企業が保有しているビッグデータを様々な角度から分析し、活用方法を考案するデータサイエンティスト(データアナリスト、と呼ばれることもあります)。
「サイエンティスト」という名称から理系のイメージが強いですが、最近注目の職種ですので仕事内容に興味がある文系出身者も多いのではないでしょうか?
結論からお伝えすると、未経験からでもデータサイエンティストを目指すことは可能です。
本稿では、データサイエンティスト(データアナリスト)の仕事内容と未経験から転職する方法をご紹介します。
データサイエンティストの仕事内容とは?
データサイエンティストの仕事は、企業が保有しているビッグデータを、様々な角度から分析し、活用方法を考案する仕事です。
所属する会社や業界により分析の対象は様々ですが、おおよそ以下の3つのプロセスに大別されます。
- データ収集/蓄積(社内の各セクションからデータをもらって、保管する)
- 分析(プログラムやツールを使って、もらったデータを分析しレポートにまとめる)
- レポーティング(ビジネスへどのように活かすかのKPI提案)
データ収集/蓄積
データ収集
ビジネスの課題に合わせて、必要なデータを社内の各セクションから受け取ります。
データ収集プロセスが確立されている職場では、業務システムのログやSNSのAPIからデータを収集。データ収集の際に必要なバッチの構築・運用も行います。
データの蓄積
収集したデータを蓄積するために、プログラミング言語を用いて、いわゆるデータベース環境を構築・運用します。
蓄積したデータを取り出す環境を構築・運用
BI(Business Intelligence)ツールの整備や、Hive、pigのようなデータ操作環境を構築・運用します。
分析
データ操作環境を使用してビジネス上の意思決定を助ける知見を探ります。分析方法には、仮説検証型と、知識発見型の2種類があります。
[仮説検証]
仮説を複数出し、どの仮説が正しいかを検証するアプローチ。
[知識発見]
データにあたり、その結果を解釈するアプローチ。
知識発見型の分析には、データ操作環境としてIBM社のSPSSや、オープンソースのRなどが用いられることが多いようです。また、レコメンデーションエンジン開発などで用いられる機械学習も知識発見型アプローチのひとつです。
レポーティング(KPI報告)
データ分析をした結果、KPIを設計、見える化、必要に応じて意思決定者に共有、提案します。
レポーティングや提案の相手はマネジメント層や経営陣である場合が多いです。
本当に重要な指標が見えづらい大量のデータ(ビッグデータ)の中から、ビジネス上で重要な指標(KPI: Key Performance Indicator)を整理、見える化し、マネジメント層へ提案するのが、データサイエンティストの仕事です。
最終的に求められるのは「正しい意思決定」、また、「時間やお金のコストカット」を提案することで企業に利益をもたらすことです。
ちなみに扱うデータの元をたどれば大切な個人情報であることが多いです。コンプライアンス意識をもって慎重に取り扱う必要があります。
リクナビの「内定辞退予測」サービス問題(※)は記憶に新しいところ。
※ リクナビの「内定辞退予測」サービス問題
就職情報サイト「リクナビ」が、「就活生が内定を辞退する可能性」を予測し、企業に提供するサービス「リクナビDMPフォロー」を提供した問題。2019年に発覚。30社以上の企業にデータを提供していたことが発覚。行動パターンの分析対象になった学生は7,893人に上る。
学生には「行動データを企業に提供する場合がある」とプライバシーポリシー上で説明し、リクナビ登録時に同意を得ていたが、個人情報保護委員会などからは「同意を得る仕組みがわかりにくい」との指摘が出ていた。
データサイエンティストに必要なスキル
データサイエンティストの仕事が以下の3つの段階に分かれていることはここまでにご説明しました。
- データ収集/蓄積
- 分析
- レポーティング
3つの段階で、データサイエンティストにはそれぞれ以下のスキルが求められます。
どのスキルをどの程度の水準で持っているかによって転職市場で評価が決まりますので、順番に解説します。
プログラミング(Python)
データサイエンティストに依頼されるほどのデータには、エクセルなど到底おいつきません。
大容量すぎるためデータを格納するサーバーに上げるのも一苦労という代物です。
そのため、この整理を効率化するプログラミングとは切っても切り離せません。
プログラミングスキルがなければ、データサイエンティストとして活躍することは不可能といえます。(次項で解説しますが転職時に必須というわけではありません。)
ですが、逆に、プログラミングスキルがあれば、データ分析環境の構築者として即戦力級の活躍ができるともいえます。転職時にこれは圧倒的なアドバンテージとなります。
データサイエンティストで最も使うプログラミング言語はPythonかR言語です。
特に、AIとの関わりが深く構造がわかりやすいPythonは需要が高いです。
Python(パイソン)とは…?
