部署ということでどちらもエンジニアリングの知識がないためリクエストを可視化してから開発をスタートしないと危険です。そこで与件をドキュメント化して整理したり、プロトタイプを作成したりして納品物をすり合わせることで手戻りを防ぎ、結果的に開発納期を短縮しました。
今回御社では社内SEを募集されているということですが、案件のほとんどが総務部門からのセキュリティ強化に関するITIL系のテーマであると伺っています。非エンジニア相手の業務であれば、これまでの経験を活かして活躍できると考えご応募いたしました。
いずれの志望動機もエピソードを交えて「非エンジニアとの折衝力」を伝えていることがおわかりいただけるでしょうか?
単に「技術を知らない人とも話ができます」というのではなく、どういった属性の人とどういうやり取りをしてきたのか実務レベルで訴求することが大切です。