建設業界とは
建設業界は、住宅やビルなどの建造物を作る「建築業」から、宅地造成や下水道配管などを行う「土木業」までを包括する業界です。
建設業界の職種は、大工、建築士、インテリアデザイナーなどの建築業に含まれるものから、大工、とび職、土木作業員、塗装工、造園工、電気工などの土木業に含まれるものまであり、他の産業・分野に比べて含まれる職種が多いことが特徴です。
含まれる職種が多いこともあり、慢性的な人材不足に悩まされている業界でもあります。
厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2021年の建設技術者の有効求人倍率は6.01倍となっています。有効求人倍率は数値が高いほど就職しやすいということなので、人手不足から多くの企業が積極的に求職活動を行っていることが分かります。
建設業界の平均年収・年齢
企業名 | 平均年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
鹿島(スーパーゼネコン) | 1135万 | 44.1歳 |
前田建設工業(準大手・中堅ゼネコン) | 927万円 | 43.2歳 |
東鉄工業(鉄道系) | 851万円 | 40.8歳 |
関電工(設備工事) | 751万円 | 41.7歳 |
(参照元:会社四季報 業界地図2022年版、就職四季報2023年版)
建設業界の業種
設計・監督
ゼネコン
ゼネコンとはゼネラルコントラクター(「General=全体的な」「Contractor=請負人、土建業者」)の略称で、総合建設業者を指します。
ゼネコンは、マンションやビルをはじめ、テーマパークや競技場などの大型建築を建てる会社の総称で、受注請負産業の建設業の中でも元請けに位置します。
ゼネコンの中でもトップの5社(鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店)は、スーパーゼネコンと呼ばれています。
ハウスメーカー(住宅メーカー)
ハウスメーカーとは、住宅建築会社の呼称であり、正式な定義ではありません。
ハウスメーカーは、戸建住宅を建てる際の施主の選択肢の一つであり、多くの場合、大手ハウスメーカーを指します。地域密着型などの小規模な業者は工務店と呼ばれることもありますが、広義にはハウスメーカーで一括にされます。
不動産
不動産は「開発・分譲」「流通」「賃貸」「管理」の4つに大別され、開発・分譲はデベロッパーとも呼ばれます。
不動産事業は、個人住宅から店舗、商業施設、オフィスなど幅広い土地・建物を取り扱い、不動産仲介、住宅・土地販売、投資事業など、不動産に関連する幅広い事業を展開していることが特徴です。
設計
設計は、建築施工会社から独立し、企画・測量・設計・工事監理・検査から施工計画・検査・コンサルティングまで、建築に関する幅広い業務を請け負う企業が含まれます。
設計業は、意匠設計、構造設計、設備設計の3つに大別され、建築物の内部・外部・インフラのすべてに関わる業種です。
機械・資材
建設機械
建設機械業は、油圧ショベル、トラクター、建設用クレーン、ブルドーザー、フォークリフトなど、土木・建設工事で使用される機器を製造する業種です。
建設機械業は、自動車や精密機械と並んでグローバルに事業を展開しており、多くの企業が国際的な高い競争力を有していることが特徴です。
仮設資材
建築作業を行う際に用いられる仮設足場や防音シートなどの資材を総称して仮設資材と呼びます。
使用用途は建築物工事全般に及び、製造から販売・レンタル・リースまでをメーカーが手掛けることもあるが、エンドユーザーへの窓口はレンタル・リース業者となるケースが大半です。
建設工事に必要不可欠な仮設足場や防音シートなどを総称して「仮設資材」と呼びます。
使用用途は建設工事全般に及び、製造から販売、レンタル、リースまでメーカーが手掛けることもあるが、エンドユーザーとの窓口はレンタル・リース会社となるケースが大半です。
工事
土木工事
土木工事では、道路、トンネル、ダム、港湾、建築物の基礎工事などのインフラ整備や防災対策を行います。
国や自治体が発注する公共工事が主体です。
管工事
管工事は、建築構造物の配管や空調装置の取付工事、水回りの工事が中心です。
省エネ・節電関連のリニューアル工事やアフターサービスなども行います。
内装工事
内装工事業者は、壁面・天井の塗装やクロス・フローリング針などの仕上げ工事、造作家具や建具などの工事のほか、展示や商業施設のディスプレイなどを行います。
電気工事
