「不動産業界」と聞くとなんとなく「大きなお金を動かして羽振りがよさそう」「土地は無くならないし安定していそう」などのイメージがあるかと思います。
現職の将来性に不安を抱え、異業種からの転職を目指す方も多いのでは無いでしょうか。
1.未経験での不動産業界への転職は十分可能。ただし営業をやり込む覚悟をもって。
まず最初に申し上げたいのが、未経験でも大丈夫。十分に不動産業界を目指せます、
ということ。
不動産業界では40代の方が異業種から転職してくることも珍しくありません。
誰でもチャレンジを受け入れてくれる環境なのです。
特別なスキルを持っていない限り異業種からの転職はほぼ100%営業
一口に不動産業界といっても、代表的なものを挙げると不動産営業・仲介、不動産管理、不動産事務、不動産経営、不動産鑑定士などの職種があります。
しかし募集はほぼ100%営業職です。それだけは覚悟してください。
(プログラマーやWebマーケティングなど業界未経験の専門職での募集を除きます)
営業をがっつりやりきる!という覚悟をもって臨む必要があります。
基本的には接客業。土日祝日は休めません。
不動産業界のベースはあくまで接客業です。
相手の希望に合わせて動かなければ、場合によっては案件を落とすことになります。
稼ぎ時はあくまで休日で、そこは小売店と変わりがありません
ですから特に営業職は暦通りの休日にはなりません。基本は水曜日と木曜日が休日となります。
2.不動産業界は大きくわけて「賃貸」と「売買」の2種類
不動産業界は大別すると「売買」と「賃貸」とに別れます。
それぞれ特徴がありますので、まずは以下の表をごらんください。
売買 | 賃貸 | |
---|---|---|
給与 |
歩合の割合が大きい。 全ては自分の才能と努力次第。 成果が出れば青天井。 |
あまり高くない。 |
ノルマ | 厳しい。 |
売買に比べればプレッシャーは低い。 中には店舗目標のみの企業も。 |
入社難易度 |
高い。 他業種の場合、営業実績が問われる。 宅建を保有していると望ましい。 |
低い。 資格は不要、実績も問われにくい。 |
キャリア |
そのまま営業職としてキャリアを重ねる人も多い。 トップセールスは50代でリタイアも。 |
基本的に店舗のマネージャを目指す。 |
仕事のハードさ |
年中ハード。 休日出勤も当たり前。 |
繁忙期と閑散期の差が激しい。 |
お客様 |
ファミリー層や富裕層 中高年の方が中心 |
中には大学生も |
よく使われる 転職サービス |
リクルートエージェント マイナビエージェント |
リクナビNEXT |
不動産売買の基本は成果主義。セールスパーソンとしての道を極める
マンションや土地など「売買」系の営業はとにかく成果主義。受注に対してはおおよそ2.5~3%程の歩合(コミッション)がつけられます。
特に都心部の案件では扱う金額が1億を超えることもざらですので、成績が良い方は年収が2000万円を超えることも。
とても夢のある仕事ですが、その分成果が出せない場合は悲惨です。
価格ドットコムの調査によれば、不動産営業の平均年収は以下のとおりです。
(引用:不動産営業の仕事の年収・時給・給料情報|求人ボックス)
かなりの高収入なイメージのある不動産営業ですが、平均では他の営業系職種、たとえば法人営業の447万円や、個人営業の424万円よりも低くなっています。
実績をあげたトップセールスともなるとコミッションも含めて2,000万円もの年収を手にしていますが、営業成績が振るわず給与が伸び悩んでいる方も多いようです。
また、コミッションの割合が高い会社ほど歩合以外の給与部分が低いので、後述する賃貸業界の営業よりも年収が低くなることもあるでしょう。
このような給与体系のために同業他社はもちろん同僚でもあってもライバル。
日々熾烈な顧客の取り合いが繰り広げられます。
できるセールスパーソンは「地域の情報と人脈」を非常に大切にします。
物件そのものの情報だけでなく、地価の趨勢や今後の再開発予定、はては幼稚園・小学校の評判や近隣のスーパー事情までくまなく仕入れて見込み客との会話を盛り上げます。
そのためには勤務後に地元のお祭りや青年会議所に顔を出すなど努力を惜しみません。
こうした積み重ねが成績の差をつけるのです。
しかし、基本的にひとりで何件も不動産を買う方は多くありませんから仮にその年のノルマを達成しても、翌年には所得税の支払いのためさらに前年を超える努力と成果が要求されます。
成果が出ない方、努力を継続できない方は中途で入社しても2~3年以内に辞めていく厳しい世界です。
このためキャリアプランとしては2択です。
・管理職になる → 目標がなくなる分仕事は楽になるが、年収に上限が設けられる
・セールスを突き詰める → トップセールスとして稼ぎ続ける(中には50代で引退する方も)
ノルマは緩めで繁忙期と閑散期の差が激しい賃貸営業
賃貸でも営業は営業ですので数字は追わねばなりませんし決して楽な仕事というわけではありません。
業界の仕組み上結局レインズ(REINS。不動産流通標準情報システム ※)を通じて空き物件の情報は競合他社と共有されていますから紹介できる賃貸物件はどの店舗も大きく変わりません。(エイブルや積水ハウスのMUSTなど一部自社管理物件を扱う企業はありますが、物件数はごくわずかです)
お客様もSUUMOやホームズなどで十分な情報を仕入れてから来訪します。
それでもあなたを選んでいただけるかどうか、ここで接客力が問われます。
ある意味ブランドマンションなどでわかりやすい商品力を訴求できる売買より難しい仕事かもしれません。
レインズ(REINS。不動産流通標準情報システム)とは?
