外資系企業への転職を志す方にとって、英語面接対策は重要だ。これまで日系企業でキャリアを形成してきた方は、英語力に不安を抱える方も多いであろう。
もちろん語学力が高いに越したことはありませんが、全てのポジションで最上級の英語力が求められているわけではないのです。特に中途採用では、現場で求められる英語力に達しているかを、面接で判断することが多いです。
そう語るのは、米国サンフランシスコ発、急成長中の最先端データプラットフォーム企業であるSplunk Japanのリクルーティング全般を担当する李 勇希(りー・ゆうき)さん。李さんは、外資系転職エージェントで6年間、外資系企業を中心に採用業務の支援を行ったあと、日本オラクル株式会社で4年間、採用スペシャリストとしてキャリアを積み上げてきた。
外資系企業の採用を経験するなかで、これまで数千名を超える求職者と出会った李さんに、英語面接で今日から使えるコツを聞いた。
私自身も、10年以上前は英語力ゼロの状態でした。転職活動をきっかけに、英会話教室で一年間英語を猛勉強して、何とかTOEICで845点を取得。それ以来英語を使う仕事をずっとしているので、これから英語を学習し、面接対策をする方の苦労がわかります。
※発言はご本人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。
TOEICの点数よりも、求人ポジションで求められる英語力を満たしていることが重要
TOEICは、ビジネス英語に使われる表現や単語力をつけるために有効だが、採用の現場では必ずしもTOEICのスコアのみが重視されているわけではない。
確かに、一年以内に受けたTOEICが600点以下の場合、自らリーダーシップを取って会議を仕切るような役割は厳しいかもしれません。しかし、英語を使う機会が、理解のある外国人マネージャーと一対一でのやり取りに限られ、日常業務はメールのやり取りだけで済むようなポジションであれば、たとえTOEICのスコアがそれほど高くない方でも、一度面接をさせていただく場合もあります。
実際、10年くらい前に受けたTOEICが500点で…という方でも、面接で英語力をチェックさせていただいたところ、現場で求められるレベルを超えており、採用まで至ったこともありました。
英語面接の具体的な対策として重要なポイントは何だろうか。面接官にとって理解しやすい、面接対策で使える英語について聞いた。
Tips1.「I~」ではじめすぎない
英語面接に慣れていない方が陥りがちなのは、文章を「I~」ではじめすぎるパターンだ。
文法的に間違っているわけではありませんが、『I think, I want~』を連発すると、たどたどしい印象で相手に不安を抱かせてしまうかもしれません。たとえば、私は仕事で~~を実現したいです、と伝えたい場合は、『I want to ….in my career』を『What I want to achieve in my career is...』のように言い換えることで、達成したいことをスマートに強調できますよ。
「I~」を使わずに言える、おすすめの例文は以下の通り。
英文 | 日本語の意味 |
---|---|
What I want to achieve in my career is ... | 私が仕事で実現したいことは... |
What inspired me was ... |
私をインスパイアしたものは...です (私を触発させたのは~です) |
That experience brought me to … | この経験がもたらしたものは... |
That excitement I had led me to ... | ここで得た感動が私を...に導きました |
What I believe in my career is ... | 私が自身のキャリアの中で信じることは...です |
What I specialize in is ... | 私が専門性を持っているのは...です |
The greatest thing I’ve achieved was ... | 私が最も成果を出したのは... |
What I’d like to emphasize here is ... | ここで私が強調しておきたいのは... |
The highlight of the project was ... | このプロジェクトの山場は... |
My core responsibilities in the team were ... | チームの中で私が果たした主な責任は... |
My role was ... | 私の役割は... |
A time that I took initiative was ... | その時私が主体的に行ったのは... |
My career goal in 10 year’s time is ... | 私の10年後のキャリアプランは... |
Tips2.many, a lot of … ⇒具体的な数字へ言い換え!
