未経験でも応募可能な求人が多い営業職。
若手人材が歓迎されるのはもちろん、30代からの転職でもチャンスがあります。一見間口の広い職種だからこそ、成功するためには人一倍の工夫や行動が求められるでしょう。
この記事では、営業職未経験者向けに、「営業」の定義や、取り扱い商材により求められる役割の違いについてお伝えします。
営業活動を通して会社に利益をもたらす企業活動の大黒柱!
営業職を一言で言うと、自社のサービスや商品を顧客に提案し、契約を取り付ける仕事です。営業職と同様に、顧客向きの仕事といえば、販売、接客職が挙げられますが、その違いは、「商品、サービスへの購入意思や興味があるか」の違いです。
営業職と接客・販売職の違い
営業 | 接客 | |
---|---|---|
クライアント との接点 |
◎ | ◎ |
クライアントの 購入意思・興味 |
△ (インバウンドセールスの場合、あり) |
〇 (クライアントは、購入意思や興味を持っている状態) |
ノルマ | ◎ | △ |
勤務形態 | ほぼ正社員 | アルバイト~正社員 |
あらゆる業界、企業に存在する営業職ですが、その業務内容は大まかに以下のように分類できます。
対象顧客(個人・法人)
営業職を分類するための基準としてよく用いられるのは、法人営業か、個人営業の違いです。法人営業と個人営業の違いは以下の通り。
法人営業 | 個人営業 | |
---|---|---|
対象顧客 | 企業、自治体 | 一般消費者や家庭 |
略称 | BtoB(Business to Business) | BtoC(Business to Consumer) |
代表する商材の一例 | IT、機械、広告、人材、コンサル など |
インターネット回線、化粧品、 サプリメント、保険、 不動産、通信関連 など |
扱う金額 | ~数億円レベルに到達することも |
~数千円、数十万円レベル ※不動産等では高額になるケースも |
商談の期間 |
長期にわたる (数か月~数年にのぼることも) |
比較的短期間 (数日~数か月) |
契約の意思決定 | マネジメント層の決裁が必要 | 個人(やその家族) |
これらを一言でまとめると、基本的にお客様一人により意思決定が行われる個人営業と比べ、より大きな金額が動き、法人営業の方が、商談の長期にわたる傾向にあると言えるでしょう。
そのため、転職を目指す際はまず、個人営業と法人営業のどちらをやりたいかを考えておきましょう。
また、応募先企業の販促(顧客接触)手法がどうなっているかもチェックが必要です。顧客への接触方法次第で、面接でのアピール方法や入社後の働き方がかなり異なってくるからです。
接触方法による違い
特徴:自社(営業担当)が入電してアポイントを取り付ける
Webが発展した昨今でも、想像以上にテレアポを主力している企業は多いです。渡されたリストに対して順番に入電するスタイルの場合はメンタル的な負担がかなり大きいので未経験からの配属では注意が必要だ。一方で最近はMA(マーケティングオートメーション)を導入し、Webと連動させたアウトバウンドコール戦術を導入している企業も多く見られます。いずれにしても電話を営業活動の主体においている企業では「積極性・バイタリティ」が高く評価されやすいです。
特徴:外注(もしくはアポイント専門スタッフ)による接触
営業担当自身が入電をする必要は無いため一般的に想像される顧客折衝が業務のメインとなります。面接ではより「提案力」よりのアピールが求められます。
特徴:Web、電話などで問い合わせのあった顧客へ営業活動を行う
自社のブランディングやマーケティングが一定成功しており、
Web等の媒体から定期的に問い合わせが獲得できる状態。
しかし、面接段階では「弊社では業界内でのブランディングが成功していて問い合わせが入ってきますからテレアポの必要はほとんど無いですよ」と言われたはずなのに、実態はまったく違ったというケースも多いです。それを避けるためにも企業研究は念入りに行っておきましょう。また見込み客からの問い合わせが入るとはいえその先の提案活動はコンペでないことの方が珍しいはず。対策としては応募先企業の業界内でのポジションをよく把握しておくこと。業界No.1企業では自社製品・サービスをわかりやすく伝えるための「論理的な説明力」が、フォロワー企業では突破力を感じさせる「企画に対する意欲・熱意」が問われる傾向にあります。
また、取り扱う商品が、有形か無形かによる違いも考えられます。
商材の違い
例:自動車、住宅、電化製品、食品など
目に見えず決められた形がないもの
例:コンサルティングや研修、広告宣伝、保険など
新規クライアントへの営業か、既存クライアントへの営業か
まだ取引のない顧客に対する営業。自社の顧客になる可能性のあるターゲットに電話や訪問などでアプローチして商品購入や契約成立を目指します。
すでに取引がある顧客に対する営業。ルート営業とも言います。顧客の課題をヒアリングして、課題解決方法を提案。その際、自社の製品を紹介する。顧客との関係が深まれば、新規顧客を紹介されることもあります。
個人営業(BtoC)か法人営業(BtoB)か
