広告業界とは
広告業界は大きく2つに分類され、マスメディア4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)とインターネット広告に分かれています。
2019年におけるデバイス別接触時間を調べた博報堂・メディア環境研究所の調査によると、「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」の接触時間と「スマートフォン・PC・タブレット端末」の接触時間は50:50との結果が出ています。
一見、どちらも同じように需要があるように見えますが、実際に使われる広告費には大きな変化が出始めています。
株式会社電通の「2018年日本の広告費」によると、広告費自体はマスメディア4媒体に軍配が上がるも、前年比ではマスメディア4媒体が96.7%と減少傾向、インターネット広告費が116.5%で、インターネット広告費がうなぎ昇りの状態になっています。
2018年だけではなく、インターネット広告費は5年連続で2桁成長となっていることから、マスメディア4媒体を超える日もそう遠くはないと言われています。
しかし、有事の際に企業が真っ先に削減するのが広告宣伝費です。
昨今のコロナ禍で、広告業界は大きな打撃を受けました。電通がまとめた2020年の日本の総広告費は前年比11.2%減と、リーマンショック以来の減少幅となっています。
これは、広告宣伝に旺盛な自動車や消費財などのメーカー、交通・レジャー業界が、テレビ広告や宣伝イベントの開催を取りやめたことが大きく影響しています。
成長するインターネット広告業界
コロナ禍で総広告費が減少する中でも、インターネット広告の成長は止まりませんでした。
2020年には前年比5.9%増となり、昨年追い抜いたテレビ広告との差を一層広げた結果になっています。
しかし、そんなインターネット広告にも課題があります。それは、個人情報保護規制への対応です。
Googleはブラウザー「Google chrome」において、広告のターゲティングに使われてきたクッキーの仕様を22年から禁止することを発表しました。
iPhoneなどを販売するAppleも同様に、アプリでの広告ターゲティングに必要なユーザー追跡の規制を強化しています。
この対応は、精度の高いターゲティングや広告の効果測定ができなくなる恐れがあるため、業界各社は対応に追われています。
広告業界の代表企業
大手広告代理店
電通グループ
日本国内2位の博報堂DYホールディングスの売上高の約4倍と日本最大の広告代理店であり「広告界のガリバー」の異名を持つ。(※Wikipediaより)
海外の広告会社を積極的に傘下に収めることにより規模が拡大し、近年では広告代理店グループとして世界5位の規模となっています。
売上高:4兆4,982億円
売上総利益:8,350億円
純利益:▲1,595億円
海外では、2016年に買収した米マークル社を中心にデジタルマーケティング事業の強化に邁進中。
売上総利益は国内より海外が大きくなっており、国内3,507億円に対し、海外4,843億円となっています。
博報堂DYホールディングス
国内2位の広告代理店である博報堂DYホールディングス。
自動車業界や外資IT企業の取り扱いに強く、近年は先端的なマーケティング企業を集めた組織「kyu(キュー)」を軸に、海外で買収を実施しています。
グループの中核を担う広告会社として博報堂があり、その他に「大広」「読売広告社」と「博報堂DYメディアパートナーズ」を完全子会社として傘下に置いています。
売上高:1兆2,979億円
純利益:264億円
ネット広告代理店
主にメディアレップから仕入れた広告枠を広告主に販売する企業を指します。
サイバーエージェント
ネット広告代理業でありながら、ゲーム、自社メディア「アメーバ」、無料動画配信サービス「Abema」など、幅広く展開しています。
昨今は動画広告にも注力しており、ネット広告代理店の中でも注目の企業です。
売上高:4,785億円
営業利益:338億円
セプテーニ・ホールディングス
株式会社セプテーニが手掛けるネット広告代理店。マンガアプリ「GANMA!」も展開しています。
※2018年に電通と資本業務提携
