「誰もが『宇宙』の恩恵を受けられる時代を創る」防衛省→freee社→宇宙事業に挑む粟津CEOが描くビジョン


ライター:中村めぐみ

空を見上げて、「この先の宇宙には、何があるんだろう?」と、思い描いたことが、誰にでもあるのではないでしょうか。

憧れの領域に、スタートアップのスケールで挑むのはスカイゲート・テクノロジズ株式会社(以下、スカイゲート社)のCEO、粟津 昂規(あわつ・たかのり)氏

同氏は慶応大学を中退後、防衛省・自衛隊からフィンテック企業freee社を経て、スカイゲート社を創業。「2030年には誰もが衛星データを使ってビジネスをよくできる時代を創る」というビジョンを実現するクラウドプラットフォームを開発するための準備を着々と整えています。

「【社会を構成する、一般の人々の役に立つ仕事をする】というミッションを追いかけることが自分にとって最も尊いと考えてきた」と謙虚に語る粟津CEOへ、創業までの経緯や、世界観について伺いました。

Profile

粟津昂規
粟津 昂規(あわつ・たかのり) スカイゲート・テクノロジズ株式会社 CEO

慶応大学在学中にテックスモールビジネスを創業し、CTOを務める。2011年中退。2012年、国家試験に合格し防衛省・自衛隊に入省。地上通信/衛星/サイバー/セキュリティ関連の部隊マネージャー・事業担当等を担う。2014年の御嶽山噴火では通信部隊の長として大規模災害派遣も経験。

2018年、freee株式会社にジョイン、自衛隊時代のスキルを活かし、「クラウド会計freee」のセキュリティマネージャ/セキュリティPMなどをつとめ、開発から事業リスクまでFinTech/SaaSの様々な課題と向き合う。並行して、国内の小型衛星開発会社にエンジニアとしてコミット、IaaS/地上局設備を手伝ううちに、宇宙時代の真のペインにぶちあたる。2020年1月にスカイゲート・テクノロジズ株式会社を創業。

スカイゲート・テクノロジズ株式会社:公式Webサイト
Linkedin:takanori-awatsu-skygate
Twitter:@awa2_sg

誰もが衛星を使って10分以内に地球のデータを手に入れる

スカイゲート・テクノロジズ社のビジョン
(スカイゲート・テクノロジズ社のビジョン。引用元:同社公式ホームページより)

――宇宙事業といえば、研究機関や大手重工業を目指す方が多数派です。あえてスタートアップで挑戦する理由を教えてください!

粟津:
宇宙への憧れを抱きながら航空宇宙工学科等に進学しなかったのは、高校生の頃、「どうやら宇宙事業ってすごく頭が良い人がやるものだぞ」と現実が見えたことと(笑)、「学問を究めるよりモノづくりに携わる方が向いていそう」との想いからです。

アカデミックな道を諦める一方で、宇宙にまつわる文献、資料を読み漁るなど、趣味程度に勉強していました。

よく「なんで宇宙ビジネスを?」みたいな質問を受けるのですが、「宇宙ビジネス」という言葉がちょっと変で。捉え方としては、「宇宙って、本質的にはただの場所」という感じです。厳しい条件ではあるけれど、地球に喩えると南極のようなものだ、と。だけれど、人々の心の中に憧れの象徴、すごく遠い場所というイメージがあるな、って。

なので、宇宙を身近に且つ誰もがビジネスをよりよくして豊かに暮らせる仕組みづくりができればと、このタイミングでの挑戦を決めました。

――これまで防衛省・自衛隊からfreee社へ転職し、傍から見ると異色のキャリアを描くなかで、今回の創業につながる経験はありますか。

粟津:
防衛省・自衛隊とfreee社は違うことをしているようで、「普通に社会を構成する人々のための仕事をする」というミッションに日々向かっています。アプローチの方法が、守る側か、価値を届ける側か、の違いです。そして、freee社在籍時に副業としてコミットした国内小型衛星開発会社で抱いた疑問が基になり創業に至っています。

――なるほど、ミッションベースでキャリアを形成してこられたのですね。1つずつ、紐解いていければと。自衛隊ではどのようなお仕事をなさっていましたか?

