転職エージェントから「インサイドセールス」という仕事を勧められました。転職しやすいと聞いていますが、辛い職種ではありませんか?
最近、インサイドセールスという職種をよく耳にします。これってどんな仕事なんでしょうか?
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、内勤型営業(外に出ない営業職)のことです。
え!?外回りをしないでいいの?
はい、その通りです。外に出ない代わりに見込み客との初回接触を担当します。この時のコミュニケーションには主に電話やWeb会議ツールが利用されます。
そこでのやり取りで「検討段階で受注の可能性が高い」と判断した場合は外回りの営業(インサイドセールスの対義語でフィールドセールスやアウトサイドセールス、と呼ばれます)にパスします。
もし「まだまだ情報収集段階で無理に商談しても無駄足になってしまう」と思われる場合はEメールや資料送付などでフォローして温度感を高め、検討段階に移行させるのが役割です。
例えばあなたが病院のIT担当者で、コロナ禍への対応のためにオンライン診断システムの導入を検討していたとします。
以前から登録しているメルマガで興味深いレポートを見かけたので、メールアドレスを入力してPDFを取り寄せました。
普通であれば「参考になったなあ」で終わってしまったり、「他社の資料は無いだろうか?」と競合のサイトに遷移したりすると思います。
そうなる前にすかさず「レポートの内容はいかがでしたか?」と連絡し、フォローするのがインサイドセールスの仕事です。
インサイドセールスの由来
インサイドセールスの概念は1980年代のアメリカで誕生しました。
国土が広いアメリカにおいて、営業担当者が取引先をまわるというスタイルはあまりにも非効率でした。
そこで各社に採用されていた電話営業というスタイルがインサイドセールスの原型といわれています。
その後、1990年代後半のインターネットの発展と共にインサイドセールスは爆発的に普及し、現在アメリカでは、法人営業の約半数がインサイドセールスとなっています。
ヨーロッパでも割合が増加しており、日本では2010年代から注目されるようになり、マイクロソフトやセールスフォースなどの外資系企業はもちろん、NTT東日本などの日系大手企業やユーザーベースのようなスタートアップまで幅広く導入されています。
(引用元:お客様の法人営業改革をインサイドセールスで支援する|ブリッジインターナショナル株式会社)
また、現在の日本におけるインサイドセールスは、その由来となった電話営業とは役割が異なります。
従来の営業は、見込み客の発掘からヒアリング、クロージングといった仕事を一人ですべて行っていました。
このスタイルは営業担当者の負担が大きすぎるため、見込み客の発掘を「マーケティング部門」、初回アプローチとヒアリングを「インサイドセールス」、商談・クロージングを「フィールドセールス」というように分業されるようになりました。
ですので、現在の日本におけるインサイドセールスは、マーケティング部門が獲得した見込み客に接触して、受注確度が高い場合はフィールドセールスに流すという役割のポジションです。
また、受注確度が低い場合は、メールや電話でのアプローチを続け、自社の製品やサービスへの関心を高めるという役割も担っています。
インサイドセールスとテレアポの違い
でもそれってテレアポとどう違うの?
インサイドセールスの仕事はアウトバウンドのテレアポ担当者とよく比較されます。
両者の決定的な差は「接触対象」です。
テレアポは電話帳や企業リストの上から順番にアプローチするのが仕事です。その対象が自社サービスに興味を持っているかどうかは分かりません。
その上、断られたコール先に対するフォローは業務に含まれていません。
一方でインサイドセールスはWebサイトの資料(ホワイトペーパー)ダウンロードやメルマガを通じて集めた自社リード(インバウンドリード、といいます)をアプローチ対象にします。
※ 場合によってはMAツールなどを利用して「いま、自社サイトを訪れているユーザー」を特定してコンタクトすることもあります。
ですから最初から「ある程度自社や商材に興味があるユーザー」と接触することになります。
また仮にアポイントメントにならなくてもメールやWeb会議ツールなどを使って、見込み客のステージに応じた間接的なコミュニケーションを維持しようと工夫します。
それらの見込み客が将来的に商談につながれば自身の評価になるからです。
テレアポ | インサイドセールス | |
---|---|---|
接触対象 | 電話帳や企業リスト | 自社のリード |
アプローチ姿勢 | 商品をプッシュする | 検討度合いを確認する |