人工知能(AI)や機械学習(ディープラーニング)に長けた言語。
Google、Facebook、Instagram、YouTubeなど、2010年代以降に隆盛したサービスの多くで使用されている。構造はシンプルで学習しやすい部類であり、データサイエンティストの実務においても、基本的にはデータ整形の処理を書くことが多く複雑な処理を書くことは少ない。
プログラミング言語のなかでも、比較的習得しやすいため、学習をはじめておけばデータサイエンティストまでの距離がぐっと近づく。
なお、いくら初学者にやさしいPythonとはいえいきなり独学で習得しようとするのはさすがに無理があります。プログラミングスクールを使って短期集中で学習することを検討してください。
オンラインプログラミングスクールとして有名なTECH ACADEMYにはデータサイエンスコース(¥149,000/月)が用意されています。
※ ちなみにこのコースでは統計学の基礎も身につけることができます。
統計の知識
「データサイエンティストというからには、理系人材じゃないと厳しいんじゃない?」と思われている方は多いです。
また、プログラミングスキルがなければ、データサイエンティストとして活躍できないとお伝えしたことで、「自分ではデータサイエンティストへの転職は難しい」と思った方もおられるでしょう。
しかし、諦める必要はありません。
データサイエンティストの現場で強く求められているのは、実は統計に長けた人材です。
大学・大学院で統計学の基礎を学んだ方は、その知識を存分に活かすことができます。
実際、統計を学んだ人材を求める求人が増えています。
こちらは実際にリクルートエージェントから出ているデータサイエンティストの求人です。
これまでに培った分析や統計学の知識を活かし、エンジニアとして専門的なスキルを身に着けませんか?
未経験から3ヶ月間の座学研修を経て、大手企業を中心にAIシステムなど様々なプロジェクトに携われます。
※ 求人票より抜粋
とあり、統計学を学んだ人材が強く求められているのがわかります。
またこちらは、dodaに掲載されている、未経験者歓迎・データサイエンティスト(データアナリスト)の求人です。
歓迎要件に「統計学に関する基礎的な知識をお持ちの方」とあり、統計学に強い人材が現場で必要とされているのがわかります。統計に対する素養が重視され、Pythonなどのプログラミングは入社後の研修で覚えればよいというスタンスの求人は多いです。
わかりやすく説明する能力
専門知識がない人に対して、わかりやすくかつ論理的に説明する能力が高いと重宝されます。
データサイエンティストのしごとを平たくいえば、「①データを集め」、そして「②データの集計結果を発表する」仕事です。
① データを収集するためには、他部署(マーケティング部やシステム部署)にその意図や方法を説明しなければなりません。
② 集計結果を発表する相手は専門知識が無い経営者や部門長です。かれらに納得してもらわなければ、いくらクリティカルな内容でも絵に書いた餅になってしまします。
経験者の間ではよく、
と言われます。もちろん「エクセル職人」(ここではデータ加工のプロの意)も大切なのですが、未経験者の場合はなかなかそういった能力をアピールしにくいため、「わかりやすく説明する能力」をアピールできる材料を用意できると良いでしょう。
つまり、文系だからデータサイエンティストになれないとは限らない
データサイエンティストで内定を得るための要素をおさらいします。
この内の2つを満たしていればデータサイエンティストを目指す資格は十分です。
この点を踏まえるとデータサイエンティストに転職しやすい職種としては、「エンジニア」「マーケッター」があげられます。
エンジニアであればプログラミングは業務で使っていますし、マーケッターであればわかりやすく説明する能力を身に付けている場合が多いからです。
その他、大学・大学院で統計学を専攻していたという方も、転職しやすい傾向があります。
とはいえ、これだけでは3つのうち1つの条件しかクリアしていませんので、残る2つのうち1つは独学で身に付けなければなりません。
実際に未経験からデータサイエンティストに転職された方の転職体験記から、どのような学習をしたのかを確認してみましょう。
転職体験記 - 情報系学科卒、メーカー生産技術職勤務からデータサイエンティストへの転職
未経験からのデータサイエンティスト転職までにやったこと | ハピライフ(2022年5月3日)
こちらの方は、大学時代に情報系学科で統計学を専攻し、スポーツデータの分析をされていました。
新卒でメーカーに入社し、工場で生産技術職として4年間勤務されていました。その後1年の独学を経てデータサイエンティストとして転職を成功させました。
1年の独学の期間の学習内容は、以下の通りです。
短期間で企業に求められる人材になるために、学習する内容は、転職エージェントに相談して絞り込み、目標を定めたそうです。
こうした学習・実践によって、「プログラミング」と「統計の知識」を身に付けた状態で転職活動にに臨まれました。
資格としては、「統計検定2級」「基本情報技術者」「Python基礎データ分析試験」を取得されていたようです。
また、知識だけでは不十分と考え、現職での実績作りも行っていました。
具体的には、勤務先の工場において手書きで取っていた生産記録をデータ化し、Pythonを用いて分析、可視化し、不良分析資料や改善資料の作成などを行ったそうです。
この方の場合は、「プログラミング」と「統計の知識」に加え、仕事を続けながら学習する意欲や実際に仕事に活かす積極性や応用力も評価されたように感じられますが、未経験からデータサイエンティストを目指すにはこの水準の努力が求められると、捉えることもできます。
未経験からデータサイエンティストを目指す方向けの志望動機例文
こうした事例をもとに、実際に志望動機に落とし込んだ場合の例文をみてみましょう。
看護師に特化した転職サイトのWeb担当者として、流入の増加やCVRの改善に取り組んできました。
現職での経験の中で、私の最大の強みは非エンジニアとのやり取りを資料化する能力だと感じるようになりました。
というのも、Webサイトの成果改善は開発の承認を得なければ話が前に進みません。そこでアクセス解析データを元に上長を説得したり、エンジニア向けに与件をドキュメント化して整理したりして関係者の意思決定を助ける工夫が社内でも好評だったからです。
今回御社ではWebメディアで収集したユーザーデータの分析担当者を募集されているということですが、そのような環境であれば私の経験が活かせるものと考えご応募いたしました。データサイエンティストの仕事そのものは未経験ですが、統計については大学時代に基礎を学んでおりますし、現職でもWebのアクセス解析でBIツールを活用していましたのでスムーズに現場に溶け込めると考えています。
「説明能力」と「統計の基礎」をアピール材料にした例。
この例の良いところはそれらに加えて、「Webメディア」という現職と応募先の共通軸を見つけて志望動機に落とし込んでいるところ。
- 業界専用テンプレで選考通過率UP
- 面倒な「自己PR」文もカンタンに。忙しい転職活動を効率化
- 作成するだけで、自然と転職のコツが身につく
- Wordが無くても大丈夫。Googleドキュメント版で手軽に編集可能
データサイエンティスト職の給与や年収と将来性
仮に文系職からデータサイエンティストに転職した場合、年収はどれくらい変わるのでしょうか?
Indeedの調査によると、データサイエンティスト職の年収平均は、以下の通りです。
(引用:データサイエンティスト の 日本 での給与|Indeed)
上記は営業系の平均給与・526万円(Indeed調べ)よりも170万円以上高い数字です。
今のところは右肩上がりの売り手市場であり、年収相場も他の職種と比べ高いものとなっています。
平均的な給料をもらっている営業の方が、データサイエンティストへキャリアチェンジしたら、月給に換算して約10万円アップできる計算です。
給与的にも魅力があるデータサイエンティストですが、将来性も十分にある仕事といえます。
AI技術の進歩により、データサイエンティストという仕事がなくなるという噂を耳に使途ことがある方もいるかもしれません。
データサイエンティストの仕事において重要な、理論考案やモデル作成、新たな定義づけなどをAIが苦手としているため、現実的には、AIがデータサイエンティストの仕事の全てを担うことは難しいといわれています。
(画像引用:マーケ系ミドルは平均年収753 万円 データ系求人は 7.5 倍に | 日経クロストレンド | 2019年10月04日 )
また、日経クロストレンドの調査によるとデータサイエンティストの求人数が右肩上がりに増加しており、2017年4~6月と2019年4~6月を比較すると、7.5 倍にもなっています。
現状では、ビッグデータ市場は拡大傾向にあるため、データサイエンティストの需要は、この先もしばらくは高い水準で推移すると予想されます。
データサイエンティスト求人を探すには?
リクナビNEXTで、データサイエンティストの求人を探すと、全国で104件がヒットしました。
しかし、未経験者を歓迎している求人は6件と大変狭き門となっています。(2019年9月調べ)
そこでおすすめしたいのがマイナビエージェント。
転職Doの口コミ調査でも一番人気、転職初心者にも親切にサポートしてくれると評判の転職エージェントです。
(目につくのは地方求人に弱い点ぐらい)
データサイエンティストの求人もばっちり紹介されていました。リクナビNEXTを超える123件もの求人が掲載されています。(2020年4月現在)
マイナビエージェント
迷うことのない求人紹介
専属のキャリアアドバイザーが厳選した求人情報のみを紹介してくれます。
利用者の口コミ
- 32歳 男性
明らかに他のエージェントとはスタンスが違う。「とにかく転職してください!」という雰囲気ではない。
- 26歳 男性
職務経歴書作成の段階から手取り足取りサポートしてくれて、助かりました。サイトも他社のようにごちゃごちゃしておらずシンプルで使いやすいです。
- 29歳 女性
担当の方は熱心だったのですが、地方の求人にはあまり力を入れていない様子でした。