建設省及び当センターが共同で開発し、建設大臣から指定を受けた全国4個所の不動産流通機構が運営している不動産情報交換のためのコンピュータ・ネットワーク・オンラインシステムです。
(引用元:不動産流通推進センター)
ただし賃貸の営業は売買の営業に比べてノルマが緩めです。
基本的に店舗でお客様を待つ反響営業ですから、個人での必達目標を持たされず店舗単位で目標設定がされている企業も多いです。(特に賃貸大手企業)
この場合、店舗一丸となって達成に取り組むため人間関係は比較的良好なことが多いようです。
お客様に学生が多いのも不動産売買との違いですが、結局数字を積み上げるためには大口の契約が必要で、出向で日本に来ている外国人ビジネスマンや単身赴任の大学教授などの来店は絶対に取りこぼせません。
賃貸の場合、引越しが重なる繁忙期(11月~3月)がとにかく忙しい。
この時期は休日出勤も当たり前となるでしょう。
逆に閑散期はというと、繁忙期とは一点働きかたが変わり、大家さんやオーナーさんへのご挨拶周りが中心になります。この時期は定時に帰宅するのが普通です。有給も取得しやすいでしょう。
キャリアアップして年収を上げるためには管理職(店長やエリアマネージャー)を目指すこととなります。
3.未経験から不動産業界へ転職する方法
売買営業
不動産売買を取り扱うのであればとにかくブランドがある物件(野村不動産のPROUDシリーズや三井不動産のパークシリーズ、住友不動産のシティシリーズなど)のほうが断然売りやすいです。(その分看板に甘えてしまい営業力がつかない、という方もいます)
こうした大手デベロッパーはリクナビNEXTなどの公開求人になかなか出稿しませんから、大手へのパイプが強いリクルートエージェントとマイナビエージェントの非公開求人を頼るようにしましょう。
書類選考と面接についてですが、中高年の方や経営者の方と渡り合っていく必要があるため、売買のほうが賃貸に比べて入社条件は厳しいです。不動産未経験の場合は以下がポイントとなるでしょう。
・他業種のセールスパーソンとしての実績
・宅建士資格と運転免許は必須
・土地勘があるエリアがあると望ましい
<自己PRの例>
A社では○○支店○○営業所にて、注文住宅の営業職を経験して参りました。昨年度は○○万円を売り上げ達成率120%で営業所内でも1位を獲得しております。
しかし前職は老舗企業の管理下にあり、出世についても年功序列で保守的でした。そのため、成績を上げてもすぐさま金銭面や待遇に反映されないという不満がありました。
その点、新興企業でありながら〇〇地区の再開発にも携わった御社は、営業成績が待遇に直結する風通しのよい企業だと認識しておりますので、〇〇エリアには土地勘もありますし、これまでの経験を活かして成果をあげたいと考えております。
賃貸営業
賃貸営業は年間を通してエージェントよりもむしろリクナビNEXTの方が求人件数が豊富です。店舗数に比例して採用人数が多いため、人事側としても採用コストが高いエージェントより、リクナビNEXTのような掲載料の安い転職サイトの方が利用しやすいという事情があるためです。
応募についてですが、賃貸営業の場合、宅建士資格は不要です。(運転免許は必須なことが多い)
不動産に関する経験すらまったく問われないことも珍しくありません
求められるのはとにかく「明るさとタフさ」。異業種からの転職の場合はなおさらです。
<自己PRの例>
前職では飲食チェーンの総合職として2年間、店舗管理の仕事を任されておりました。このチェーンは新入社員研修に力を入れていることで業界内でも有名でして、入社後の1ヶ月間有名な管理者養成学校に缶詰にされたあとさらに1年間店舗の現場業務を経験しております。体力勝負のところがある仕事でしたががんばった分だけ成果に返ってきますし、会社からも評価されますから自分の性分にあっていました。
ただ一方で、業界の先行きに不安を感じてしまっているのは事実でして、持ち前の献身性を活かしてかねてより興味のあった不動産業界に営業としてチャレンジしたいと考えております。その中でも御社は賃貸と売買の両方を取り扱っていらっしゃいますので、賃貸で力をつけていずれは売買にステップアップしたいと考え応募いたしました。
こちらの自己PRで触れられているように、賃貸の営業が売買部門に異動することは珍しくありません。
もし自社が売買物件を取り扱っていなかったとしても、賃貸会社での実績をアピールできれば不動産売買会社への転職は現実的なルートです。営業未経験から「将来は不動産売買のセールスパーソンとして働きたい」とお考えの方におすすめのキャリアプランといえます。