粟津:
入省後すぐ通信部隊に配属され、2014年の御嶽山噴火では通信部隊の長として現場に入りました。ほぼ一週間寝ることなく作業にあたりましたが、日頃そのための訓練を重ねているので、人命救助活動にあたる仲間のために何かできることはないか?と、高いモチベーションで臨んでいましたね。

有事の際、通信部隊がすべきことのひとつは、衛星通信のアンテナを立てることで、そのための訓練を重ねていました。通信衛星って、地球から3万6000 km 離れてるんですよ。何百キロ、何千キロも離れた、遠くにいる人たちとの通信を実現する…日々の訓練を通して、「こんな技術を開発した人類すごいなぁ」と、いつも空を見上げていました。

守る側から「マジ価値」を届けきる集団、freee社へ

守る側から「マジ価値」を届けきる集団、freee社へ

――自衛隊からfreee社へ転職した経緯を教えてください。

粟津:
通信部隊を経験した後、市ヶ谷で主にサイバーセキュリティ対策・システム監査に従事しました。国民・国土を守るという素晴らしいミッションである半面、「守る側には出来ることが限られているな、事業会社で価値を届ける側をやってみたい」と思い至り、最終的にfreee社CISOの土佐さん(Twitter:@teppei_tosa)のスカウトがきっかけで入社しました。

――入社の決め手となったのは?

粟津:
freee社のコミットメント、「マジ価値」に共感したためです。

※「マジ価値」とは…
本質的(マジ)で価値ある(ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言える)ことをするという考え方。
(引用元:職場環境と制度 | freee株式会社 採用情報

僕は岩手県の田舎出身でもあり、freee社の「スモールビジネスや個人事業を営む方が、自分のやりたいことを全力で出来るように支えるのが弊社のプロダクトなんです!」と、誇りを持って言える取り組みが良いな、と思いました。

――いわゆる「公務員」から事業会社の一員となり、ご自身が成長したと思うポイントは?

粟津:
プロダクト開発を第一に考えるべきであり、セキュリティが理由でビジネスの速度が落ちたり、プロダクト提供が落ちたりするようなことがあってはならないのだ、と感じました。

また自衛隊時代にはなかったこととして、Web マーケティングからセールス、カスタマーサクセスまで幅広い事業部に囲まれて仕事ができたのが良かった、と思います。

――不満がない環境からの退職、今回の創業に至った理由は。

粟津:
freee社と並行して、国内小型衛星の開発会社にセキュリティエンジニアとしてコミットするなかで、「人工衛星から『見えてる』データを、マーケティングツールとして活用する仕組みまで持っていくにはどうすれば?」と疑問を抱いたのがきっかけです。

人工衛星から受信するデータを、たとえば町のお豆腐屋さんとかで使えるようにしたら、ビジネスをより良くできるんじゃないか、でもなんでできないんだろう、と。

人工衛星をWebマーケティングツールのように

人工衛星をWebマーケティングツールのように

――改めて、スカイゲート社のビジネスについて教えて下さい!

粟津:
最優先しているのは、「2030年までに誰もが衛星データを使って自分のビジネスを良くしたいと思った時に、誰にでもできる」というビジョンの達成です。

幅広い宇宙関連事業のなかで、身近な社会に最も寄り添っているのは、人工衛星の技術です。

その中で、地球の観測データを取り扱うリモートセンシング衛星の情報を、スモールビジネスのマーケティングに使えるようにするためのインフラ整備に挑戦します。

――Webマーケティングツールのようなイメージですか?

