はじめに
2015年に大ニュースになった東芝の不正会計事件。
今なお経営は再建途上にあり、事態収束したわけではありません。
2018年の中長期経営計画では、自然減を中心に人員の削減と整理を進めると明言していて、2019年5月にも半導体事業の人員を350人削減するというニュースが注目を集めました。
(出典:共同通信)
上記のとおり、近年は社会的にもネガティブな印象の多かった東芝ですが、2020年2月に子会社「東芝データ」を設立するなど、新規ビジネスにも前向きな姿勢を見せるなど、経営再建に向けて一から発展していく意気込みを見せています。
苦境もありながら今後も新たなチャレンジが期待される環境にあえて転職したいという方のために、東芝の転職情報や採用情報について詳しくご説明します。
東芝への転職についてのまとめ
- 口コミからの総合評価
- 3.40
東芝の転職レーダーチャート
東芝の特徴
- 2015年に発覚した不正会計騒動、米原発事業の巨額減損をうけ、今なお経営再建中
- 業界大手の総合電機メーカーで、現在は半導体部門などで人員削減を行っている一方で、新規子会社を設立。
- 基本的にトップダウンで、国内ならではの保守的な企業文化が根強い。方針が途中でぶれ、最後までやり遂げる意志が弱いという声も。
- 平均残業時間は30時間強と多いが、有給の取得率は60%以上のため、比較的ワークライフバランスはとりやすい
- 2020年2月現在でも不適切会計が新たに見つかるなど、現状でも会社の未来を揺るがしかねない事態が起こっている
東芝への転職でおさえておきたいポイント
- 中途採用は年間を通して随時行なっている
- 「事務系」「技術系」ともに専門職ポジションが多く、数はかなり限られる
- 非公開求人もゼロではないので、転職エージェントなどの活用がおすすめ
東芝の企業情報
まず、東芝の基本的な企業情報をまとめました。
基本情報
※スマホの方は横にスクロールしてご覧ください
事業内容 |
エネルギー事業 社会インフラ事業 電子デバイス事業 デジタルソリューション事業 |
---|---|
代表者 |
代表執行役会長 CEO 車谷 暢昭(くるまたに のぶあき) 代表執行役社長 COO 綱川 智(つなかわ さとし) |
設立 | 1875年(明治8年)7月 |
資本金 | 2,000億4,400万円円(2019年3月末現在) |
従業員数 | 128,697名人(2019年3月末現在) |
所在地 | 東京都港区芝浦1-1-1 |
企業理念やビジョン
株式会社 東芝グループの企業理念はこちら。
【経営理念】
人と、地球と、明日のために。
東芝グループは、
人間尊重を基本として、豊かな価値を創造し、
世界の人々の生活・文化に
貢献する企業集団をめざします。【私たちの存在意義】
世界をよりよい場所にしたい。
それが私たちの変わらない想いです。安全で、よりクリーンな世界を。
持続可能で、よりダイナミックな社会を。
快適で、よりワクワクする世界を。誰も知らない未来の姿。
その可能性を発見し、結果を描き、たどり着くための解を導き出す。
昨日まで想像もできなかった未来を現実のものにする。私たち東芝グループは、培ってきた発想力と技術力を結集し、
あらゆる今と、その先にあるすべての未来に立ち向かい、
自分自身を、そしてお客様をも奮い立たせます。新しい未来を始動させる。
それが私たちの存在意義です。
【私たちの価値観】
『誠実であり続ける』
日々の活動において、
人や地球に対する責任を自覚し、
つねに誠実な心で行動する。『変革への情熱を抱く』
世界をよりよく変えていく熱い情熱を持ち、
そのために必要な変化を
自ら起こす。『未来を思い描く』
社会に与える価値や意義を考え、
次の、さらにその先の世代の
ことまで見据える。『ともに生み出す』
互いに協力し合い、
信頼されるパートナーとして
ともに成長し、新しい未来を創る。
(引用元:東芝グループ理念体系)
もともとが日本を代表する総合電機メーカーのため、物づくりの歴史を引き継いでいる部分と、2015年の不適切会計事件を乗り越え、より誠実にという思いの部分を両立させた企業理念が、2018年に改めて策定されました。
東芝の事業展開
東芝の事業は、エネルギー事業、社会インフラ事業、リテール・プリンティング事業、電子デバイス事業、デジタルソリューション事業の5つに分類されます。水道などのインフラやビルの建設などを行う、社会インフラ事業が最も売り上げが多く、また直近でも成長を続けています。また、大容量HDDで注目を集めている電子デバイス事業も売り上げを伸ばしており、全体で2番目の売り上げに至っています。
(引用元:統合報告書2019|東芝)
東芝の転職基礎知識
次に、東芝の転職に関する基礎知識をご紹介します。
平均年収
915万円(45歳)(四季報調べ)
総合電気業界の平均年収:570万円と比較すると、かなり高い年収になっています。
(出典元:2019年版 業種別 モデル年収平均ランキング - マイナビ転職)
しかし、2015年の不正会計問題、米原発の巨額評価損計上(2017年3月期)の影響で、「一時的な緊急対策」として賞与や手当を一部カットされました。
当時の平均年収828万円から711万円に大幅ダウンしたこともあるので、いざとなれば大幅に年収が減額されることもあると理解しておきましょう。
世代別平均年収
続いて、世代別の平均年収を見てみましょう。
※スマホの方は横にスクロールしてご覧ください
年代 | 平均年収 | 最高年収 | 最低年収 |
---|---|---|---|
20代 | 450万円 | 600万円 | 350万円 |
30代 | 600万円 | 700万円 | 500万円 |
40代 | 750万円 | 900万円 | 600万円 |
50代 | 950万円 | 1100万円 | 700万円 |
(引用元:転職会議)
企業口コミサイト「転職会議」によると、上記のような世代別の平均年収となっています。
これは、平均的な世代別平均年収と比較しても高いです。
例えば、転職サイトdodaの「平均年収ランキング」によると、20代の平均年収は345万円、30代は442万円となっています。
全体の世代別の年収と比べても、東芝の年収の方が高いです。
労働環境
- 働き方改革により終業時間を厳しく管理され、残業代はPCのログで自動的にチャージされる仕組みなので、サービス残業はほとんどない。
- フレックスタイム制をとっており、コアタイムが11:00~14:30である。
- 設計職などの忙しい部署は休日出勤が常態化している。
- 基本的に正社員は総合職採用のため、女性でも男性とかわらない仕事量である。
- 育児休暇、介護休暇、短時間勤務制度など、一通りの制度がそろえられていて、部署にもよるが、取得しやすい雰囲気。
福利厚生
- 大企業だけに福利厚生は一通り揃っている。
- 会社が年度初めに従業員へポイントを付与し、従業員はそのポイントを使って、あらかじめ用意されたさまざまな福利厚生のメニューを利用することができる選択型福祉制度。
- 住宅補助がかなり少ない。月1万5千円程度。
- 車の購入支援制度や車の保険もあり、かなり手厚い福利厚生だが、以前よりは大幅に削減されてきているという声も多い。
- Welboxを利用した福利厚生なので、自己啓発、育児、介護など、ラインナップはしっかり揃っている。
残業時間
口コミサイトでは、月の平均残業時間は30.5〜34.5時間と30時間は超えています。
しかし働き方改革により終業時間を厳しく管理されていて、サービス残業はほとんどありません。また、休日の出勤は設計職など一部の忙しい部署以外はほとんどなく、ワークライフバランスは比較的取りやすいようです。
また、日によっては定時に帰宅するよう指示が出る部署もあるようです。
有給消化率
口コミサイトでは、61.5〜65.4%と比較的高い消化率です。
休日に関しては東芝独自の制度も多く、比較的休みは多いという声が多いです。
全てを消化できず不満をもらす声も多いですが、それでも60%を超えた消化率なので、決して悪くありません。
昔は有給取得が厳しかった面もありますが、現在は、自身の仕事をこなしていれば、比較的簡単に取得できる風潮がより強くなってきているようです。
東芝の中途採用求人情報
ここからは東芝の中途採用求人情報を見ていきましょう。
株式会社 東芝にはどのような職種があるのか
東芝には、以下のような職種があります。
事務系 |
・営業 ・事業企画 ・生産企画・管理 ・人事・総務 ・財務・経理 ・法務 ・調達 ・知的財産 ・情報システム |
---|---|
技術系 |
・研究開発 ・開発設計 ・生産技術 ・システムエンジニア ・セールスエンジニア ・フィールドエンジニア ・プラントエンジニア ・品質管理 ・知的財産 |
(参考:東芝 採用基本情報)
東芝では、大きく「事務系」と「技術系」の職種に分かれています。
しかし、どれも専門的分野ですので、転職エージェントのような転職のプロに相談しながら自分が応募する職種を決めましょう。
事務系職として東芝への中途入社を目指すならリクルートエージェントがおすすめです。
リクルートエージェントは、中途採用業界においては最大手のエージェントで、特に大手企業からの信頼は絶大なものがあります。また、人事部だけでなく事業部から非公開求人の依頼を受けているケースもあり、目当ての求人が得られる可能性が高いです。
