はじめに
NHKは、2018年11月13日に、2018年中間決算を発表しました。その発表によると、2018年の中間収益が3,675億円のうち、3,553億円が受信料です。この中間収益は、5年連続で過去最高となっています。このような結果となったのは、NHKの受信料を支払うか否かの最高裁大法廷判決の影響が大きいとされています。NHKが決算速報で公開している受信料の決済額の推移からも確認できます。
(引用:平成30年度 決算の速報|日本放送協会)
(参考:毎日新聞)
みなさんもよくご存知の通り、NHKとは「日本放送協会」と呼ばれる公共放送局です。NHKの番組を見ていてもいなくても関係なく、番組の受信をしていることで受信料を支払う義務が発生します。国民からの受信料で事業運営を進めているのが最大の特徴です。
NHKに受信料を支払わなければならないと法律で守られているため、放送業界のなかではダントツの安定性を持っています。そのような安定的なNHKに転職したいと考える方も多いでしょう。この記事では、NHKの転職情報や採用情報などを、実際の口コミと合わせてご紹介していきます。
NHKへの転職についてのまとめ
- 口コミからの総合評価
- 3.45
NHKの転職レーダーチャート
NHKの特徴
- 1950年に設立された公共放送局で、国民の受信料を徴収して事業収入としている
- 放送内容は、教育番組や大河ドラマなどの国民的番組が多い
- 平均年収1,160万円(平成27年度)と放送業界でも非常に高い水準
(参考:平均年収.com) - 安定している公共特殊法人とはいえど、放送業界特有の忙しさがあり、平均残業時間が50時間前後と多め。
- 近年は女性も働きやすい環境を整えるために、産休制度などを積極的に取得する傾向にある
NHKへの転職でおさえておきたいポイント
- 配属部署によってハードワークになる可能性が高く、ワークライフバランスが取りにくいこともある
- 「記者」のキャリア採用は通年行われているため転職しやすい
- 記者以外の職種は季節ごとに募集される
- 他の非公開求人も探すべく、転職エージェントに相談しながら活動を進めるとよい
NHKの企業情報
はじめに、NHKの企業情報を公式HPからまとめました。
基本情報
※スマホの方は横にスクロールしてご覧ください
事業内容 |
・国内放送(総合テレビ Eテレ BS1 BSプレミアム BS4K・8Kラジオ第1・第2 FM) ・放送と受信の進歩発達に必要な調査研究 ・国際放送 ・その他、放送法に定められた業務 |
---|---|
代表者 | 前田 晃伸 |
設立 | 1950年6月1日 |
資本金 | なし |
従業員数 | 10,333人(2019年度) |
所在地 |
〒150-8001 東京都渋谷区神南2-2-1 |
(参考:日本放送協会ーNHKの概要)
(参考:日本放送協会ーよくある質問)
企業理念やビジョン
NHKでは、以下のような基本理念を立てています。
豊かで、かつ、良い番組の放送を行うこと。
それにより文化水準の向上に寄与すること。
(引用元:日本放送協会ー文化を担う)
冒頭でも述べた通り、NHKでは、教育番組や教養番組・大河ドラマなどを中心に放送されています。そしてこの基本理念のもと、日本の文化水準が向上することを目指しているのです。より心が豊かになるような日本の放送を作り続けています。
そして、この基本理念を念頭に作られるNHKの番組は多岐に渡ります。例えば以下のような番組です。
・一般的教養の向上を図る番組。
・社会的関心を高め、また、生活文化についての知識を深める番組。
・児童に、豊かな情操と健全な精神を養う番組。
・過去の優れた文化を保存し、かつ、新たな文化を育成、普及する番組。
・すぐれた芸能を取り上げ、古典芸能の保存と各種の芸能の育成に役立てる番組。
・家庭を明るくし、生活を豊かにする娯楽番組。
(引用元:日本放送協会ー文化を担う)
NHKに転職した際には、このような国民の心を豊かにする番組に携われます。しっかりと基本理念を理解し、NHKへの転職を成功させましょう。
NHKの転職基礎知識
次に、NHKの転職に関する基礎知識をご説明します。
平均年収
1,160万円(参考:平均年収.com)
放送・映像・音響業界の平均年収:480万円と比較すると、2倍以上の高い水準です。また、NHKのよくある質問によると、平均年齢41.2歳、平均勤続年数17.5年とあります。給与面も労働環境も安定していると言えるでしょう。
