未経験からホテルフロントに転職するには?
「おもてなしの頂点」であり、接客業の中でも華やかなイメージのあるホテル業界。特に、テレビや雑誌で紹介される五つ星ホテルや、有名なホテルで働く姿を想像すると、ワクワクしますよね!
外国人観光客(インバウンド)の増加が進む日本では、2003年には300万人だった訪日観光客は、2018年には3000万人とおよそ10倍にもなっています。そして、観光客を受け入れるためのホテルの数も平成に入って大幅に増加しています。1992年には6,000軒強だったホテル数は、なんと2018年には10,000件。
令和を迎えたいま、人手不足がさけばれる業界の一つがホテル業界なのです。
とはいえ、「人手不足だから待遇が良い・華やかなイメージがあるから業務内容が華やか」とは限りません。ホテルスタッフは、体力や高いスキルが求められる割に、他の業界と比べて待遇が低いことで知られる、泥臭い仕事でもあります。
この記事では、未経験からホテル業界の転職を志すあなたに、仕事内容の紹介と、未経験からホテルマンになれる可能性、そして職務経歴書や面接でのアピールの仕方を詳しくご紹介します。
未経験からホテルマンになれる?と聞かれたら「迷わずYes!」でも、続けられるかは職場との相性次第
POINT
- 多くのホテルが、未経験者からの転職を歓迎している
- 経営母体によって待遇・求められるスキルが異なるので、求人票を要チェック
- 未経験者が受け入れられやすいのは、宿泊(フロント)部門
転職Doの調査では、ホテル業界専門の転職サイトにおける求人全体のうち、「未経験者歓迎」の求人票は実に55%以上!と、多くのホテルで、未経験者の転職を歓迎しているのがわかります。
しかし厚生労働省発行の調査よると、ホテル業界が属する宿泊業、飲食サービス業の離職率は17.7%で、全体平均の8.6%を大きく上回り、全産業中で最も高い離職率です。
(出典元:厚生労働省 令和元年上半期雇用動向調査概況)
ホテル業界には、高級リゾートホテルから、ビジネスマンが利用する駅前のビジネスホテル、結婚式やイベントにも利用できる機能を備えたシティホテルまでさまざまなものがあります。
また、ホテル業界は、経営会社の傾向により、いくつかに分類することができます。経営会社の傾向で、待遇や働きやすさ、そして求められるスキルが変わってきますので、求人票を見るときには、このホテルはどこに該当するんだろう?という視点を持ち自分と求人との相性を考えてみると良いかもしれません!
ホテルの分類/代表的なホテル
- 独立系/帝国ホテル、ホテルオークラなど
- 鉄道系/プリンスホテル(西部HD)、京王プラザホテル(京王電鉄)、阪急阪神ホテルズ(阪急阪神HD)など
- 航空会社系/ホテルJALシティ(JAL)、ANAクラウンプラザホテル(ANA)など
- ビジネスホテル系/東横INN、ルートインなど
- 外資系/リッツカールトン、ヒルトン、シェラトンなど
ホテルの中でも、宿泊部門の職種は多くの未経験者を受け入れています。一般的には、ベルボーイ・ベルガール、コンシェルジュ、ハウスキーピングの仕事を経験してから、フロント業務に回るのが典型的と言われています。(会社によります。)
職種/仕事内容
- フロント フロントカウンターにて宿泊客を対応する
- ベルボーイ・ベルガール チェックイン完了済の宿泊客を客室まで案内する
- コンシェルジュ 宿泊客からの問い合わせに一元対応する
- ハウスキーピング 客室の清掃や室内の備品のチェック・補充などを行う
この他にもホテルのバーで勤務するスタッフ、宴会やパーティを取り持つスタッフなど、そのホテルの経営スタイルや、おもてなしの姿に基づいて、さまざまな職種が存在します。また、一般企業と同じく人事や総務、商品開発、営業企画など部門も存在します。
一般的に、ホテルスタッフとして勤務する社員を「ホテルマン」、管理職に回る人たちを「ホテリエ」と呼びます。
ホテルマン、お客様の「ありがとう」のために無理をすることも。
接客業全般に言えることですが、ホテルマンにとっての大きな喜びは、お客様からの「ありがとう」の言葉です。従業員にとっては多くの時間を過ごす職場ですが、利用客にとっては非日常を過ごす場です。
短い滞在時間の中で、感謝の言葉をもらえた数だけ、やりがいにあふれる仕事となります。外国人観光客の増加を背景に成長しているだけあり、他業種と比べても極めて国際色豊かな仕事であり、人との関わりから、学びを得ることもできるでしょう。
一方で、「ありがとう」の声をもらうためには、無理をする場面も多々あります。フロントマンをはじめ、勤務中は常に立ちっぱなし。その上365日、24時間のシフト制です。体力の限界を迎えて身体を壊し、退職するスタッフも後を絶ちません。
残った人はその分も働かなければならないため、スタッフの定着率が低く悪循環に陥ってしまう職場も多く見られます。
また、赤ちゃんのおもらしの対応や、機械・設備の故障によるクレームなど、お客さまからの無理難題も日常茶飯事。お客様の笑顔を目指すほど、精神的にも体力的にもどんどんすり減っていくため、体力と精神力の両方の強さが必要なのが、ホテルスタッフの仕事です。
それでは、そんな激務のホテルスタッフの年収相場はどれほどでしょうか?
