EC業界とは
ECとは、Electronic Commerce(電子商取引)の略称です。EC業界は、インターネット上でさまざまな商品やサービスを売買するサービスを運営する企業の総称です。
代表的なECサービスとして、次のようなサイトがあります。
総合EC:Amazon、楽天
ファッションEC:ZOZTOWN、SHOPLIST、LOCONDO
食品・ネットスーパー:イオン、西友
CtoCプラットフォーム:メルカリ、minne
ECサイトの躍進が続く中、DtoC(Direct to Consumer)チャネルを活用したビジネスモデルが注目されています。
DtoC(またはD2C)とは、メーカーが中間業者や店舗を通さずに、自社のECサイトを通じて直接顧客に販売するビジネスモデルを指します。
Webマーケティング施策を自由に実施でき、ショッピングサイト内での価格競争もないことから、Amazonなどの大手ECサイトから脱却し、自社ECサイトを持つ企業が増えています。
EC業界の規模
EC業界は、コロナ禍による巣ごもり消費の強い追い風を受け、急成長している業界のひとつです。
(引用元:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書|経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)
経済産業省が発表したデータによると、2019年までの市場規模の成長率は1桁前半でしたが、2019年から2020年にかけては21.71%の成長率となっています。
2020年に野村総合研究所から発表された「ITナビゲーター 2021年版」によると、国内だけで20兆円、世界的にも467兆円の市場規模になっています。
業界全体としてユーザー数が増加しているだけでなく、利用頻度やユーザー一人当たりの購入金額も上昇しているとのこと。
また、市場規模と併せて、業界大手の平均年収と平均年齢についてまとめました。
企業名 | 平均年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
楽天グループ | 745万 | 34.2歳 |
ZOZO | 547万円 | 33.0歳 |
メルカリ | 820万円 | 32.4歳 |
BASE | 644万円 | 32.0歳 |
アスクル | 785万円 | 34.2歳 |
(参照元:会社四季報 業界地図2022年版、就職四季報2023年版)
楽天グループでは、国内外のグループ社員間の円滑な情報共有、世界の最新情報をスピーディに掴むこと、そして世界中から優秀な人材が集まり、一体感をもった競争力のある組織にしていくことを目指してEnglishnization(社内公用語英語化)を推進しています。
EC業界は世界規模のグローバルビジネスになるため、楽天グループのようにTOEICのスコアなどの英語力を求められることが多くなってきています。
また、EC業界はさまざまな企業と関わりを持つことが多いため、元気で明るい人物が求められたり、業務範囲が徐々に拡大していくことから自ら進んで業務範囲を広げることができたりする人材が求められる傾向にあります。
EC業界の職種
商品企画
商品企画は、ECサイトで販売する商品を決定する職種です。
商品企画には、消費者ニーズに応えるためのトレンド力や、データ分析からECサイトの売上を伸ばすための分析スキルが求められます。
販売する商品を決定した後は、商品企画をバイヤーに伝えたり、社内の商品開発部門と調整したりと、さまざまな関係者と連携して仕事を進める必要があるため、コミュニケーション能力も欠かせません。
また、商品紹介のための写真撮影や原稿作成、メールマガジンやプロモーションの文章作成など、クリエイティブなスキルが求められる場合もあります。さらに、ECサイトのコーディングも担当することがあるため、プログラミングのスキルが求められる場合もあります。
商品企画の仕事内容(例)
- 物流関連アイテムの仕入れ・販促担当
- 仕入れ先への定期的な連絡・訪問
- 販促アイテムのキャンペーン・展示会出展企画
- 社内営業担当向けの商品説明会実施
- 市場動向・ニーズの情報収集