電気工事業者は、送電線架設工事、ビル・住宅内の配電工事、電気設備の修繕工事など、送電線、配電盤、電灯、電力機器の設置・修繕工事を手掛けます。
建設業界の職種
施工管理職
施工管理職とは、建設会社のさまざまな建設現場において、安全、環境、工程、コスト、品質などの項目を中心に施工管理を行う職種です。
施工管理職は、建築、土木、設備の3つに大別されます。仕事内容は、専門性の高い様々な建設業の進捗や工程の管理、資材の手配、発注者や設計事務所との折衝など多岐にわたります。
設計職
設計職は、「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3つに大別され、品質の確保はもちろん、技術力やコスト競争力を磨き、独自の技術を提案し、図面として形にしていくのが、大まかな仕事内容になります。
営業職
建設業界の営業職は、不動産会社や官公庁など、施主となるお客様の多様なニーズに応え、社内の各部門ともコミュニケーションをとりながら自社の技術を提案し、工事を受注につなげる仕事です。
建設業界の営業職は、個人だけでなく不動産会社や官公庁など、さまざまな顧客の多様なニーズに応え、社内の各部署とコミュニケーションをとりながら、自社の技術を提案し、工事を受注するのが仕事です。
事務・管理職
事務・管理職は、会社を運営していく上で、工事以外に関する事務的業務を担当します。経理、人事、総務、法務など、その業務は多岐にわたります。この事務管理は本店・支店だけではなく、全国の各工事現場でも必要となります。
事務・管理職は、本社・支社だけでなく、全国の各建設現場でも必要とされるため、求人が多いことも特徴です。
安全部門
安全部門は、建設現場における労働災害の防止、従業員への安全教育、協力会社との安全に関する協力など、建設現場をより安全で快適なものにするための職場環境の整備・管理を担っています。
建設業は、休日の少ないハードな肉体労働、高所や地下での危険な作業、土を扱う仕事で危険というイメージから、3K(きつい、汚い、危険)と言われることが多い職業です。
安全部門は、3Kというイメージを払拭するためにも、必要とされる職種となっています。
建設業界の転職
建設業界から建設業界へ
年収や待遇を上げたいなら「大手ゼネコン」を狙う
大手ゼネコンは、日本を代表するビルや街のランドマーク、鉄道やトンネルなどのインフラ建設など大規模な工事に携わるイメージがあり、社会貢献度が高く、年収などの待遇も高いため、転職先として常に人気があります。
ただし、その分応募資格は厳しめ。
大手ゼネコンの大成建設では、施工管理の応募資格は実務経験5年以上、一級建築士または一級建築施工管理技士などの資格を保有している必要があります。
設計の場合も同様に、8年以上の実務経験と各種資格が必要です。
営業職は実務経験こそ法人営業3年以上と少なめですが、各種資格に加え、TOEIC800点以上のスコアが必要とされています。
建設業界で働き続けるのであれば、実務経験や資格を取得して応募する価値は十分にあります。現職のまま、大手ゼネコンへの転職準備を進めることをおすすめします。
キャリアを活かした志望動機例
前職では、ゼネコンの意匠設計部門で戸建住宅の設計を担当していました。社内では、効率化のため分業が徹底され、月間○棟もの戸建住宅の設計を行いました。
分業が徹底されたことで効率化が図れたものの、自身の希望であるお客様に寄り添った設計を行うことが困難になってしまったことから、転職活動に至りました。
貴社では、営業・設計・施工管理がチームを組み、各案件を一貫して手がけられているとお聞きしました。貴社であれば、今までの経験を活かしつつ、顧客に寄り添った家づくりを行えると思い、ご応募いたしました。
転職に有利な「電気工事士資格」を取得しておく
第二種電気工事士、数ある現場系資格の中でも、未経験でも転職や仕事の幅を広げられることで人気の資格の一つです。
電気工事士は日常生活に欠かせないインフラ設備に纏わる資格のため、需要が下がることはありません。また、あらゆる現場で電気工事士のスキルが必要とされるため、幅広いシーンで活躍できるのが電気工事士の魅力です。
第二種電気工事士の試験は、電気工事に必要な基礎知識を問うもので、きちんと勉強すれば初心者でも合格できる試験です。誰でも受験することができるので、転職前に取得しておくことで、仕事の幅が広がり、条件面でも優遇されるようになります。