ホテルの年収相場は、「安い」です。転職するなら外資系か鉄道系を狙い目
大手転職サービスdodaを運営するパーソルキャリアの調査によると、ホテルのフロント業務の平均年収は、297万円とされています。性別ごとの平均年収は、男性:314万円・女性 284万円。年代別ですと、20代:278万円、30代:332万円、40代:339万円、50代~:340万円となっています。
これは同じ接客系の、美容師・エスティティシャン(281万円)をわずかに上回りますが、ブライダルコーディネーター(平均311万円)・葬祭プランナー(平均368万円)と比べると、はっきり言って安いと言わざるを得ないレベルです。
夜勤も頻繁に発生し、残業も多い職種でありながら薄給なため、離職率が高く、万年人手不足の要因につながっています。
その中で、給与水準が比較的高いのが「外資系」と「鉄道系」と言われています。
外資系ホテルの給与が高水準となる理由は、宿泊費が内資系のホテルよりも高水準であり、従業員の給与に反映できるからです。とはいえ、外資系は成果主義で競争が激しく、成果を出せないスタッフは即日解雇もありえるのを念頭に置いておきましょう。
また、海外有名ホテルの名を冠していながら実際運営しているのは国内の企業で、給与も他の国内ホテルと変わらないということもありますので、気を付けましょう。
鉄道系は、ホテル事業以外にも収入源を持ち、安定した経営基盤のもとにホテル業が成り立っているため、不安定なホテル業界の中では比較的景気にも左右されにくいのが魅力です。
国内のホテル売り上げランキングに軒並み上位を数えるなどサービスの質も高い。鉄道系は大企業気質ゆえに年功序列の傾向が強く、高収入にたどり着くまでにある程度時間が必要なことに注意しましょう。
また、2018年のホテルシェアランキングをお伝えしますので、転職なさる際の参考にしてみてくださいね。
国内ホテルランキング シェア(2018年)
- 1位
- 西武ホールディングス(1,963億円、13.8%) 鉄道系
- 2位
- リゾートトラスト株式会社(1,654億円、11.6%) 独立系・東証一部上場
- 3位
- 東京急行電鉄(1,033億円、7.3%)鉄道系
- 4位
- 京王電鉄(764億円、5.4%)鉄道系
- 5位
- ホテルオークラ(730億円、5.1%)鉄道系
ホテルスタッフが、高収入を狙うためのスキル・資格とは?
ホテルスタッフは給与水準が安価であり、労働環境の厳しさから多くの方が辞めてしまうことをお伝えしました。それでは、ホテル業界で就職する方が、少しでも高収入を狙うためにはどうすれば良いのでしょうか?