- ECサイト運営
マーケティング
マーケティング職は、ECサイトや商品を広く認知してもらうための職種です。ECサイト経由で多くのユーザーに商品を購入してもらうために、さまざまな施策を企画・運用します。
ECサイトはネット上での販売となるため、Webマーケティングが主な手法となります。
- SEO
- リスティング広告などのWeb広告
- コンテンツマーケティング
- SNSマーケティング
- メールマガジン
SEOやリスティング広告、SNSマーケティングなどを組み合わせてマーケティング戦略を立てる必要があるため、Webマーケティングに関する幅広い知識が必要となります。
また、Webマーケティングの特徴として、成果や効果がすぐに測定できることが挙げられます。
例えば、リスティング広告の場合、広告の効果が出ていないと感じたら、その日のうちに広告文や入札価格を変更することで、すぐに改善することが可能です。
従来のマーケティングよりも開始後の軌道修正がしやすいので、スピード感を持って成果に向かって改善していきたい方におすすめの職種です。
マーケティング職の仕事内容(例)
- EC売上の予算管理
- 中長期的なEC事業計画の検討、策定
- アクセス解析や顧客分析などのデータ分析
- ネット広告の予算策定、運用、効果測定
- 長期的なブランディング広告戦略の立案など
バイヤー
バイヤーとは、商品計画に基づいて商品を選定し、購入する職種を指します。
バイヤーには、データを分析する能力やコミュニケーション力などのスキルが求められます。
また、担当する商品に関する専門的な知識が不可欠なので、その商品に興味があるなどの資質も重要です。
バイヤーの仕事の成果は販売数や売上という形で明確に表れるため、自分の仕事の成果を直接実感したい人におすすめの職種です。
バイヤーの仕事内容(例)
- 市場の調査、市場動向のチェック
- メーカ―や商社など新規取引先の開拓
- 仕入れ、社内調整
- 販売戦略の策定、効果分析、改善
フルフィルメント
フルフィルメントとは、一般的にECで商品を注文してから、エンドユーザーに商品が届くまでに必要な業務全般を指します。
フルフィルメントの業務は主に「入荷・検品」「棚入れ・保管」「受注処理」「ピッキング」「検品」「梱包」「出荷」の7つの作業から構成されています。さらに、カスタマーサポートも兼務する場合があります。
フルフィルメントでは、商品が届くまでの一連の業務を円滑に進める必要があります。顧客に近い仕事であるため、企業のブランディングにもつながる重要な仕事です。
フルフィルメントの仕事内容(例)
- 販売管理システム対応
- コールセンタースタッフのエスカレ対応
- 受注管理
- 在庫管理
- 決済管理
- 物流管理及び配送キャリアとの折衝
- 資材発注管理
注目の職種:ブランドマネージャー
「ブランド」は、企業価値を高め、競合との差別化を図るための重要な要素です。
ブランドイメージは、EC業界において、消費者行動を左右する重要な要素であると言われています。
例えば、同じ性能・価格の異なるメーカーの製品が2つ目の前にあった場合、顧客の立場からすると、知名度や性能の高さで評判の高いブランドを選びたくなるものです。
そんなブランド戦略を担うのが、近年注目されている「ブランドマネージャー」という職種です。ブランドの世界観を醸成し、消費者がそのブランドに対して抱くイメージにプラスの影響を与えるような、一貫した戦略を立案し、実行するのがブランドマネージャーの仕事です。
EC業界で求められるスキル
業界知識や経験
EC企業全体として、ECの経験や知識があり、即戦力となる人材を求める傾向にあります。
EC業界はまだ黎明期であり、経験者や詳しい知識を持った人が少ないため、ECへの参入・拡大の需要は多くあります。
特に新規にECに参入する企業にとって、EC業界は未知数な部分が多くあります。ECに詳しい人材を企業は高く評価しますので、EC業界での経験や知識があれば、キャリアアップもしやすくなります。
Webマーケティングスキル
ECサイト運営に欠かせないのが、Webマーケティングです。
EC業界で求められるWebマーケティング力は、大きく3つになります。