粟津:
Webマーケティングツールがすごいのは、「Webサイトに訪れてくれた、離れたところにいるお客さんの行動が見える」からなんですよね。「見える」ってすごい価値で、それを起点に多くのビジネスが変わっていったと思っています。

ビジネスがインターネットに移行する時代とはいえ、多くの新興国や地方は「物理社会」…実際に店舗に来てくださるお客様とのやりとりがビジネスの基本なわけで、そういった方にとって大事なのは、Webよりも物理的な情報かもしれませんよね。まだ、物理社会はそんなに見えてない

人工衛星から受信した画像データが見られるようになれば、物理社会に対して、Webマーケティングツールと同じことができるはず、と考えています。

――具体的にどのような活用方法がありますか。

粟津:
例えばですけど、「リアルタイムの画像情報を活かした商圏分析」です。

豆腐店を例にとると、「隣町の豆腐店が繁盛してるって聞いたけど、なんでだろう?」という疑問に対して、リモートセンシングの情報で車の移動の動きをぱっと見れたら、「このエリアから人がいっぱい来ていた」「高速道路から降りてくる人が多かった」など発見があって、新しいビジネスのアイディアも浮かぶかもしれない。そういうイメージです。

――商圏分析のためのマーケティングツールとして、地図情報を活かしたエリアマーケティングツールが先行していますが、差別化のポイントは?

粟津:
リアルタイム性、あるいはタイムシリーズデータが取れる事です。時系列の変化を広域に定期的に取りたい、と思った時にセンシング衛星の情報は大きな威力を発揮します。

「昨日、一昨日の状態を知りたい」。 Web マーケティングの世界では普通に実現していることを、物理社会にも持ち込めたら面白いと思ってます。

――そういった世界観の実現にあたって、スカイゲート社ではどの事業に挑戦しますか?宇宙開発を主業とする他の国内ベンチャー企業との違いは?

粟津:
人工衛星の開発や宇宙利用は、いろんなパイオニアの方々が挑戦している。それでも様々なボトルネックがあって、そもそも衛星や、ロケットが足りないなど、様々な課題がありますが、僕が挑戦したいのは、人工衛星が飛ばすデータを受信するためのアンテナを建設することです。

データを受信するためのインフラ整備が整えば、これまでよりも多くのデータを扱って、スムーズにデリバリーできるようになる、という考え方です。

――インフラを整え、価値を届ける。防衛省・自衛隊と、freee社のキャリアの掛け合わせですね?

粟津:
その通りです。情報を届けるインフラをつくるのは、自衛隊で大事なことだと思ってきましたし、一方でスモールビジネスの人たちのビジネスを豊かにするためのやり方も、freee社で磨かれた素敵な世界観だと思います。

――実際の需要についてはどうお考えですか。

粟津:
もちろん、事業に関連するユーザーインタビューやヒアリングを繰り返しています。「いやいやそんなに需要がないよ」っていう手厳しい意見も、これまで多くの方に言われてきました。でも、僕が考えている世界が実現したら楽しいんです。それだけは間違いがなくて。なのでこの世界をもし実現できたら、人類は嬉しいよねというのはよく話しています。

――最後に、2030年の自分に一言お願い致します。

粟津:
10年後の自分は「誰もが衛星データを使って自分のビジネスを良くしたいと思った時に、誰にでもできる」世界を実現できているのかな?

もしできていなかったら、「何で?本気出したの?」って聞きたいですね。

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~粟津CEO アナザーサイド~

――プライベートでは2人のお子さんを持つ粟津CEO。このタイミングでの挑戦をご家族はどう捉えていますか。

粟津:
僕はリスクを取ってダイナミックに行動したいタイプである一方、妻は安定して中長期的なビジョンを描きたい人なので、考え方が結構違うんですよ。

でもそれは夫婦に限らず人間関係で往々に生じることなので、妻に対しても、「結婚してるから、僕の考えてることを受け入れてくれるでしょ」ではなく、懸念事項や課題を擦り合わせる「家族説明会」「家族ディスカッション会」を開催し、スカイゲート社の創業も応援してくれています。

価値観が正反対だからこそ、このようなコミュニケーションができたのかもしれません。

家族ディスカッション会の様子
(妹さんご夫妻も参加する家族ディスカッション会の様子)

ホワイトボード
(事業計画や家族にまつわる懸念事項、課題について書かれている)

――では、2030年の奥さんに対しても、一言お願いします!(笑)

粟津:
苦労をかけていると思いますので、これからもこの先も、「どうもありがとうございます」とただ伝えたいです。そして、お互いの人生が一緒によくなるように取り組んでいけたらな、と思います。

――本日はありがとうございました!

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