代表例 | 求められる能力適正 | |
---|---|---|
個人営業(BtoC) |
ハウスメーカー 不動産販売 保険のリテールセールス 自動教育・教材 ウェディングプランナー など |
愛嬌 第一印象 コミュニケーション力 バイタリティ 雑談力 傾聴力 ↓ 「人が好き」 |
法人営業(BtoB) |
ITソリューション 人事向けサービス 企業向け広告代理店 機械製造業 食品系のルートセールス 医療機器メーカー |
論理的思考力(ロジカルシンキング) 客観的理解力 プレゼン能力 情報収集能力 ↓ 「自分のアイデアで課題を解決したい」 |
個人営業と法人営業では仕事の内容も求められる技能も大きく異なります。
ざっくりいってしまうと「人間的な魅力」が問われる個人営業に対して、法人営業(BtoB)は知力の勝負。
これまでの経験や目指す姿に合わせて最初の業界を選択すると良いでしょう。個人営業(BtoC)の方がお客様に合わせた働き方を迫られるため、「暦通りに休めない」「急な呼び出しに迅速に応えなければならない」という側面が強いことを覚えておきましょう。
営業パーソンの平均年収
大手人材サービス会社・マイナビの調査によると、営業職の平均年収は以下の通りです。
(引用元:職種別平均年収ランキング|マイナビエージェント)
全体としては管理・統括を行う管理職・マネージャーや、大きな海外取引を行うことの多い海外営業・貿易営業、業務の方向性を決めるため企業の中でも重要な仕事となりやすい営業企画・営業推進が年収が高くなっています。
しかしはっきりいって上記の年収はほとんどあてになりません。営業の仕事は売れるか、売れないか次第です。
どちらかというと個人向け営業(BtoC)の方がトップセールスは高くなります。これはハウスメーカーや不動産など歩合の割合が高い業界が多いためで、中には年収2,000万円を超えるような超高給の方も。
ただし夢がある分仕事はハードで、成果が出ない場合は平均年収を大きく下回ります。
未経験からの営業はずばり法人営業がおすすめ
もしあなたが営業未経験でこれから営業パーソンを志すのであれば、まずは法人営業からチャレンジするのがおすすめです。
これは以下のような理由からです。
- 見込み客との初回接触をインバウンド化しているケースが多い。そのため顧客との接点をもって経験を積みやすい
- ブラックな企業が少ない(とはいえ体育会系の会社もあるので、単なる営業会社でなく独自のノウハウ、サービスがあるかどうかはよく見極めましょう)
- 極端な歩合制の給与体系ではない
- 顧客との長期的な関係が重視されるため、その後のキャリアに役立つ人脈を作りやすい
法人営業として転職するためにはMR(製薬会社の営業)のように特殊な業界を除き、営業職に必要な資格は特にありません。営業は業界ごと、会社ごとによって仕事の進め方が全く異なります。
だからこそ、転職活動においては、応募先企業がどのようなサービスを行っていて、業界内における強み、弱みが何かを理解し、面接で意見を伝える姿勢が重要です。実はこの「訪問先を調べて、自分の強みを伝える」活動それそのものが法人営業の仕事とよく似ています。
未経験での面接は、営業としてのご自身の「素材力」を試されているのです。
法人営業の求人を探す際には転職エージェント利用がおすすめです。リクルートエージェントとマイナビエージェントは中途採用業界においては最大手のエージェントで特に大手企業からの信頼は絶大です、好条件の求人も見つけやすいでしょう。
また転職エージェントでは転職を数多くサポートしてきた経験をもとに、自身の希望と現状のスキルに応じて適切な求人を紹介してくれるほか、面接などの対策もしてくれます。未経験からの転職の際にはとても心強い味方になってくれますのでぜひ登録しておきましょう。
営業のキャリアパス
営業職のキャリアパスとしてもっとも典型的なのが中間管理職への昇進です。
この場合ほとんどの企業でプレイングマネージャーとして自身の数字を追いながら部下の教育やクレーム処理などをこなしていくこととなります。
よく「名選手名監督ならず」などといわれますがこれは営業の世界でも同じで、トップセールスが最高のマネージャーになるかというと必ずしもそうではありません。
また営業パーソン同士は同じ会社であってもお互いがライバルで、なかなかノウハウを共有しないといわれますが、経営側としてはこういった状態を問題視していることも多いので、「熱心に後輩を育成した」「社内のナレッジ・マネジメントを活発化した」といったたぐいのエピソードは面接でも評価される可能性があります。
また、営業の仕事はダイレクトにお金につながることもあり、経営者の素養も自然と身につくといわれています。総務や人事などを経て経営層を目指すルートもあります。一方で、管理職を目指さず、営業の現場で働き続けるスーパー営業マンもいます。これまでの営業スキルを活かして、他業種への転職も視野に入れてもよいでしょう。
営業職のやりがい
営業のゴールはあくまで数字です。会社の発展に目に見える数字で貢献できるというのは大きなやりがいです。ベンチャーで働いていても、大企業で働いていても変わらない本質と言えます。