- Google Analyticsなどのツールを使ってアクセス情報を分析するスキル
- 自社ECサイトが上位表示されるようにサイトを最適化するSEOの知識
- 新規顧客を獲得するためのWeb広告運用経験
どれかひとつに精通しているだけでも、転職の際に大きく評価されるスキルとなります。
持っているスキルで、運営するECサイトの課題を解決できるような提案ができれば即戦力となる人材と認められます。
数字データへの強さ
EC企業で働く場合、数字を扱う能力が最も重要なスキルのひとつとなります。
ECサイトは実店舗と違い、運営の成果がすぐに数字として表れます。訪問数、成約数、広告効果などの結果が、常に数値で正確に把握することができるのです。
そのため、結果をすぐに分析し、新たな施策を打ちだし、実行するというサイクルを効率的に回す必要があります。
EC業界での経験がなくとも、アクセス解析や訪問者分析の経験は、EC企業へ転職する際の大きな強みになります。
EC業界で転職するには
経験者はEC業界での経験をアピールする
EC業界の市場拡大に伴い、ECサイトをゼロから立ち上げ、運用した経験を持つ人材の需要が急激に高まっています。
これは、業界がまだ黎明期であり、業界に詳しい人が少ないことに加え、EC市場への新規参入や新規出店が多いことが要因として挙げられます。
EC事業を立ち上げたばかりの企業にとって、「ECサイトの立ち上げ方」や「集客方法」など、何から手を付けるべきかもわからないことが多くあります。
そこで企業は、ECに詳しく、これらの疑問を解決できる人材を即戦力として獲得しようとしています。
たとえ未経験の商材であっても、ECサイト運営はスキルを活かせる部分が多いので、EC業界内で転職する場合は、EC市場に参入したばかりの企業やEC事業を拡大しようとしている企業に転職すると、年収アップやキャリアアップにつながります。
未経験者はEC支援会社からキャリアを積む
未経験でEC業界に参入する場合は、EC支援会社からの転職をおすすめします。
EC支援会社とは、様々なECサイトに対して「売れる成果」を提供する会社です。
EC支援会社は、EC市場に参入する企業を支援しながら、EC業界で必要とされるスキルを身につけられる会社です。
例えば、商品ページの作成やサイトのメンテナンスといったECサイト運営の基本から、Webマーケティングのスキル、データ分析のためのツールの使い方など、幅広いサポート技術を身につけることができます。
また、EC業界未経験の方でも、セミナー企画やDMなどオフラインでの販促経験を活かして、EC支援会社で働くことも有効です。
オフラインの販促経験はECサイトでも活かせる部分が多く、顧客目線の提案・企画を行うため、今までの経験にWebの知識を身につけるだけでステップアップしやすくなります。
ECサイト運営会社と違い、ECサポート会社は自分の仕事の成果が目に見え、周囲から評価される仕事をしたい方に特におすすめです。
美容部員からECコンサルタントを目指す場合の志望動機例
私は化粧品を販売する美容部員として、実店舗で約2年勤務して参りました。
昔から美に関して強い関心があり、多くのメーカーの化粧品やスキンケアを使ってきました。
店舗ではお客様の悩みを直接聞き、肌に合う化粧品を勧めて参りましたが、自分の肌にあった化粧品をより多くのお客様に使用してほしい思いが強く、店舗内での講習会を企画し、新規顧客の集客を行いました。
また、既存のお客様に対しては毎月新商品の紹介メールなどを作成し、リピート率向上に貢献いたしました。
結果として顧客様を20名ほど担当させていただき、店舗トップの売上を6ヶ月連続で出し、店舗売上に大きく貢献してまいりました。
御社のクライアントはコスメの通販会社様が中心とお伺いしましたので、今まで培ってきた美容業界での現場経験を活かせると考えて、ご応募いたしました。
まとめ
EC業界は全体的に人材不足のため、転職しやすい業界になります。
しかし、Web業界と同様に凄まじいスピードで進化していく業界でもあります。
新たな情報を取り入れ、率先して新しい施策を打ち出すことが求められるため、転職の際は意欲的に学ぶ姿勢をアピールしてみてはいかがでしょうか。