実は、ホテルは、「入るだけ」であれば特に資格は必要ないとされています。これは裏を返せば、「入るだけ」の人材は、他の人と同じとみなされ、収入も期待できません。
そこで重要なのは、少しでも評価につなげるためのスキル、資格を得て、「一芸あり」の人材として周りに認識してもらうことです。ホテル関係のスキル・資格は、大きく分けて2つあります。
(引用元:doda)
こちらは実際の求人票から抜粋したものです。必須条件に英語力、歓迎条件にホテル関係の資格があります。
(1)語学力
今、日本国内では、外国からのインバウンド顧客が多く押し寄せています。そこで即戦力として必要とされるのは、英語力です。加えて、アジアからの観光客に対応できるよう中国語や韓国語を話せる人材は重宝されます。特に外資系ホテルで働く場合は必須のスキルです。
とはいえ、「英語ができるから」「●●語ができるから」という理由だけで、高く評価されるわけではありません。ホテルマンは接客業であり、接するお客様に良い思い出を作ってもらうための一つのスキルとして、語学力があるという認識をしましょう。
「自身がこれまで培ってきた語学力を活かして最高の思い出を作ってもらう」、あるいは「最高の思い出を提供するために語学を磨く」。こうしたホスピタリティが、ホテルマンには求められるでしょう。
(2)ホテルビジネスに関係する資格「ホテル実務技能認定検定」「ホテルビジネス実務検定」
ホテルビジネス実務検定試験(H検 Hotelier Proficiency Test)は、日本ホテル教育センターにより、1999年から実施されている、ホテルの実務知識の体系的理解度を問われる資格です。ベーシックレベル2級・1級と、正答率によって2級or1級認定のあるマネジメントレベルに分かれる試験です。こちらは個人でも挑戦するのが可能であり、歓迎要件に本資格の保持者が含まれる求人もあるため、熱意をアピールするのにうってつけと言えるでしょう。
ホテルマンの昇進に有利になる資格と言えば、ホテル実務技能認定検定です。これはホテル業界で必要とされる実践力を問われる資格で、基本知識を問われる初級と、ホテル業界自体への知識も試験範囲に含まれる上級の2種類があります。こちらは基本的に団体受検が前提となっているため、入社してからの受験となります(※2019年現在)。裏を返せば、ホテル実務技能認定検定を実施している企業は、従業員の教育にも力を入れているということであり、入ってからの研修なども期待できる傾向にあると言えるでしょう。
ホテルマンとしてのキャリアパスは?
ここまで、薄給・激務と言われるホテルマンが、少しでも好待遇を目指すためのポイントをお伝えしました。それでは、転職を目指す20代~40代の方が、今後の人生を築くにあたり、どのようなポイントを頭に入れると良いかお伝えします。
【20代】
ベルボーイ・ベルガールやハウスキーピングといった下積み時代はどうしても薄給で、前職よりも収入が下がることも覚悟しなければなりません。
ただ、「帰国子女で英会話も余裕」「長期海外留学で向こうの文化も知っている」などの強みがあれば待遇のいい外資系ホテルを目指す方向性もあります。その場合はキャリアアップにつながる可能性がある。そのため、どうしてもホテル業界に就職したい場合は、まずは「一芸ありの人材」と思われるよう、現職の在職中に資格を取得するのをおすすめします。
【30代、40代】
30代~40代で、ホテル業界が未経験の場合、即戦力と認められるにはやはり、これまでの経験で培ったスキルのアピールと、語学力の両方が必要でしょう。英語だけでなくもう一言語話せると、キャリアアップの可能性も広がります。
未経験からホテルに挑戦する職務経歴書・面接のコツ
自己PRでは、「おもてなしスキル」をアピールせよ!
未経験からホテルに挑戦する場合の職務経歴書・面接のコツは、これまでの経験から「おもてなしスキル」をアピールすることです。
そのため、自己PRで重要なのは求人票で求められているスキルと、これまでのキャリアで「おもてなしをした経験」とが重なる部分を伝え、即戦力の可能性を伝えるのが、採用までの近道と言えるでしょう。
実際にスキルと経験が合えば未経験から採用されることは珍しくありません。
下記の転職体験記のように、ホテル業界どころか正社員として勤務した経験さえなかった方でも、トリマーやコンビニでのアルバイトを通して身に付けた、接客とおもてなしのスキルが評価されてホテルフロントとして採用された方もいます。
(参考:自信は全くなかった。ずっとアルバイトだったから。 | エン転職 | 2015年3月20日)
具体的に、求められるスキルとあなたの経験をどのように結び付ければ良いかについて、下記にてお伝えします!
