雇用保険から支給される「失業手当(基本手当)」
雇用保険に入っていても、受け取るには条件があり、すぐには支給されない場合もあります。
すぐに受け取ることが出来る方法や、受け取るための条件、受け取れる金額などを解説します。
失業手当を受けるには?給付される額は?
失業手当を受け取る条件
失業手当は、雇用保険に加入していることに加え、以下2つの条件を満たしている必要があります。
条件1:雇用保険の加入期間が過去2年間で通算12ヶ月以上ある
失業手当を受け取るには、雇用保険の加入期間が離職前の2年間で通算12ヶ月以上必要です。
例外として、会社都合で辞めざるを得なかった方や自己都合であっても正当な理由があった方に対しては、必要な期間が半分の「1年間で通算6ヶ月以上」に軽減されます。
条件2:ハローワークで求職の申込をおこない、積極的に転職活動している
失業手当を受け取るためには、仕事に就く意志と能力があることも必要です。
具体的には、ハローワークで求職の申込をしたうえで、公的職業訓練を申し込んだり、求人に応募したり、面接を受けたりするなどの求職活動実績を積む必要があります。
仕事に就く意志と能力があると認められない方は、失業手当の給付対象となりません。
例)
けがや病気の治療のため、すぐには仕事に就けない方
妊娠・出産・育児のため、すぐには仕事に就けない方
定年などで退職し、しばらく休養するつもりでいる方
結婚を機に退職し、しばらく家事に専念するつもりでいる方、など
失業手当を受け取れる時期
失業手当は、申請してすぐに受け取れるわけではありません。
自己都合退職の場合、受け取りまでに通常はおよそ3ヶ月かかります。
しかし、仕事を辞めた理由によって、初回の失業手当を受け取るまでの流れが異なり、早く受け取れる場合があります。
まずは、失業手当を受け取る手続きの流れを見てみましょう。
失業手当を受け取るまでの流れ
※参考:雇用保険手続きのご案内
離職
可能であれば、在職中に「雇用保険被保険者証」の有無を確認しましょう。
また、勤め先がハローワークに提出する「離職証明書」については、離職前に本人が記名押印又は自筆による署名をすることになっているので、離職理由等の記載内容についても確認してください。
離職後、「雇用保険被保険者離職票」を受け取ります。
この時、会社から離職票が交付されない場合や、事業主が行方不明の場合等については、住居地を管轄するハローワークに問い合わせしましょう。
受給資格決定
住居を管轄するハローワークに行き、「求職の申込み」を行ったのち、手続きに必要な書類を提出します。
手続きに必要な書類は下記になります。
- 雇用保険被保険者離職票
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、住民票記載事項証明書のいずれか)
- 身元(実在)確認書類
(いずれか1点:運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など)
(いずれか2点:公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など) - 写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
- 印鑑
- 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード
ハローワークでは、受給要件を満たしていることを確認した上で、受給資格の決定を行ないます。
同時に、離職理由についても判定されます。
受給資格ありと判断された場合、受給説明会の日時を指定されます。
ハローワークで「雇用保険受給資格者のしおり」を受け取り、受給説明会に向かいます。
雇用保険受給者初回説明会
指定された日時の説明会に必ず出席しましょう。
説明会に必要な物は、「雇用保険受給資格者のしおり」、印鑑、筆記用具になります。
受給説明会では、雇用保険の受給について重要な事項の説明が行われます。
説明会後、「雇用保険受給資格者証」、「失業認定申告書」を受け取り、第一回目の「失業認定日」が決定します。
失業の認定
4週間に1度、失業の認定(失業状態にあることの確認)を行う必要があります。
指定された日に管轄のハローワークに行き、「失業認定申告書」に求職活動の状況等を記入し、「雇用保険受給資格者証」とともに提出します。
受給
失業の認定を行った日から通常5営業日で、指定した金融機関の預金口座に基本手当が振り込まれます。
これで申請は終了です。
再就職が決まるまでの間、「失業の認定」と「受給」を繰り返しながら仕事を探すことができます。
受け取れる時期は退職理由によって違う
よく聞くのが自己都合退職だと失業手当が給付されるまでに3ヶ月かかるという話です。
通常は3ヶ月かかりますが、「特定受給資格者」または「特定理由資格者」に該当する場合、早く支給してもらうことも可能です。
※令和2年10月より、自己都合退職の給付制限期間が2ヶ月に短縮されました
参考:「給付制限期間」が2か月に短縮されます~ 令和2年10月1日から適用 ~|厚生労働省
特定受給資格者
特定受給資格者とは、倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた受給資格者のことを指します。