技術系職として東芝への転職を目指すならマイナビIT AGENTがおすすめです。
マイナビIT AGENTは、エンジニアの転職を数多く手掛けている大手転職エージェントです。特に大手やメガベンチャー系安定企業への転職に強みがあります。大手へのIT転職に強いエージェントとして、そのコネクションを存分に発揮してくれることでしょう。
また、エージェントを利用する際、担当者には希望する企業と職種をはっきり伝えましょう。仮にそのタイミングで取り扱いがなくても今後の見込みをアナウンスしてもらえたり、関連企業の求人などを案内してもらえたりする可能性もあります。
求人の傾向・採用している職種
2020年2月現在で、東芝が募集している職種は以下です。
【エネルギー事業領域】...1件
・フィールドエンジニア...1件
【社会インフラ事業領域】...3件
・フィールドエンジニア...1件
・プロジェクトマネージャー...2件
【電子デバイス事業領域】...3件
・研究開発...1件
・開発設計...1件
・ソフトウェア設計...1件
【デジタルソリューション事業領域】...5件
・開発設計...1件
・セールスエンジニア...2件
・営業...2件
【その他】...2件
・事務系...2件
(参考:東芝 キャリア採用)
東芝の公式HPでは、比較的技術系職種の求人が多い傾向です。
公式HPでは、事業領域ごとの求人や職種ごと、勤務地ごとの求人が検索できるので、自分の好みに合う求人を検索しやすいです。
実際の求人情報
具体的な求人情報を見ていきましょう。
オープンソースソフトウェア技術者(基盤ソフトウェア技術者)
概要 | オープンソースソフトウェア(OSS)を用いた共通基盤ソフトウェアに関する研究開発 |
---|---|
求めるスキル・経験 |
・情報システムに関する高度な専門知識(強い技術分野を1つ以上の持っていること) ・組み込みシステムに関連する開発経験 ・OS(Linux/RTOS)やミドルウェア(DB/Webなど)に関する開発経験 ・オープンソースライセンスに関する基礎知識があると尚可 ・ハードウェアに関連する基礎知識があると尚可 ・オープンソースプロジェクトへの参画経験があると尚可 |
(引用元:東芝 募集要項)
こちらは東芝公式ページで出されているキャリア採用の研究開発職の求人ページです。
技術系職種はほとんどの求人で、経験と知識を求められます。
東芝の採用方針
東芝はキャリア採用については、期限や期間を設定せずに通年で採用活動を行っています。
しかし2015年の不正会計事件以降、いまだに経営を立て直している状態のため、人員削減が行われています。
2019年5月にも350人の削減がニュースになりました。
2020年入社の新卒採用人数も減少し、昨年の3割減です。
プロフェッシャルなポジション(専門性の高い職種)以外の採用は、あまり前向きではありません。
ただし一方で、最近できた子会社「東芝データ」ではデータ活用ビジネスで外部人材を積極に採用すると明言しているので、こちらにマッチする人はチャンスがあります。
(引用元:週間BCN+)
東芝の選考に関する情報
東芝への転職難易度
現状はかなり難しいです。
転職サイトなどの求人はほとんどなく、公式HPでの求人もキャリア採用は14件(2020年2月現在)です。
技術系、事務系問わず専門性が高い職種のマネジャーなど、プロフェッショナルな求人しかなく、数も少ないため、難易度はかなり高いと見て間違い無いでしょう。
ただし上述している通り、最近できた子会社「東芝データ」ではデータ活用ビジネスでは、チャンスがあります。
選考の流れ
東芝の公式HPによると、中途採用の選考フローは以下の通りです。
エントリー→書類選考→部門面接→最終選考→内定
(参考:東芝 募集要項)
面接の回数は、応募する職種によって異なりますが、2回以上、場合によっては4回以上の面接があるようです。
選考期間は明記されていません。
筆記試験の有無、種類
東芝の中途採用では、筆記試験はなく、面談が中心と明記されています。
(引用元:東芝 キャリア採用 FAQ)
必須・推奨される資格
共通で必要な資格はありません。
ただキャリア採用の求人の場合、ほとんどがプロフェッショナルなポジションの求人のため、実務経験やその業界での経験が必須となっています。
具体的には上述した実際の求人や採用ページをご覧ください。
また英語の資格が求められている求人はほとんどありません。
面接で聞かれること
東芝の中途採用の面接は、圧迫面接と普通な面接の間ぐらいの雰囲気のようです。
昔ながらの質問形式が多く、時計をみない、目を見て話す、などの基本的な姿勢もよく見られます。