アポにならなかった後のフォロー | しない(もしくは電話で再度フォロー) | する(メールなどのCRMが中心) |
評価基準 | アポ件数 | 最終的な売上 |
インサイドセールスの仕事の特徴
- 対法人が中心
- インサイドセールス部隊を導入にする企業のほとんどがBtoB企業です。これは「安価なクラウド型サービスを幅広く提供したい」というBtoB企業のニーズにインサイドセールスの特徴がマッチしていることが理由になっています
- 業務が比較的マニュアル化されている
- フィールドセールスに比べるとインサイドセールスの仕事はマニュアル化・ルーチン化しやすい業務です
- 自宅でできる
- リモートワークでもできる仕事です。そのためか、新型コロナウイルス流行後も求人が減っていません
- 目標はやはり「売上」で評価されることが多い
- インサイドセールスの評価をフィールドセールスにパスした「数」だけで決定するとまだ検討段階でない顧客を無理やり商談に送り込んでしまうことに繋がります。インサイドセールスの評価は最終的に成約した売上で決定されることが多いです
- CRM(顧客管理ツール)と併用される
- 見込み客のデータやステータスを一元化管理するのに利用されます
- MA(マーケティングオートメーション)と併用される
- 見込み顧客のステータス毎に異なる施策を打ち、温度感を高めるために利用されます
- メルマガと併用される
- すぐに商談につながらなかった見込み客に継続して情報提供するために利用されます
- 将来的にはマーケティング部門と融合していく
- Web広告やCRMやMA、メルマガを管理して見込み客(リード)の獲得を担当するマーケティング部門とその見込み客にアプローチするインサイドセールス部門は非常に近い存在です。将来的に同化していくのは自然な流れでしょう。
どうして今「インサイドセールス」が注目されているのか?
「インサイドセールス」の注目度は転職市場にも現れています。
リクナビNEXTに掲載されているインサイドセールスの求人は東京都だけで125件(2020年5月)。
新型コロナウイルスによる外出自粛の影響をほとんど感じさせません。
どうしてこれほどまでにインサイドセールスが必要とされるようになったのでしょうか。
理由は以下の通りです。
- そもそも日本の営業は忙しすぎた
- 見込み客の発掘からヒアリング→クロージング、受注後のフォローアップまで。これを1人の担当者に任せていた日本の営業ははっきりいって異常でした!
- 安価なクラウド型・サブスクリプション型サービスの普及
- 大型案件を狙いにいくのではなく、多くの取引先を獲得できる仕組みが必要になしました
- Webマーケティングの普及
- Web広告やSNSを使ってインバウンドの見込み客(リード)をたくさん獲得できるようになったため、温度感の違いによってフィルタリングする必要が出てきました
- セキュリティの厳格化
- 企業のセキュリティや個人情報の管理が厳しくなり、飛び込み営業やテレアポが難しくなりました
インサイドセールスの年収とキャリアパス
仕事内容を理解していただけたところで、年収についてです。
それだけ需要がある仕事ならば、さぞかしインサイドセールスの年収は高いのだろうと考えがちですが、意外とそうでもありません。
というのも前述の通りマニュアル化しやすい業務であるため、日本では未経験者や第二新卒でもどんどん採用するという傾向にあるためです。
結果として年収400万円(月給28万円+賞与)前後が中央値となっています。
いい方を変えると前職で大きな成果を上げられなかった営業経験者でもチャレンジしやすい仕事なのがインサイドセールス。
他者(他社)との折衝経験があれば営業未経験でも転職のチャンスがあります。
インサイドセールスはキャリアの広がりが大きい仕事
インサイドセールスはキャリアアップしやすい仕事です。
フィールドセールスへの出世
まずわかりやすいのがフィールドセールスへの出世というキャリアパス。
なんだ結局営業か・・・
いえいえ、これがそうでもないのです。一般的にインサイドセールスを配置する企業ではフィールドセールスはその上位職として扱われます。
ですから皆さんがイメージする営業(≒ソルジャーのイメージ)とは大きく異なり、社内的な扱いは「できる人」「エリート社員」に近いです。
事実Salesforce社などはどれだけ営業実績のある方でもインサイドセールスからスタートし、成果をあげるとフィールドセールスにランクアップできる仕組みです。
当然成果を上げれば年収は大幅アップ。(賞与を含めて800~1,000万円も十分射程圏内です)
顧客開拓はインサイドセールスがアシストしてくれますから、顧客のクロージングに集中できるまさに花形ポジションです。