また、クライアントとのやり取りが他の職種よりも多く、人脈も視野も広がります。プレゼンテーションや交渉力のスキルアップもさることながら、営業を通じて自分を信頼してくれる恩人や仲間のような存在を増やせることは大きな魅力です。
未経験から営業職を目指す方の転職テクニック
退職理由がネガティブに聞こえないように注意
未経験、若手、30代以降も応募が可能なのが営業職です。
スキルがそこまで重視されない一方で、「退職理由」が他の職種以上に気にされる傾向にありますから、アンサーは具体的に考えておく必要があります。
実際に未経験から営業職に転職された方の転職体験記から、志望動機や退職理由を確認してみましょう。
こちらの方は、商業高校終身で、証券会社の事務職として2年半勤務された後、IT企業の営業職に転職されました。
事務職としての経験を営業の仕事に直接活かすことは難しいが、情報処理を学んだ経験からIT系の企業でなら活躍できると考え、応募先の企業を絞り込んだといいます。
退職理由は、前職が保守的な風土であったこと、ルーティンワークで成長実感が得られなかったことと語っています。
「安定した環境よりも自身が成長できる環境を求めた」という前向きな退職理由は、未経験の業界に飛び込む場合にはポジティブに受け入れられたようで、人柄重視の選考を行なっていたIT企業に転職を決められたようです。
その他、退職理由の回答として無難なのは「キャリアアップ」をアピールすることです。
以下の例文を参考に、回答を準備しておきましょう。
<志望動機>
「私は新卒から3年間、コールセンターの入電スタッフとして勤務して参りました。(経歴)
入電スタッフとしての仕事にやりがいはありましたが、アポイント獲得後のフォローは営業部門任せになることが多く、お客様との信頼関係を築けたとしても、契約まで関われないことについて物足りなさを感じることがありました。今後はキャリアップのためにもっとお客様に近い立場でセールスに携わりたいと感じるようになりました。(目的)残念ながら現職は完全な下請け企業でエンドユーザー様にお会いすることが叶いませんので、(退職理由)企画提案から納品・アフターフォローまで一貫して手がけていらっしゃる御社のような企業への転職を検討しているところです。(目標)」
面接では自分という商品を売り込む
面接において重要なのは自身の商品価値をプレゼンすることです。面接は営業活動と同じ。「自分を売り込む」つもりでイメージトレーニングをしていきましょう。
ただし注意点があります。いらないものをアピールしない、ということです。
例えばあなたがこれからパスタを食べたい気分のときに居酒屋に誘われても乗り気にはなれませんよね?
ですから、面接の前に求人票をしっかり見たり業界研究をしたりして、「応募先企業が何を求めているか」をよーく調べて、「わたし、あなたの欲しがっているスキルを持っていますよ!」とアピールすることが重要なのです。
例1)
求人票で求められる経験(実際の求人票から抜粋)
顧客の抱える課題を発見・解決した経験
あなたのスキル
小売業でのクレーム対応
モデルトーク
前職では、都内小売店の副店長として、お客様からのクレーム対応を行ってきました。担当スタッフを萎縮させず、お客様の感じた課題や問題点を丁寧にヒアリングする姿勢が評価され、最終的にはお客様に納得いただける形でクレーム処理ができたものと捉えています。御社の営業活動では初回接触段階でのヒアリングが重要であると伺っていますので、前職のクレーム対応で培った傾聴する姿勢を、より売り上げに貢献する営業職として活かしたい所存です。
例2)
求人票で求められる経験(実際の求人票から抜粋)
飲食業界での経験
あなたのスキル
飲食店での接客、管理
モデルトーク
前職は飲食店の副店長として店舗管理を担当しておりました。繁華街だったため、顧客単価が上がらないという課題があったのですが、女性客の二杯目需要を喚起するためにハーフサイズのロングカクテルのラインナップを追加しましたところ、客単価が10%アップし全店に正式採用されました。このときの経験から数字で課題を見つめ直し改善を行う仕事の面白さに気づき、広告系の法人営業の仕事に興味を持つようになりました。
御社はリスティング広告の運用代行会社として業界老舗でいらっしゃいますので、食べログなど飲食系の大手サイトの案件も多くお手伝いされていると伺っています。前職での経験を活かして、数字がよりリアルタイムに見えるWebの世界で自分の取り柄である課題解決力を活かしたいと考えております。
なお企業研究にあたっては応募先の会社だけではなく、その競合先の研究をする姿勢も重要です。応募先企業の業界内でどのような立ち位置にいるのか理解した上でそれに訴えかける自己PRができれば内定は目前です。
まとめ
人材の入れ替わりが激しい営業職。未経験職でも目指すことはできるが、企業が求める人材と自身の経歴がマッチングしなければ、毎月のノルマを達成することは難しいでしょう。未経験者だからこそ、自身のオリジナルな営業スタイルを構築できると考え、転職活動においては、準備を怠らないようにしましょう。