実際に第二種電気工事士の資格を活かして転職する場合、実務経験が必要となりますが、現場責任者クラスの求人に応募することで年収アップにつながります。実務経験がない場合は、電気工事士のアシスタントとして、作業の補助を担当しながら経験を積み、知識や技術を身につけながらキャリアアップを目指しましょう。転職直後の年収アップには期待できませんが、実務経験を積むことで着実にキャリアアップできる職種なので、20代後半まで方には適した転職先です。
資格が無くても活躍の場が広がる「営業職」
建設業界の営業職は、主にBtoBの法人営業です。
BtoB営業の中でも、建設業界は単価が高く、数億円から数千億円にもなることがあります。また、数年~数十年にわたるプロジェクトが多く、意思決定も複数人で慎重に行われます。
一見、敷居が高そうな建設業界の営業職ですが、常に人材不足に悩まされる業界だけに、参入のハードルは想像以上に低いのです。
また、建築・不動産の知識が半ば強制的に身につく環境であり、売上が年収に直結する実力主義と相まって、年功序列に関わらず努力次第で年収の大幅アップも夢ではない職種と言えます。
既に建築や不動産の知識が少しでもあれば転職に有利ですし、他業界の営業に比べてキャリアアップを目指しやすいのが建設業界の営業職の特徴です。
そのため、仕事に打ち込みたい、何が何でも稼ぎたい、という方におすすめの転職先です。
キャリアを活かした志望動機例
前職では他業種で法人営業をしており、新規開拓を行いつつ、お客様と密にコミュニケーションを取りながら信頼関係を築いてきました。
貴社では、新規顧客開拓においてはもちろん、各協力会社様との信頼関係の構築という面でも、これまでの経験を活かせると思っております。専門知識を学んだ経験や実務経験はありませんが、現在、土木設計や構造力学の入門書を読んで勉強中です。
建設業界から他業界へ
施工管理から購買管理へ
製造業における購買管理は、建設業における施工管理の経験を活かしやすい仕事です。
購買管理は、適切な品質の資材を適切な量、適切なタイミングで調達する仕事です。施工管理職は品質管理や原価管理など、購買管理に共通する業務が多く、現場とのコミュニケーションも欠かせないため、培ったスキルを活かしやすく、即戦力として活躍しやすいことが挙げられます。
また、建設業に比べ、製造業は比較的ホワイトな環境が整っています。勤務時間や休日が固定されているため、ワークライフバランスが取りやすいことも、製造業の魅力です。
法人営業
営業職は年齢や経験を問わないことが多く、採用のハードルも低いため、異業種の方でも転職しやすい職種です。肉体労働である建設業の経験者は、体力や忍耐力、フットワークの軽さなどから、営業職に向いていると評価されやすい傾向にあることも理由のひとつです。
特に、施工管理や現場監督などはコミュニケーション能力が必須なため、営業職でも役に立ちます。建設業界にはないワークライフバランスを求めるのであれば、給与水準を劣りますが、異業種の法人営業はおすすめです。
未経験からの転職~建設業界でステップアップするには
人材不足により職種問わず未経験採用が活発
厚生労働省から発表された一般職業紹介状況で、2021年の建設技術者の有効求人倍率は6.01倍というデータからも、建設業界が人材不足に陥っていることがわかります。
また、技術者の高齢化も相まって、若手の採用や育成が課題となっている企業も少なくありません。
そのため、近年では準大手・中堅ゼネコンでも未経験採用が活発化している動きがあります。
例えば、転職エージェント「doda」で、「施工管理 未経験」で検索すると、約4000件もの求人掲載がヒットします。
このように、業界全体の動きとして、若手人材確保のため、未経験採用の強化や待遇改善などの対策が始まっています。
よって、今現在は建設業界へ参入するには丁度いいタイミングとも言えます。
建設業界は働きながらキャリアアップしやすい
未経験の中途採用で建設業界へ参入すると、一時的に収入が下がってしまうことは避けられません。
しかし、建設業界は働きながら資格取得や現場経験を積むことでキャリアアップしやすい業界でもあります。
例えば、施工管理職であれば、補助をしながら現場経験を積み、現場監督という責任あるポジションまでキャリアアップすることも可能です。資格取得やスキルを磨くことで、目に見えて昇進することができるため、長く活躍できる業界といえるでしょう。
まとめ
建設業界は、資格や現場経験がキャリアに直結する業界です。
とにかく経験を積むことが求められますので、建設業界へ参入を考えている方は、早めに転職することで生涯年収をアップすることができます。
まずは、転職サイトや転職エージェントで希望職種の求人を探してみてはいかがでしょうか。