テレビ業界に限定して比較してみると、民放キー局の平均が1396万円ですので業界のなかでは控えめです。
(出典元:2019年版 業種別 モデル年収平均ランキング - マイナビ転職、テレビ局企業の平均年収ランキング-年収ランキング)
世代別平均年収
次に、世代別の平均年収を確認してみましょう。
※スマホの方は横にスクロールしてご覧ください
年代 | 平均年収 | 最高年収 | 最低年収 |
---|---|---|---|
20代 | 500万円 | 573万円 | 313万円 |
30代 | 600万円 | 763万円 | 500万円 |
40代 | 925万円 | 1000万円 | 775万円 |
50代 | 1000万円 | 1100万円 | 800万円 |
(引用元:転職会議)
企業口コミサイト「転職会議」によると、NHKの世代別平均年収はこの通りになりました。これは、一般的な世代別平均年収と比較しても高い水準です。転職サイト「doda」の「平均年収ランキング」では、20代の平均年収:345万円、30代:442万円、40代:507万円、50代:622万円となっています。どの世代も圧倒的にNHKの平均年収の方が上回っていることがわかるでしょう。口コミを見ても、給与に関しての不満はあまり上がっていないようです。
労働環境
- 残業時間が法定時間ギリギリになることも多い。しかし最近では、残業時間を減らす取り組みが行われている。これまでのノウハウの蓄積がないため、すべてのしわ寄せが管理職に行っていて悲惨。
- 週休二日は確保、3連休や5連休を取得することが目標とされている。さらに、年に1回は9連休を取得するようにとも指示を受けるため、休暇に関しては満足度が高い
- 勤務時間に関してはフレキシブルに調整が可能。また働く場所も、在宅や局以外の都合の良い場所を選ぶことができる
- 休暇は取りやすくなったが、その分自己研鑽していかなければ、経験がモノを言う業界なので先輩社員のように活躍できない
- 順次オフィスの改修が行われているため、綺麗なオフィスで働くことができる
福利厚生
- 住宅手当、財形貯蓄、共済会を通しての保険などが手厚く準備されている
- 人間ドッグなどの補助金ももらえるため、意識して利用すれば健康に関しては手厚い
- 保養所が3軒あるが、繁忙期は予約がなかなか取れない
- 福利厚生サービスは色々あるが、ホームページが使いにくく実用的なサービスが少ない
- 交通費は全額支給、残業などで終電がなくなったときはタクシー代も請求できる
残業時間
口コミサイトでは、42.1〜54.5時間とばらつきはあるものの、近年の会社としては多い傾向にあります。
最近の働き方改革の動きによって、以前よりは残業時間が減ったようですが、そのしわ寄せが管理職に押し寄せています。また、選挙や災害などがあった場合に、休日がなくなるようです。休日返上してどこの局よりもいち早く放送することを徹底しているNHKでは、そのような場合にしばらく休みは取れないこともあります。
有給消化率
口コミサイトでは、47〜61%と幅があります。
前述の通り、働き方改革推進のために、3・5・9連休の取得や有給休暇取得を進めています。そのため、有休消化しやすい環境ではあるものの、担当している番組や部署によっては希望時期に休暇を取得できないこともあるのです。しかしながら、月に1日以上は有給休暇を取得するようにと言われているなど、取りやすい環境であることには間違いありません。
NHKの中途採用求人情報
それでは、NHKの中途採用に関する求人情報を解説します。
NHKにはどのような職種があるのか
NHKには以下のような職種があります。
制作系 |
・ディレクター (番組制作・報道番組)(情報・報道・教育・教養・ドラマ・芸能) ・映像デザイナー ・音響デザイナー ・アナウンサー ・記者 ・映像取材 ・映像制作 |
---|---|
マネジメント系 |
・放送事業のマネジメント (財務・編集・総務・イベント・広報・著作権・経営スタッフ・ 放送文化研究・営業企画) |
技術系 |
・コンテンツ制作技術 (撮影・音声・証明・ビデオエンジニア・特殊CG・ デジタルコンテンツ開発・ニュース送出) ・放送システム開発・運用 (放送設備・システムの開発・導入・番組送出・回線構築・ 運用管理・電波受信環境の調査・分析・改善) ・放送技術研究 (8Kスーパーハイビジョン・放送と通信の連携・人にやさしい放送・ 未来の放送デバイス・自然で見やすい立体テレビ) ・建築技術 (放送会館と電源・空調設備・電源・空調設備の設計・開発) |