売上高:179億円
営業利益:22億円
メディアレップ(媒体代理店)
メディアレップとは、ネット広告代理店にとっては広告枠の買い付け先であり、媒体側にとっては広告枠を販売する窓口になる企業を指します。
D.A.コンソーシアムホールディングス
博報堂DYホールディングス傘下。
メディアレップ大手のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムとネット専業広告代理店であるアイレップを傘下に置く。
GMOアドパートナーズ
GMOグループのネット広告会社。
広告プラットフォームの開発・運営を手掛けている。
売上高:345億円
営業利益:3.6億円
アフィリエイト(成果報酬型)
アフィリエイトとは、一般のユーザーが広告主に代わり、購入や申込みなどがあった場合に報酬が発生する仕組みのことを指します。ユーザーと広告主の間を取り持つ立場となるのがアフィリエイト企業です。
アドウェイズ
アフィリエイト広告で国内首位。
中国やインド、東南アジアなどの海外にも事業展開しています。
売上高:490億円
営業利益:16億円
インタースペース
アフィリエイト広告「アクセストレード」を運営。
売上高:248億円
営業利益4.5億円
アドテクノロジー関連企業
アドテクノロジーとは、インターネット広告の売買や配信に関連した技術のことを指します。
代表企業
- フルスピード
- ジーニー
- フリークアウト・HD
- GMO TECH
広告業界企業の平均年収・年齢
企業名 | 平均年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
電通グループ | 1341万円 | 46.4歳 |
GMOアドパートナーズ | 523万円 | 35.2歳 |
サイバーエージェント | 733万円 | 33.2歳 |
アドウェイズ | 589万円 | 32.3歳 |
(参照元:会社四季報 業界地図2022年版)
広告業界の主な職種
営業
広告業界の営業職は、広告主に広告・宣伝企画を提案し、受注することが主な仕事内容になります。
広告主の課題やニーズを社内外の制作チームに伝え、広告主の希望に応えるためにスタッフ編成、予算、制作全体の調整を行います。
マーケティングプランナー
マーケティングプランナーは、営業からの情報をもとに、市場を調査し、商品やサービスを宣伝するための効果的な広告手法や制作物を企画し、広告主のニーズや課題、戦略に合わせてクリエイティブを依頼する職種です。
営業とクリエイティブ職の橋渡し役でもあります。
クリエイティブ
クリエイティブでは、広告表現にかかわる制作を担当します。
言葉で伝えるコピーライターやビジュアルイメージをつくるアートディレクター、ポスターや新聞・雑誌の広告などのデザインをするグラフィックデザイナー、CMのアイデアや構成を考えるCMプランナーなど総称して、クリエイティブと呼びます。
データサイエンティスト
データサイエンティストとは、データアナリストとも呼ばれ、ビッグデータを分析・解析し、売上につなげたり、ビジネスの付加価値を高めたりする職種です。
データサイエンティストは、ビッグデータを使ってビジネスの課題や問題を解決する際に、幅広く活躍することが求められます。
クライアントのニーズに合わせ、ターゲティングをすることが重要な広告業界では、データサイエンティストは重要な職種です。
エンジニア
広告業界におけるエンジニアの主な仕事は、広告業務を支えるビジネスツールやシステムを通じて、営業・マーケティングプランナーの業務を強力にバックアップすることです。
現場ごとに異なるスキルや、新しい技術の台頭に柔軟に対応する能力が求められるため、通常のエンジニアよりも非常にハードルの高い職種と言えます。
広告業界で転職するには
クリエイティブ職であれば求人数多
デザイナーやコピーライター、その上位職であるクリエイティブディレクターやアートディレクター経験者であれば、広告業界での転職は容易になります。
というのも、広告業界ではクリエイティブ職種の人材が常に不足気味の状況で、大手でも唯一中途採用を行っている職種でもあります。