カスタマーサクセス担当
カスタマーサクセスとは契約中の顧客のフォローをする仕事です。顧客を成功に導き、顧客を解約させないことやアップセルを実現することが目的です。
インサイドセールスを導入する企業の多くがクラウドかつ月額サブスクリプション型のサービス企業(SaaS)ですから、多くの場合このカスタマーサクセス部門も配置しています。
インサイドセールスとして経験を積むと、顧客の状況や心理をある程度理解しているものとしてカスタマーサクセス部署にアサインされることもあります。
カスタマーサクセスはインサイドセールスに比べてイレギュラーで高度な顧客対応が要求される職種であるため、年収はアップしやすいです。
マーケティング部門への異動
前述の通りマーケティング部署との親和性が高いインサイドセールス。仕事内容的に実は幅広い顧客に対して最も距離が近いポジションでもあります。
経験を積む内に、「顧客の気持ちを最も理解している人」としてマーケティング部署や経営企画へ配属となる可能性もあるでしょう。
実際に前職の私の後輩は新卒でインサイドセールスを経験し、MAツールの導入と運用を促進する部門へ引き抜かれていきました。
今後は部門ごと統合されるような動きも加速していくことでしょう。
インサイドセールスとして転職するには
インサイドセールスとして転職を考えるのであれば、これまでの経験に照らして進路を検討してください。
※ クリックで解説にジャンプします
順番に解説していきます。
(1)営業として十分な実績がある場合
営業として十分な実績があるのであれば、SalesforceやOracleのような大手外資系企業でチャレンジすることで大幅な年収アップが見込めます。
御存知の通り結果がものをいうハードな世界ですが、その分リターンは最高峰。
特に外資のセールスパーソンは顕著で、トップセールスでは年収が2,000万円を超える方もいます。
ただし外資への転職ルートはやや特殊です。
なぜなら大手の外資系企業はダイレクトリクルーティング(ダイレクトソーシング)を重視しているからです。
ダイレクトリクルーティングとは転職エージェントの仲介を受けずに、必要な人材を自社で発掘し、アプローチすることです。
そのため例えばリクルートエージェントのような大手エージェントに登録しても、有力な外資系企業の求人票を受けることは困難です。
外資系企業ではダイレクトリクルーティングのためにリクルーターと呼ばれる専門部隊を組織しています。
リクルーターの役割は現場サイドからの要望に合う人材(転職予備軍)を発掘し、採用プロセスへ導くことです。
Amazon、Microsoft、Salesforceなどの日本法人では、社内に10~30人のリクルーターを配置しています。
大手外資系企業への転職の最短距離は彼らリクルーターの目に留まる事です。
リクルーターに接触することができれば、「どんな求人票(Job Description)があるのか」「合格するにはどんなアプローチが有効なのか」を知ることができます。
この外資系リクルーターが人材の発掘に利用しているのが、レジュメバンクと呼ばれる転職サービスです。
これは一般的な転職エージェントと異なり、あなたが登録した履歴書が人事やリクルーターに匿名で閲覧されるサービスです。
中でもビズリーチはGAFAのリクルーターも利用しているといわれています。
外資への転職をお考えなら登録しておく価値は十分あります。
ビズリーチ
外資系リクルーター・ヘッドハンター多数
登録ヘッドハンター約3,800人。中にはGAFAなど大手外資のリクルーターも。
利用者の口コミ
- 36歳 男性
外資のリクルーターがとにかく多い。レジュメはしっかり書くことをおすすめする。
- 30歳 男性
自分のタイミングで転職活動を進められるのは良い。転職が決まるとお祝いが貰える。
- 28歳 女性
大手企業の人事もかなり見ているようなので一定以上の経験がある方には向いていると思う。私には不向きだったかな。
大手外資系企業志望の志望動機例
CRMのセールスパーソンとして3年半勤務いたしました。
1-2年めこそ目標未達でしたが、3年めは11社のお客様にご導入いただき110%での達成となりました。
安価で導入しやすいのが売りのパッケージとはいえCRMの導入にあたってはハードルが多いので、担当者様の負担を減らせるよう導入前の仕様策定や導入後の運用まで踏み込んでお手伝いしていたのがなんとか達成できたポイントだと思います。
しかし安価なパッケージであるためにどうしても実現できないことも多く、その面では歯がゆい思いをしておりました。
一方で業界最大手である御社のCRMは高いカスタマイズ性が魅力です。単にパッケージを売るのではない自分の営業スタイルが合っているものと考え、ご応募いたしました。