(参考:日本放送協会ー先輩たちの仕事)
NHKでは、大きく分けて「制作系」「マネジメント系」「技術系」と3つの職種に分けられています。特に技術系に関しては、細分化されており専門的知識が必要です。
求人の傾向・採用している職種
NHKの公式HPを確認してみると、現在は「記者」職のみの募集がかけられています。記者以外の職種の求人は季節ごとに、「春採用」「冬キャリア」のような形で募集されます。転職サイトdodaでは、現在は募集が行われていません。そのため、NHKの記者職以外に転職したい方は、ホームページの募集情報を随時チェックしつつ、転職エージェントに登録して非公開求人があるかを確かめましょう。
転職エージェントによって得意な業界や職種、企業規模などが異なりますので、まずは自分の希望に合う転職エージェントを見つけましょう。
NHKのような大手企業への転職の際には、大手企業とも強いパイプをもっているマイナビエージェントとリクルートエージェントがおすすめです。
その他の転職エージェントについて詳しく知りたい方は1106人に聞いた、口コミで評判のおすすめ転職サイト・転職エージェントの情報も参考になります。
また、希望する企業と職種が決まっている場合は、エージェントの担当者には、はっきり伝えておきましょう。
仮にそのタイミングで取り扱いがなくても今後の見込みをアナウンスしてもらえたり、関連企業の求人などを案内してもらえたりする可能性もあります。
実際の求人情報
実際の記者に関する求人情報を見てみましょう。
【募集業務】
記者
【応募資格】
社会人として勤務経験のある方
【応募方法】
「マイページ通年採用(記者キャリア)」にて、基本情報を入力後、Webエントリーシートを提出
(参考:日本放送協会ー募集要項)
NHKの公式HPでは、詳細な情報は記載されていませんでした。公式HPのマイページに登録する必要があります。具体的な情報が欲しい方は、転職エージェントに相談してみましょう。
NHKの採用方針
NHKの公式HPにある「3分でわかるNHK」によると、NHKは「みんなのための放送局」です。NHKは、営利を目的としておらず国とも干渉していないことから、真の公共放送であることがわかります。また、災害報道をいち早くお届けするためにも、東京・渋谷の放送センターではほぼ毎日のように災害訓練を実施しているのです。
このことから、NHKで働くには教養を高める意識を常に持ち、主体的に行動できる人材を求めていると言えます。また、教育や教養番組を主としているため、自分の考えを発信し周囲と共有することで、新しい番組の発信ができる人材も好まれるでしょう。
NHKの選考に関する情報
ここでは、NHKの選考に関する情報を考察します。
NHKへの転職難易度
NHKへの転職難易度は、高いと言えるでしょう。
募集条件などは厳しくないものの募集自体が少なく、高い収入と安定した労働環境のため人気もあります。
前述の通り現在では「記者」の募集以外は常時行われていません。そのため、他の職種を希望の方は季節ごとの採用しかチャンスがなく、個人での転職活動に限界があります。他の職種を希望している方は、ぜひ転職エージェントを活用して、非公開求人などの有無を確かめておきましょう。
選考の流れ
残念ながら、中途採用の選考フローは公開されていません。以下の選考フローは、新卒のものとなります。
・総合職…エントリーシート→企業独自の選考→1次面接
・技術職…エントリーシート→Webテスト・SPI→筆記試験→1次面接→最終面接
・放送管理…エントリーシート→1次面接→筆記試験→2次面接
(参考:就活会議)
職種によって選考の流れが異なるようです。また、中途採用の選考フローはおそらく新卒の選考フローとは異なりますが、エントリーシートや面接回数などは参考になるかもしれません。詳しくは転職のプロに相談してみましょう。
筆記試験の有無、種類
NHKの筆記試験は以下のような内容です。
・SPI(言語・非言語・英語・性格)
・小論文(800文字)
・筆記試験(1時間程度の問題)
(参考:Goodfind)
小論文では、「プライド」「こんなものはいらない」などと曖昧なテーマが出題されることが多いようです。過去問を中心に対策を立てておくと良いでしょう。
必須・推奨される資格
NHKの記者の求人を確認してみると、「社会人としての勤務経験がある方」のみの応募条件となっています。