人材不足の理由は、実務経験やスキルが求められる一方で、広告業界以外にもさまざまな企業が優秀なクリエイターやデザイナーの確保に注力していることが要因として挙げられます。
特にWeb媒体に精通しているデザイナーやディレクターは重宝される傾向にあり、近年注目されているUIやUXに関する知識や経験が豊富な人材ほど転職しやすい環境となっています。
いきなり大手企業への転職は絶望的。それでも目指すなら…
業界最大手の電通では、毎年エントリー者が1万人近くに上るという情報もあり、中途採用は経験者でも狭き門となっているのが現状です。
しかし、大手企業への転職は厳しくても、大手企業のグループ企業であれば経験者・未経験者問わず募集していることもあります。
その中でも営業職の求人が多く、他業界での経験を活かしやすいため、広告業界では最も入りやすい職種といえます。
株式会社電通ダイレクト
(電通グループ企業、電通ダイレクトマーケティングとDAサーチ&リンクの合併企業)
【応募資格・必須条件】
- 業界問わず法人営業の経験がある方
- 新規顧客の開拓営業ができる方
- 広告業界が好き/ネット広告もしくはデジタルマーケティングが好きという方
(参照元:株式会社電通ダイレクトの過去求人・採用情報/ダイレクトマーケティングのコンサルティング営業(業界未経験者も歓迎です) - 転職ならdoda(デューダ))
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
(2019年に株式会社博報堂DYデジタルと統合)
【応募資格・必須条件】
- 大卒以上
- 社会人経験3年以上
- 広告代理店、WEB制作会社、メディア(出版・放送など)にて、営業やプロデューサーなど得意先折衝経験のある方
広告業界の営業は、クライアントのニーズを把握し、適切な提案をすることが仕事ですので、個人・法人問わず営業経験さえあれば、十分評価の対象になります。
数字を把握する力が他業界よりも求められるので、数字を意識した前職の成果をアピールすることが転職成功のカギとなります。
他業界の営業から広告業界への営業への志望動機例
私は住宅資材メーカーの営業として、製造メーカーと資材の流通販売を担う販売店を相手に約2年間営業活動を行ってまいりました。
取引先の各々の現状・要望・課題を聞き、相手の真意や要望・問題の肝を的確に捉えて改善・解決しつつ、関係各社との調整や協力支援体制の構築を行いました。
結果として約2年間で20社の新規取引先の獲得と前年比50%増の売上を達成することができ、幅広い製造メーカー様に資材を取り扱っていただけるようになりました。
広告業界は未経験ですが、多くの顧客数を担当していたため、フットワークの軽さやコミュニケーション力には自信があります。
御社は数あるインターネット広告代理店の中でも、メーカー系BtoBの支援を得意とされていると伺っております。資材メーカーでの現場経験と営業スキルを活かして、早期に活躍できると考え、ご応募いたしました。
未経験でも入りやすいインターネット広告業界
マスメディア4媒体・インターネット広告どちらにも言えることですが、広告業界は学生時代には全く覚えられない知識を要する業界です。
專門学校があるわけでもありません。なので、新卒採用が多くなりがちの業界ですが、中途採用でも未経験者の採用が行われていることもあります。
しかし、未経験から大手企業への転職はやはり絶望的です。
よって、営業職と同様にグループ企業またはインターネット広告代理店から目指すことをおすすめします。
未経験の場合、特におすすめなのはインターネット広告代理店です。理由は、インターネット広告業界の「未経験に対するサポート」の手厚さにあります。
さらに、インターネット広告の知識は、インターネット上に教材が多く存在しています。そのため、勉強しやすいという利点もあります。
試しにリクナビNEXTで「インターネット広告」で検索してみると、314件もの求人がヒットしました。一部未経験歓迎以外も含まれていますが、大多数が未経験歓迎の求人です。
下記は、リクナビNEXTで実際に掲載されていた求人票の一部を抜粋したものになります。このように、インターネット広告代理店は未経験者歓迎の求人票が多くなっています。
中には大手企業のグループ会社の求人もあります。ぜひ、一度リクナビNEXTで検索し、実際の求人票を確認してみてくださいね。
無料で取れる資格で未経験でもやる気をアピール
未経験者でも資格を取得すれば、初期教育の労力を大幅に軽減できるため、企業にとっては十分な評価となります。
資格の取得までは必要ありませんが、学ぶことで広告業界で働きたい意欲を見せることが重要です。
ここでは、広告や分析の基礎知識を無料で学べるおすすめの資格を紹介します。
Googleアナリティクス個人認定資格
インターネット広告の仕事をしていると必ず必要になるのが、サイトやLPのデータ分析です。
そのために必要なのが「Googleアナリティクス」という分析ツールです。
Googleアナリティクス個人認定資格を取得することで、Googleアナリティクスを使いこなすために必要な知識を体系的に身につけることができます。
GoogleアナリティクスアカデミーというGoogleが提供する無料のオンライン講座で学習し、学習後すぐに試験を受けることができます。
入社時にGoogleアナリティクス個人認定資格を保有していれば、未経験でも実際の業務に必要な基礎知識を持っていることを証明できるため、未経験でも転職に有利になります。
Google広告認定資格
Google広告認定資格とは、世界中にユーザーを持つWeb検索サービス「Google」が主催する、Googleが公式にリリースしている広告の理解と知識を証明する資格です。
試験は6科目で構成されており、合格すると広告に関する各分野の専門知識を習得していることが証明されます。
Google広告認定資格もGoogleアナリティクス個人認定資格と同様に、Googleスキルショップで無料で学ぶことができます。
Yahoo!にも「Yahoo!プロモーション広告プロフェッショナル認定資格」がありますが、有料になってしまう上に合格するには自己学習では厳しいため、無料で学んで受験できるGoogleをおすすめします。
広告業界まとめ
マスメディア4媒体の業界とインターネット広告業界、どちらも衰えることのない伸びしろのある業界です。どちらの業界もまだまだ余力はありますが、インターネット広告の方が伸びしろが大きいので、マスメディア4媒体を上回るのは時間の問題かもしれません。その反面、自動化が進むと仕事が奪われてしまう懸念もありますが、どちらに進んでも消えることの無い需要であることは確かだと思います。
広告業界への転職におすすめの転職エージェント
筆者がWebマーケティング業界で転職活動をした2019年夏頃は、広告業界の人手不足のようでした。どの転職エージェントに登録しても、紹介される求人数に驚きました。それほど、広告業界の人手不足が広がっているということだと思います。
今回は利用した中でも広告業界に知見があり、詳しくお話してくれたキャリアアドバイザーがいた転職エージェントをご紹介します。
doda
dodaのキャリアアドバイザーは広告業界專門の方で、面談の際も業界に関する細かい部分までお話して頂けました。他の転職エージェントでも專門の方と面談させていただきましたが、dodaがずば抜けて知見が合ったように思えました。紹介される求人数も豊富で、多すぎて見切れないほどのメールが届きました。この中から自分に合った勤務地や、各条件を見つけ出し、応募することが広告業界で良い転職をするポイントになるのではないでしょうか。
リクルートエージェント
リクルートエージェントもキャリアアドバイザーは專門の方が担当になっていただけました。dodaとは違い、インターネット広告寄りではなくマスメディア4媒体寄りだったので今回はあまり合いませんでしたが、マスメディア4媒体を希望している方にはマッチしていると思いますのでこちらもご紹介させていただきます。
転職エージェントはこの2社を併用することをおすすめします。キャリアアドバイザーのサポートやサービスは各社のいいところだけを利用するのがいいと思いますが、求人情報だけはどうしても差が出てしまいます。というのも、どちらも同じ求人情報が載っているわけではありません。より良い条件の企業に転職するためにも、2社の求人情報を見てみることをおすすめします。