(例1)アパレル業界の店長として、接客の経験がある場合
ホテルフロントとしての経験はまだありませんが、現職のアパレルショップでは店長として、多くのお客様を担当し、さらにスタッフの教育まで担当しました。働いているデパートには多くのお客様が来店しますが、私なりに工夫して「おもてなしの接客」をすることで、リピート顧客も多く獲得し売り上げ拡大を達成しました。今回、御社はホテルの中でも特におもてなしのできるフロント人材を求められていると感じましたので、この経験がお役に立てると考え、応募致しました。
(例2)レストランで、外国のお客様の接客経験がある場合
ホテルフロントとしての経験はまだありませんが、現職ではレストランの接客担当として、日本のお客様と同じように外国のお客様への接客も担当していました。多い日では、一日に30人以上ものインバウンド顧客を担当したこともあります。
今回、御社は英語で接客のできる人材を求められていると感じましたので、私の英語力を生かしながら、さらに質の高いサービスを提供するフロントマンとして成長したいと考え、志望致しました。
面接では、想定される質問に的確に答えよ!
自己PRの仕方がイメージできたら、次は、面接対策をしっかりと行いましょう。ここで言う「面接対策」とは、上手に話すことや、自分を大きく見せることではありません。企業をよく研究し、面接官の質問に的確に答えることが本質的な面接対策です。
以下に、ホテルの面接でよく聞かれる質問を紹介しますので、こちらを参考に、あなたのオリジナルの答えを考えてみてくださいね。
Q.「ホテルフロントスタッフは必ず夜勤がありますが大丈夫ですか?」
A.(アパレル業界からホテルへ転職する場合)アパレル業界では、不規則なシフト勤務に対応しておりましたので、体力には自信があります。
Q.「今回はホテルフロントの募集ですが、この業務に興味を持ったきっかけを教えてください。
A. (リゾートホテルの面接の場合)
私自身、国内旅行が好きで、よくホテルを利用していたのがきっかけです。何軒ものホテルを利用するうち、リゾートホテルと言っても、ホテルブランドによりおもてなしのスタイルが違うんだなと感じました。御社はリゾートホテルの中でも、インバウンド顧客への対応に力を入れており、より国際化を意識した人材が求められていると感じます。私自身、現職で英語を使う機会が多くあり、そのような環境で働きたいと考え興味をひかれています。
Q.「なぜ、経験のある〇〇職を続けようと思わなかったのですか?」
A.(現職が例えばアパレル業界の場合)
現職のアパレルショップでの業務を経験するうちに、「もう少し長いスパンでお客様と関わる仕事がしたい」と考えるようになったことがきっかけです。アパレルショップでは、限られた時間内に多くのお客様を担当し、お買い上げいただくことで売り上げを生み出すのが仕事です。そのためどんなに長くても、一人のお客様と向き合う時間は数分~数十分となってしまいます。御社はホテル業界の中でも、より上質なサービスをコンセプトに掲げており、お客様にとってより高品質なサービスをチームとして届けられることが魅力です。
ここまでご紹介してきた職務経歴書や面接の対策については転職エージェントを利用するのも良いでしょう。
転職エージェントは、数多くの転職事例から企業ごと採用過程や面接の特徴なども情報を持っています。
それらをもとに、履歴書の添削や面接対策も含めしっかりとサポートしてくれますので、転職エージェントを活用し万全を期して転職活動に臨めます。ここまでにご紹介した内容をさらに掘り下げ企業ごとの対策もしてもらえます。
リクルートエージェントとマイナビエージェントは中途採用業界においては最大手のエージェントですので豊富なデータからしっかりとサポートしてくれます。
その他の転職エージェントの詳しい情報は1106人に聞いた、口コミで評判のおすすめ転職サイト・転職エージェントで確認できます。
転職エージェントによって得意な業界や職種、企業規模などが異なりますので、まずは自分の希望に合う転職エージェントを見つけましょう。
まとめ
今回は、ホテルマンのお仕事に興味がある方向けに、業務内容についての紹介と、転職活動を突破するためのコツをお伝えしました。薄給激務と言われるホテル業界ですが、スキルさえあれば好待遇を目指すのも夢ではありません。この記事をきっかけに、あなたにとってホテル業界へ良い転職をするための道が開けましたら幸いです!