自動車、家電、情報機器、ゲーム機、産業機械など、あらゆる業界でIoT技術が活躍しています。最近では、遠隔操作による家事代行サービスが受けられるサブスクリプションサービスがはじまっているのだとか。
この流れにより、制御・組み込み系エンジニア人材の需要が拡大しています。ハードウェア、ソフトウェアの両方に強みを持つ制御・組み込みエンジニアは、引く手あまたでしょう。
でも、未経験から制御・組み込みエンジニアになるにはどうすれば…?そんなあなたのために、今回は、未経験から制御・組み込みエンジニアへ転職する方法ついてご紹介します。
制御・組み込みエンジニアについておさらい
転職の話をする前に、制御・組み込みエンジニアの仕事について簡単におさらいしていきます。
制御・組み込みエンジニアとは、家電や機械製品の中に組み込まれているコンピューターを作動させるためのシステムを作るエンジニアを言います。組み込み対象の機器、機械へ設定するソフトウェアの開発を行うのが組み込みエンジニア。それに対して、ユーザーが機械を操作した際に、反応する機能を開発するのが制御エンジニアです。
たとえば、スマートフォン、自動車、工業用ロボット、家電、ゲーム機、PDA、オフィス用の複合機、医療機器、計測器など…。今時、組み込みソフトなしでは、社会が動かないと言えるでしょう。
アップスターツさんのYoutube動画でも、制御・組み込みエンジニアについて触れられているので、ぜひご覧ください。
会社によっては、制御担当と組み込み担当を線引きしておらず、1人のエンジニアが制御・組み込みの両方を担当することもあるようです。制御・組み込み系エンジニアは、他のエンジニア・プログラマ以上に専門的な知識が求められます。主な使用言語はC、C++、Javaのほか、アセンブラ系言語(UNIX用のasやMicrosoft Macro Assembler(MASM)。アセンブラは機械語にかなり近く、ソフトウェアの制御に役立つ言語です。また、組み込み系案件のOSにはTRONがしばしば使用されます。
制御・組み込みエンジニアの流れとトレンド(IoTの発展)
序盤でもご紹介した通り、制御・組み込みエンジニアが活躍するフィールドは、広範にわたります。従来、インターネットはコンピューターとコンピューターを結びつけるただの通信網でした。しかし、インターネットに繋がるためのデバイスはパソコンやスマートフォン・タブレットと、拡張されています。家電もまた、インターネットに接続するためのデバイスとして活用されるようになっています。
下記のグラフは、IT専門の調査会社 IDC Japan株式会社による国内のIoT市場規模の推移予想です。2019年には7兆1537億円だった、国内のIoT市場におけるユーザーの支出額は、年平均12.1%で成長し、2024年には12兆6363億円になると予測されています。
(引用元:国内IoT市場産業分野別予測とユースケース別の事例考察を発表|IDC japone株式会社)
IHSマークイット社の調査によると、2018年におけるIoTデバイスの出荷台数実績は、年間約100億台、累計設置台数は300億台に達しました。2025年には、年間200億台強が出荷され、累計設置台数は800億台になると見込んでいます。シスコ社によると2050年までに世界で5000億台のIoT機器が存在するようになるとのことです。
IoT市場で大きな伸びしろがあると期待されているのは、家電もさることながら産業分野での活躍です。ビッグデータ、人工知能、産業プロセスのオートメーション化は深く絡み合い、ドイツ政府の提唱する「インダストリー4.0(第4産業革命)」 の一部を形成します。
(引用元:国内IoT市場産業分野別予測とユースケース別の事例考察を発表|IDC japone株式会社)
2019年時点では政府の製造業でのIT/IoTの活用を推進を背景に、製造業の支出額が最も大きくなっています。
2024年には製造業は安定した成長を保ちつつ、個人利用のスマートホーム(家電、オートメーション)が大きく成長し、次いで農業分野での利用の成長が予測されています。このほか、小売り店舗内でのリコメンド、院内クリニカルケアなども高い成長が期待されています。
また、IoTの技術は自動車業界でも注目されており、大手は数年のうちの完全自動運転を見越して研究・開発を進めています。AppleがTeslaのエンジニアを引き抜くなど 、自動車業界内外で優れた制御・組み込みエンジニアのヘッドハンティングが次々と行われています。
爆発的に普及することが見込まれるIoTを支えると期待されるのが、次世代通信規格である5G。大容量、低遅延、そしてこれまで以上に多数の端末が接続できるようになることで、IoTのより広範な普及に貢献しています。
制御・組み込みエンジニアの平均年収
というわけで製造業のトレンドでもあるIoT技術で、引く手あまたの制御・組み込みエンジニアですが、若いうちは必ずしも大きく稼げるわけではないようで…。
大手求人サービスdodaの調査によると、制御・組み込みエンジニアの年収は、全体平均では431万円となっています。システムエンジニアの平均年収550万円と比較すると100万円以上も低いです。
これは他のエンジニア系職種と比べて、制御・組み込みエンジニアの活躍する範囲が製造業に多いことも関係していると言えます。製造業では、若いうちは年収を抑えめにして、その分福利厚生で従業員に還元する文化をもつ企業も多いのです。
ですから必ずしも待遇が悪いわけではなく、むしろ家賃補助などの福利厚生や年功序列での昇給を含めて考えると他のエンジニア系職種としてスタートアップ企業に就職するよりも安定感があります。
全体平均:431万円
男性:443万円
女性:364万円
20代:349万円
30代:489万円
40代:591万円
50代~:677万円
(引用元:doda 平均年収ランキング)
一方で未経験から制御、組み込みエンジニアをめざす場合は、エンジニアとしての評価がないところからのスタートになるため、未経験者の場合は新卒並みの月収からスタートになるとの情報も。ある程度の年収ダウンは覚悟しておきましょう。
制御・組み込みエンジニアの転職
未経験の場合
未経験から制御・組み込みエンジニアに転職しようとする場合、余程の知識(専門学校、大学でC言語をしっかり学んだ、仕事以外で開発経験がある…等)がないと、転職エージェントに行ってもまず門前払いです。
実際には組込み系開発独特の知識としてハードウェアの基礎知識がほぼ必須です。
そのうえでおすすめなのは、SES(System Engineering Service)への転職。SESとは、社員として入社したエンジニアを「客先常駐」という体裁で別会社へ出向させる企業のことで、代表企業に、ギークス、アクサス、フリューゲルなどが挙げられます。未経験者がSESに入社するメリットとしては、入社後数か月間はプログラミング、エンジニアリングの基礎を教えてもらえて、即戦力になるためのスキルを身につけるのが可能な点です。
デメリットは、SESは多くの取引先を抱えているので、必ずしも希望通りの職場に派遣されるわけではないところです。とはいえ開発スキルを身に着けた先には、より良い条件の転職をしたり、フリーランスとして独立したりする道もあります。SES企業の求人は、転職サイト「リクナビNEXT」で探すと見つかりますので、ぜひ探してみてくださいね。
というわけで、リクナビNEXTから応募できる、未経験者OKの組み込み・制御エンジニアの求人を探してみました。
リクナビNEXTで未経験者歓迎の組み込み・制御エンジニアのSES企業を探してみた
実際に、リクナビNEXTで未経験者歓迎の組み込み・制御エンジニアのSES企業を探してみました。
職種「システム開発(組み込み・ファームウェア・制御系)」で絞り込み
その他条件「未経験者歓迎」で絞り込み
結果は126件でした。
具体的な求人票も見てみましょう。
事例1:大手自動車メーカーへの派遣
(引用元:リクナビNEXT)
こちらは、自動車メーカーへ派遣される組み込み・制御エンジニアの求人です。組み込み・制御系のなかでも自動車業界は花形ですし、高いスキルを身に着けられそうですね。
事例2:組み込み系中心のSES
(引用元:リクナビNEXT)
こちらは大阪府に本社を置くSES企業で、業務・組み込み系システムを中心にエンジニア派遣を行うSES企業の求人です。派遣先の具体例も求人票にはっきり書いてあることから、面接で意欲をアピールすることで、未経験からでも組み込み系エンジニアへの道が開けるのではないでしょうか?
応募先の企業が、どんな客先を抱えているか調べたいときは、求人票ではなく、自社ホームページの「お取引先実績」も見てみよう!
志望動機の例
私は現在、家電メーカーのWebマーケティング担当として新規顧客獲得に向けたランディングページの改善業務やSNS運用を行っております。ランディングページ改善業務を行っていく中で必要だったHTMLやPHPを活用していく中、あらためてプログラミングの面白さに惹かれエンジニアを志すようになりました。専門学校では情報工学を専攻しておりましたので、JavaとWindows OSを使った開発にも一定理解があります。御社はJavaとWindows OSをメインに採用されている家電メーカーですので、現在のスキルを活かして早期に戦力となれるのでは無いかと思い、ご応募いたしました。
「自分がプログラミングをしたい」という気持のアピールではなく、「保有スキルと開発環境が一致している」「前職と業界が近い」など応募背景がしっかりしている方がより戦力として評価されやすい。
またリクルートエージェントやマイナビエージェントのような転職エージェントの利用もいいでしょう。
転職エージェントは、数多くの転職事例から企業ごと採用過程や面接の特徴なども情報を持っています。
それらをもとに、履歴書の添削や面接対策も含めしっかりとサポートしてくれますので、転職エージェントを活用し万全を期して転職活動に臨めます。ここまでにご紹介した内容をさらに掘り下げ企業ごとの対策もしてもらえます。
とくにマイナビエージェントはIT転職に特化したサービスマイナビIT AGENTを展開しており強い味方になってくれるでしょう。
転職エージェントによって得意な業界や職種、企業規模などが異なりますので、まずは自分の希望に合う転職エージェントを見つけましょう。(その他の転職エージェントの詳しい情報は1106人に聞いた、口コミで評判のおすすめ転職サイト・転職エージェントが参考になります。)
経験者の場合
経験者の場合は選択肢が2つあります。制御・組み込みエンジニアを続けるか、続けないかという選択です。
制御・組み込み系のエンジニアの苦労は、作業が単調化し、開発環境も比較的レガシーであることから、最新の技術に触れたい技術屋気質のエンジニアの方は、Web系を目指して転職することも多いようです。
経験者の方のIT転職については、こちらの記事にも詳しく書いてあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
まとめ
IoTの技術進歩により、需要が拡大する制御・組み込みエンジニア。今は未経験でも、これからスキルを身に着けることで、ハイスキル人材を目指すのも夢ではありません。まずは転職サイトで求人を探して、一歩踏み出してみませんか?