さらに英語のリーディングがあります。具体的には英語を読み、そこからの質問があります。具体的な質問例は以下です。
- 入社の動機について
- 研究テーマについて(技術職)
- 職歴、経験などを詳しく
- 専門職の場合、具体的なスキルや知見の深さなど
東芝への転職に関する口コミや評判
最後に、東芝の現社員や元社員の口コミをご紹介します。
内情がわかると思いますので、参考にしてください。
・既に人々の生活や社会インフラに深く入り込んでいるので、今更なくせないし何だかんだいっても人々の生活や日本社会を支えている事は間違いないとは思う。(事務系・20代)
・新技術の創出には長けておりエンジニアとしての働き甲斐があったが、残念ながら伝統的に商売が下手で、折角のシースを世界で実らせることが苦手であったが、それでも食って行けるおおらかさもあった。(営業・50代)
・他にはない優れた技術を沢山持っている。研究所には優れた人材が沢山いる。彼らの持っているポテンシャルを発揮すると素晴らしい会社になることは間違いない。(技術系・50代)
・昨今の一連の不祥事で明らかになった社内体質は改善の兆しは見えず、組織・人材育成という点では下降の一途を辿ると思われる。(人事・20代)
・エネルギー事業は保守、廃炉等で数十年先も一定の仕事はあると思うが、環境規制の流れを考えると、今のままでは成長は見えない。(事務系・20代)
・他社と比較しても相当恵まれていると思います。40代で年収一千万プレイヤーが沢山います。他社に比べて複雑な試験があるわけでもなく昇格、昇給がしやすい印象もあります。(クリエイティブ職・40代)
・最速で新卒から16年目で副参事(課長級)に昇格できれば、月給60万円とボーナス二回で年収1100万円に達する。業界でも高水準。(事務系・30代)
・残業代は全て出る。またボーナスについても不満はない。フィードバックがあるため、納得できる。(技術系・20代)
・業務未経験者に対しては、心地よい待遇かと思う。残業代は1分単位でつくので、良いと思う。(流通・40代)
・よほど大きな成果をあげなければ、大幅な収入アップはない。研究者の収入が関係するカンパニーの業績に引きずられる。(技術職・40代)
・評価制度は9段階と細かく評価されます。(エンジニア・20代)
・歴史の長い大企業だけに、年功序列要素は根強く残る。しかし近年は昇格審査を厳しくし、相当の実力と成果がなければ係長級止まりとなるなど、成果主義の考え方も実際に影響し始めている。(事務系・30代)
・表面的には人事考課、賞与査定、目標管理、360度評価、チームサーベイ東芝様々な施策を実施している。これは非常に良い事だと感じたし、私としては定期的にこういう機会があると非常に良かった。(事務系・40代)
・ボーナス査定は、事業部ごとの業績に寄るところが大きく、事業部をまたぐ移動はまず無いので、入社配属で運命が分かれる。(技術職・60代)
・評価基準が曖昧で納得がいかない場合があります。また、絶対評価ではなく相対評価で評価されます。(技術職・20代)
・大会社なのでプロジェクトの予算、規模が半端なく大きい。世界中でグローバルに仕事をすることができる。他の国のビジネス手法を学ぶことができる。(営業・40代)
・取り扱う事業は幅広く、また専門性も必要なため、やりがいは非常にあります。(エンジニア・20代)
・手を上げれば、大変だが、やりたいことをやらせてくれるし、成果を上げれば表彰制度などもあり、査定評価される。開発予算等、規模が大きく、外注等を使って大きな仕事ができる。(技術系・60代)
・。配属当初は、色々なチームや業務を経験する事で、自身の興味やモチベーションの方向を決める事から始める。仕事については、自分からボトムアップで色々と提案できる場も多い。(事務系・30代)
・過去の成功体験によるものか、関係先とのしがらみによるものか、とにかく新しいことを始めるのに時間がかかるし頓挫してしまうことも良くある。また、仕事の進め方にあまり独自性を求められない。(事務系・40代)
(引用元:キャリコネ、openwork、転職会議、カイシャの評判)
おわりに
2015年の不適切会計事件から、社会的にかなり逆風を浴びながらも、倒産することなく続いている東芝ですが、正直まだまだ事態は収束しておらず、社員も日々変化ある中で頑張っているようです。
そんな東芝ですが、どうせ立ち直るならと働き方改革も進み、労働環境は悪くないようです。
しかし、人員削減を明言していることから、転職先として見るのであればあまりチャンスは多くありません。
ただ枠がないわけでは決してないので、自分の希望と専門性など強い部分がマッチするようであれば、是非チャレンジしてみることをお勧めします。