しかし、必要なスキルや資格は応募する職種によって異なることを念頭に置いておきましょう。例えば、アナウンサーならば「滑舌・発声の良さ」や多少の「英語力」が求められるかもしれません。その仕事において必要なスキルは身につけておくことをおすすめします。
面接で聞かれること
NHKの面接では以下のような質問をされることがあります。(参考:転職会議)
- なぜ公共放送を選んだのか
- どのような番組を作りたいか
- 前職の退職理由はなんですか
- 全国転勤だが問題はないか
- 泊まりで遠方に行くこともあるが大丈夫か
- 忘れられない失敗体験は何か
このような質問の他に、志望動機などの一般的な質問が多いようです。あまり変わった質問はなく、「泊りがけの仕事もあるが大丈夫か?」「全国転勤だが大丈夫か?」などと意思確認とみられる質問もありました。一人で対策を立てることに不安がある方は、転職エージェントに相談してみましょう。
NHKへの転職に関する口コミや評判
最後に、NHKの現社員や元社員の口コミをご紹介します。
・番組自体を自由に制作できる社風で、全社的に番組に関する危機意識が高いため、民放放送よりも将来性を感じる(20代・ディレクター)
・意欲的なディレクターに対してあたりが厳しいお役所的な上司がまだ残っているため、素敵な番組を作れる人ほど転職してしまう傾向にある(20代・ディレクター)
・制度の中での番組制作で、その枠組みから逸脱することはない。そのため良くも悪くも成長性を感じない(30代・営業)
・潰れることはないだろう。不景気の時も給与は下がらないが、景気が良い時も上がることはない(20代・ディレクター)
・将来性を感じられない。テレビ離れが急速に進み、NHK拒否の風潮も高まるばかり(20代・ディレクター)
・30代手前で、年2回のボーナスを含めると年収480万円ほど。同世代の人と比べたら高い水準で満足している(20代・ディレクター)
・視聴率によって評価が左右されることはないため、管理職に上がるまではみんな一緒に待遇が上がっていく感じ(30代・クリエイティブ)
・年功序列で、同期とはほとんど給与は変わらない(20代・クリエイティブ)
・年収は他社と比較して高いため満足している。完全な年功序列で安定的だが、管理職になってもあまり変わらない(30代・営業)
・年功序列な社風なので、仕事ができてもできなくても、年数を重ねれば均一に上がっていく。ある意味弊害(20代・技術)
・管理職になるまで、正直他の人との差がないため、なんのための評価制度なのだろうかと疑問に思う(30代・クリエイティブ)
・毎年、上司と考課面接を行うため目標を意識することができる。番組の視聴率が評価に直結するわけではない(30代・クリエイティブ)
・上司からの評価を受けるため、人による部分が大きい。また「良い評価は順番ね」などと直接言われたこともあり納得感はない(30代・エンジニア)
・売上などの明確な目標がないため、上司が下す評価が非常に曖昧。いまだに飲みニケーションなどの古い考え方で評価を決める上司もいる(40代・ディレクター)
・年度始めに今年の目標、中間総括、年度終わりにフィードバックをもらい、年3回の目標を意識するタイミングがあり分かりやすい(40代・エンジニア)
・仕事のやりがいははっきり言ってある。自由な風土でなんでも提案できる。ただし、上司が受け入れてくれるか否かは上司次第(30代・営業)
・やりたい企画などがあれば、提案しそれをサポートしてくれる職場環境である(20代・ディレクター)
・テレビはオワコンという人も多いが、まだまだ影響力は絶大である(20代・マーケティング)
・本人のやる気と高いモチベーションによっては、とことん突き詰められる仕事である(20代・ディレクター)
・ディレクターとして、企画提案し番組制作が始まると、長い時で半年ほど専念できる。また、個人で進められる風習のため、時間の使い方が自由(20代・ディレクター)
(引用元:キャリコネ、openwork、転職会議、カイシャの評判)
おわりに
NHKと聞くと、最近では受信料を支払うか否かの裁判で個人と争った印象が多く持たれているNHKですが、基本理念の豊かで良い番組を放送することを目的としている日本国民のための企業です。内容は教育や教養など、人が成長する上で欠かせないような番組を制作しています。そのようなNHKの番組制作に携わりたいと考え、転職を希望する方も珍しくありません。NHKに転職したい方は、ぜひ転職エージェントを活用しましょう。