会社が倒産したためやむを得ず離職となった会社都合の他、かなりの残業をさせられたため辞めてしまったという理由が該当します。
かなりの残業とは、離職までの6ヶ月間のうち
- いずれか連続する3か月で45時間
- いずれか1か月で100時間
- いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間
上記を超える時間外労働が行われたため離職に至った人が該当します。
特定理由資格者
特定理由資格者は、特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職した者を指します。
具体的には、病気やケガ、妊娠・出産、事業所が通勤困難な場所に移転してしまったなどの、自己都合ではあるがやむを得ない事情により退職してしまった方になります。
「特定受給資格者」または「特定理由資格者」に認定されると、受給条件である被保険者期間12ヶ月以上必要とされる条件が、期間が短縮されて6ヶ月以上に緩和され、失業保険等の受給資格を得ることができます。
完全な自己都合退職でも失業手当をすぐに受給する方法とは?
職業訓練校に通う
完全な自己都合退職の場合でも、職業訓練校に通うことで受給までの機関を短縮することが可能です。
しかし、公共職業訓練コースに応募して、受講をすることが条件になるため、職業訓練校の選考が入るため、合格して受講できるようになって初めて支給されます。
応募時期も決まっているので、希望するコースの募集が終了していたり、募集自体がない時期があったりする場合もあります。
公共職業訓練コースを受講すれば、自己都合退職であっても給付制限を短縮できますが、時期によってはすぐに給付を受けられない点を注意しなければなりません。
事前にハローワークで自分が希望する訓練コースが受講できるかなど、確認しておくようにしましょう。
特定理由離職者になる
特定理由離職者になることでもすぐに支給を受けることができます。
詳細はこちら。
失業手当で給付される額
失業手当の金額はおおよそ離職前の給与の50%~80%と言われており、離職前の給与水準が低かった方ほど給付率が高く設定されています。
計算方法は以下の通りになります。
(1)賃金日額を計算する
賃金日額 = 離職前6ヶ月間に支払われた給与*の合計額 ÷ 180日
ただし、賃金日額には上限と下限があるため、上記の計算式で求めた金額が上限額を上回る場合には上限額を、下限額を下回る場合には下限額を賃金日額とします。
上限額 | |
---|---|
29歳以下 | 13,700円 |
30~44歳 | 15,210円 |
45~59歳 | 16,740円 |
60~64歳 | 15,970円 |
下限額 | |
---|---|
一律 | 2,574円 |
※参考:雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和2年8月1日から~|厚生労働省
(2)基本手当日額を計算する
①で求めた賃金日額に所定の給付率をかけて基本手当日額を求めます。
基本手当日額 = 賃金日額 × 50~80%
基本手当日額の給付率
賃金日額 | 給付率 |
---|---|
2,574円以上、5,030円未満 | 80% |
5,030円以上、12,390円未満 | 80%〜50% |
12,390円以上 | 50% |
※離職時の年齢が60歳を超える場合、賃金日額11,140円に対し、給付率45%となります。
また、基本手当にも限度額があります。
基本手当日額の上限と下限
離職時の年齢 | 上限額 |
---|---|
29歳以下 | 6,850円 |
30~44歳 | 7,605円 |
45~59歳 | 8,370円 |
60~64歳 | 7,186円 |
下限額は、一律2,059円になります。
※参考:雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和2年8月1日から~|厚生労働省
(3)支給総額を計算する
②で求めた基本手当日額に給付日数を掛けます。
これで、失業手当の支給総額がわかります。
支給総額 = 基本手当日額 × 給付日数
給付日数は仕事を辞めた理由が自己都合か会社都合かによって異なります。
自己都合で離職した場合の給付日数
離職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||
---|---|---|---|
10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合で離職した場合の給付日数
離職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上 35歳未満 |
90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上 45歳未満 |
90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上 60歳未満 |
90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |