企業と働く人をつなげる機能を担う人材サービス業界。少子化で人手不足に陥る企業が増える今、2019年の売上ベースでの市場規模は9兆円とも言われており、介護市場よりも大きくなっています。
また、「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」によると、人材サービス業は今後、ミドル・シニアが増える就業構造への対応、異業界転職への対応、グローバル人材確保の課題に取り組む必要があるとのこと。
(出典元:「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」)
この背景を受け、転職者と直接対面しヒアリングを担うキャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーには今後どのような役割が求められるのでしょうか。また、ハローワークなどの公的機関と職業紹介・労働者派遣・請負といった民間事業者のなかで、自分に合った職場は…?
そんなあなたのために、キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーの転職について紹介します。
キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーの仕事内容
キャリアコンサルタント・キャリアアドバイザーとは、人材サービス産業で、求職者ひとりひとりの希望をヒアリングしながら、思い描く未来に向かっていくために、一緒に仕事を探したり、そのための助言をしたりする仕事です。
ヒアリングをするなかで、本人の経歴や希望条件、気づいていない魅力やセールスポイントを引き出していき、適正に合った職場を紹介しますが、最終的に就職、転職先を決めるのは本人の意思になります。
その意思決定を適切に促すのが、キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーに求められる役割です。
キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーが求められる公的機関、企業は主に以下の4種類です。
ハローワーク | 公的機関 | 大学、専門学校等の教育機関 | 公的機関 | 人材派遣会社 | 民間企業 | 就職、転職エージェント | 民間企業 |
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キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーの平均年収は?
お仕事において年収が全てではありませんが、お給料はあなたの努力と成長の証。年収アップはやはり「転職が成功した!」と思える条件の一つです。
公的機関から民間企業まで幅広く求められるキャリアコンサルタント、キャリアアドバイザー職では給与レンジも様々です。そこで2020年3月現在に公開されている求人から年収例を調べました。
キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーの初年度収入例 | |
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ハローワーク 職業相談員(パート) |
時給1,243円~ ※関東の求人 |
学校法人 キャリアセンター職員(正社員) | 年収205万円~年収350万円 |
NPO法人(正社員) | 年収350万円~ |
人材派遣会社(正社員) | 年収350万円~ |
新卒就職エージェント(正社員) | 年収360万円~ |
日系転職エージェント(正社員) | 年収400万円~ |
外資系転職エージェント(正社員) | 年収550万円~ |
※本表には求人票に掲載の年収のうち低い方をピックアップしましたが、民間企業ではお給料の幅が大きく、特に外資系企業では最大年収900万円とされている求人もありました。
最も求人が豊富なのは民間企業で、人材派遣会社、新卒就職エージェント、転職エージェントの3種類です。
傾向として、日系企業では総合職として、企業担当、求職者の両方を担当するのが求められる求人が多いのに対し、外資系企業では特定の領域のポジション(例:ファイナンス領域、リーガル領域…等)のエキスパートが求められています。
専門性という意味では、NPO法人でも障害、福祉領域の就労支援を行うキャリアアドバイザーが求められています。
しかしこの領域の求職者は発達障害やメンタルヘルス不調など医療にまつわるより高度な判断や配慮が求められるため、自分の専門性を高めてキャリアアップするよりも、適切な専門家との連携が重要です。
ですのであなたがキャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーとして、働きながら専門性を高めて年収をアップさせるためには、まずは民間企業へのキャリアチェンジをおすすめします。
国家資格「キャリアコンサルタント」は必要?
2016年4月からそれまで民間資格だったキャリアコンサルタントが国家資格となりました。もちろん当資格を所持していれば転職にはプラスに働きますが、実際転職する場合はそれほど重視されていません。
また2018年に行った調査によると、キャリアコンサルタントの国家資格を持ちながら活動できていない方は663名で、その理由として「キャリアコンサルティングの仕事がない」を挙げている方は2割以上にも上ります。
(出典元:独立行政法人労働政策研究・研修機構)
国家資格以外では、JADP認定の「キャリアカウンセラー」や、「メンタルキャリアカウンセラー」「シニアキャリアカウンセラー」などもありますが、いずれも入社段階で必須条件になることは稀です。
ですので、資格を取得するのはむしろ転職活動が成功した後、キャリアアップやスキルの裏付けのために取得するのが良いでしょう。
そして、キャリアコンサルタントの転職で求められるのは、(1)人材業界経験、(2)営業経験のいずれかもしくは両方です。転職活動では、現場経験をアピールしましょう。
キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーの4つの方向性
まずはこちらの表、「キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーのキャリアマトリクス」をご覧ください。
社会全体に貢献したい | 個々のキャリアアップに貢献したい | |
---|---|---|
実績に自信なし | A)派遣会社 | C)日系転職エージェント |
実績に自信あり | B)就職エージェント | D)外資系転職エージェント |
キャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーのキャリアマトリクスは、転職Doオリジナルの考え方で、クリエイティブ職の方が幸せに働くための方向性を描いたものです。
縦軸は「社会全体に貢献したいor個々のキャリアアップに貢献したい」
横軸は「実績に自信ありor実績に自信なし」
※ ここでいう「実績」とは営業実績に限りません。マーケティング職として売上に貢献した、経理として従来の会計の仕組みをバサッと変えた、人事として超低コストでの大量採用に成功した、など、自信を持ってアピールできる経験であればどんな職種のものでもかまいません。
この2つの要素の組み合わせで方向性が見えてきます。
A)社会に貢献したい×実績に自信なし
公共、福祉に広く貢献し、人材業界のジェネラリストとしてキャリアを形成したい方は、人材派遣会社のキャリアアドバイザーが方向性として合っています。
派遣会社へ登録する求職者の方の中には、スキルはあるもののさまざまな事情でフルタイムでの就職が難しい方、これまでのキャリアに課題感をお持ちの方もいらっしゃいます。
そんな求職者の背景を丁寧にヒアリングしながら、希望、条件に合う企業とマッチングすることは大きなやりがいです。
また人材派遣会社では、クライアント企業への営業とキャリアカウンセリングの両立が求められています。さらに、媒体出稿、法律改正への対応、労使協定の調整など幅広い業務を任せられる傾向も。
変化の激しい人材業界のなかで、キャリアカウンセリング、企業ニーズのヒアリング、法改正、そして求職者との面談まで対応できれば、2~3年後には人材業界のジェネラリストとして活躍できるでしょう。
人材派遣業界は人手不足感が強いため、選考通過率が高いところが特徴です。リクナビNEXTに求人がゴロゴロありますのでぜひチェックしてみてください。
B)社会に貢献したい×実績に自信あり
社会へ幅広く貢献し、専門性を高めたいあなたは、新卒採用支援、新卒採用エージェントのキャリアコンサルタント、アドバイザーが方向性として合っています。
入社3年以内の離職率が30%を超える昨今では、「入社3年後のミスマッチをなくすこと」をミッションとする新卒採用エージェントも。
また情報感度の高い新卒学生はしっかりと就職について対策を立てる傾向にあり、大学の就職課だけではなく、新卒採用支援エージェントを利用する学生も増えています。
そんな学生たちは良い意味で意識が高く、仕事を通して学生の可能性を広げる仕事に大きなやりがいを感じられるでしょう。
また、新卒採用エージェントの良いところは、その名の通り新卒に特化することが求められていることです。選考の際は、「とにかく新卒採用がやりたい」という情熱をアピールしましょう。
「アスリート学生の就職支援」「グローバルリーダー輩出」「IT業界とのマッチング」など新卒採用でも更に専門性の高い案件を扱う求人もありますので、ご興味のあるところにまずは応募してみてはいかがでしょうか。
エキスパート求人が豊富な転職サービス、dodaへ登録することをおすすめします。
doda
C)キャリアアップに貢献したい×実績に自信なし
日系の転職エージェントのキャリアアドバイザーが向いていると診断されたあなたは、求職者のキャリアアップに貢献しながら、人材業界で知識、経験を深めていくのが方向性として合っています。
多くの場合、日系の転職エージェントは、営業とキャリアコンサルタントの両方を兼務することがほとんどで、数社の企業担当+転職希望者との面談やサポートを行います。
日系の転職エージェントに転職する最も早い近道は、あなた自身が転職エージェントに登録する方法です。転職エージェントでは他社はもちろん自社の求人も扱っています。
実際私の知り合いは、リクルートエージェントに登録して転職活動を進めていたところ担当者の仕事内容に興味をもってしまい、最終的にそのエージェントの自社求人を紹介してもらって入社を果たしました。今は同社のキャリアカウンセラーとして活躍しています。
登録後の面談の際に思い切って「キャリアアドバイザーの仕事に興味があるんです!」とお伝えしてしまうのが一番!
まずはサポートが手厚いことで有名な「マイナビエージェント」から登録してみてはいかがでしょうか。
マイナビエージェント
D)キャリアアップに貢献×実績に自信あり
外資系転職エージェントに向いていると診断されたあなたは、特定業界のエキスパートとして転職者の支援をする方向性が合っています。
外資系企業でも、日系企業と同様に、企業担当/キャリアコンサルティング担当を兼務するポジションがほとんどです。
その一方で、求人の段階からどの領域(例:エンジニア、財務、法務…等)の人材コンサルタントとして働くか明記されている求人も多く、自分が何を担当するかが分かりやすい傾向もあります。
外資系の転職エージェントには外資系企業からの求人が大半を占めます。求人票の要件を理解するためには、英語力はスピーキングよりも読み書きの方が重要ですので、これまで業務で触れた経験があれば必ずアピールしましょう。
大手企業の外資系エージェントの中には、自社ホームページからの応募を受け付けている企業もありますから、直接応募も視野に入れてみてはいかがでしょうか(例:マイケルページ、ランスタッド)
エージェントに限らず外資系企業では、実績、数字をアピールすることがポイントですから、あなたのキャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーとしての経験を、数字、実績でアピールできるよう準備しましょう。
まとめ
キャリアコンサルタント、アドバイザーとして活躍し、働き甲斐と年収を高めるためには、まずは自分が「社会に幅広く貢献したいのか」、それとも「高度人材に対応するために専門性を高めたいのか」、どの方向に進むかを一旦自分で決める必要があります。
今一度、キャリアコンサルタントのマトリクス表を見ながら、自分の行きたい方向性を考えてみてくださいね。