単に成果をアピールするだけでなく、「何が秘訣だったのか」を説明する。上記の例はそれが転職理由にもなっていて美しい。
(2)営業実績が少ない、もしくは未経験の場合
営業実績にあまり自信が無い方の場合ですが、クラウド型サービス(SaaS)を展開するIT系スタートアップが狙い目です。
これらの企業でインサイドセールス部門を取り入れる会社が増えています。(というかほとんどのクラウド型サービス企業で導入されています)
こうした企業の募集の場合、「ウチのサービスは世の中に無かったものだから、これまでの実績はアテにならない。営業経験さえあればよい、なんならコミュニケーション能力さえ高ければ良い!」と考えている人事も多いです。
実際に法人営業からSaaSベンチャーのインサイドセールスに転職された方は少なくありません。
(参考:第二新卒 大手重工メーカーグループの法人営業から、上場SaaSベンチャーのインサイドセールスに)
※ ここ数年インサイドセールスの募集が多いSaaS例
分野 | 代表的なSaaS |
---|---|
医療機関向けヘルステック | YaDoc、CLINICS |
HRテック | interview maker、HARUTAKA |
CRM・SFAなどの営業支援 | Salesforce、Zoho |
ヘルプデスク、カスタマーサポート | Zendesk、Mail Dealer |
名刺管理 | Sansanなど |
会計・請求書発行 | freeeなど |
このような業種の企業がインサイドセールス部門を組織して求人を募集するということは、「そのサービスが伸びている(もしくは市場性がある)」という証拠でもあります。
これまでの商材や業務内容では目が出なかったとしても、成長事業のインサイドセールスとしてならまったく別の結果になるかもしれませんよ!
なお、SaaS系企業へインサイドセールスとして転職を目指す場合はぜひリクルートエージェントをご活用ください。
インサイドセールスの求人数はリクルートエージェントがダントツです。
求人数(2020年5月5日現在)
転職サービス名 | インサイドセールスの求人数 |
---|---|
リクルートエージェント | 2,078件 |
doda | 262件 |
マイナビエージェント | 300件 |
リクナビNEXT | 125件 |
クラウド型サービス(SaaS)企業向けの志望動機(営業経験あり)
私は新卒採用向けのポータルサイトの広告営業として3年間勤務して参りました。
正直なところ営業成績はなかなかふるいませんでしたが、個人で人事向けノウハウブログを開設したりHR系の勉強会に参加したりしている内に知り合った方々からお仕事をご紹介いただくよう自分でネットワークを広げる努力をして参りました。
しかし「ポータルサイトでいくら集客してもリソース不足で面接で会うことがかなわない」という顧客の声を多数耳にしており、自社サービスだけではこの問題の本質的な解決は難しいと感じました。
御社のWeb面接サービスは兼ねてから耳にしており興味をもっておりましたが、今回求人を拝見し、これまで培ってきた経験やHR界隈での人脈が活かせるものと思い応募致しました。
「売れないなりにどんな努力をしたのか」が見えるように。また、新卒採用向けのポータルサイト→Web面接採用の間をつなぐ存在である「HR」という文脈を盛り込んで志望動機としての論理性を強化している。
クラウド型サービス(SaaS)企業向けの志望動機(営業経験なし)
新卒入社から1年半、歯科医院向けクラウド型サービスの販促担当として働いていました。
セミナーや展示会の準備と当日の運用が仕事です。
仕事自体にやりがいはありましたが、営業サイドは良質なリードを求めているのに集めた名刺の数ばかりを評価する会社の方針は疑問でした。
クロージングを担当する営業とファーストリードの間を取り持つインサイドセールスの導入には兼ねてから関心があったので、見込み段階のお客様の気持ちが分かるインサイドセールスとして現場に立ってみたいと思い、インサイドセールス職の募集を探しています。
御社はオンライン診療サービスを手がけられておられますが、歯科医院向けクラウドと近い部分がありますので先生方の気持ちになって対応できるのではないかと思い、今回ご応募いたしました。
未経験のインサイドセールス志望者としては「リード獲得側・顧客型双方の心理や仕組みが分かっている」のがある程度強みになっている。この場合「前職の何が不満だったのか」は掘り下げて聞かれることが予想されるため、そこは腹を割ってお話しよう。
「いつも目標達成を強く意識するのだが、その目標自体に不合理なものを感じた」というストーリーになっていると営業経験者以上の評価となってもおかしくない。