I~の多用に次いでありがちなのは、「many」「a lot of」などの多さ、豊富さを伝える形容詞だ。
many, a lot of...などは、中学校で習う表現でもあり親しみのあるフレーズですが、その後に具体的な情報を伝えなかった際は、適当に話しているような印象を与えてしまいます。many, a lot of, variety of など、抽象的な表現を使う際は、誤解を避けるためにも、必ず具体的な数字や事実とセットにしたほうが良いでしょう。
気を付けた方がよいワード | 日本語訳 | 避けた方が良い理由 | 回避方法 |
---|---|---|---|
many/a lot of ... |
たくさんの … 多くの … 豊富な … |
この後に具体的な情報を伝えなかった際、 自己分析をしないで適当に話しているような印象を与える |
1.なるべく避ける 2.具体的な情報を伝える |
variety of ... | さまざまな .... | 同上 | 同上 |
get involved ... | ... に関わりました |
実際何をやったの?と思われる。 自分の責任が不明確でマイナス。 ※「~に携わりました」の直訳で使う人が多いので注意 |
「My core responsibilities in the team were …」 「I participated in the team as a ...」 「The team/project I belonged to was …」 など責任の所在を明確にする言葉に置き換える |
Tips3.つなぎ言葉&前置きでこなれた印象に
更に便利に使えるテクニックとして、「つなぎ言葉」がある。
たとえば、『on the other hand(~の一方で)』『in addition to ...(...に加え)』などのつなぎ言葉を使うと、話の流れが綺麗になりますよ。また『additionally』などの副詞をつなぎ言葉として文頭に持ってくるのも、こなれた印象になります。
便利に使えるつなぎ言葉 | |
---|---|
on the other hand | 一方で |
in addition to ... | ... に加え |
to put it in a nutshell | 簡単に説明すると |
having said that | とはいえ |
in that sense | そういった意味で |
again | 繰り返しになりますが |
文頭に持ってくると便利な副詞 | |
---|---|
additionally | さらに |
ultimately | 最終的に |
more importantly | さらに重要なのは |
surprisingly | 驚くべきことに |
completely (utterly) | 完全に、まったく |
Tips4.日本語でモヤっとすることは英語でもしない
「As I said」「As you know」など、覚えやすいが繰り返しすぎるとモヤっとさせるフレーズにも注意が必要だ。日本語でも、「私が申し上げた通り…」「ご存じの通り…」を多用されると違和感を感じる方は多いはず。ビジネス向けの、柔らかいニュアンスの表現に言い換えるのがおすすめだ。
繰り返しすぎないほうが良いフレーズ | 日本語訳 | より柔らかい表現 |
---|---|---|
As I said As I told you Like I said |
申し上げた通り |
Again,(繰り返しになりますが) As I mentioned earlier 先ほど(早い段階で)申し上げましたが… |
As you know | ご存じのとおり | 人間関係が出来上がっていない人には、なるべく避けた方がベター |
外資系チャレンジできる?Q&A
最後に、外資系企業の採用事情について気になるポイントを、一問一答式でお答えいただいた。
Q1.前職で英語を使っていなかった場合でも、外資系企業に転職するチャンスはありますか?
A.
前職での英語使用経験は、確かにかなり大きなプラスになります。しかしそういった方ばかりではないことは採用側もよく知っています。多くの方は週何度か数十分の英会話のレッスンを受講したり、海外ドラマのセリフを暗唱したりなど、仕事以外の場で英語を習得し、その結果面接をパスするケースもかなりありますよ。
Q2.やっぱり留学経験アリの方、帰国子女の方のほうが有利なんですかね…?
A.
留学経験がある方や帰国子女の方は、英語力はもとより発言力の面で優れていることが多く有利です。社会人経験2~5年くらいの若手であれば、海外経験を評価され、有利に選考が進むことはあります。
しかし、一定以上の経験を求めるポジションでは、英語力よりも、ビジネス経験が重要です。面接官は、そのポジションで必要とされる特定のスキルや、仕事での実績を重視しています。
海外経験があれば偉い、日系での勤務経験があれば偉い、という訳ではなく、両方重要です。(そしてもちろん両方完璧である必要はありません)
Q3.リクルーターの方って、どんな風に話を切り出すんですか?応募者、候補者との最初の会話は?
A.
リクルーター業務の性質上、黙って応募者を待つのではなく、私からアプローチすることがほとんどです。なので実際はこんなことから聞き始めます。
- いまアクティブに転職先を探しているか、それともいい話があれば聞いてもいいかなと思っているか
- もし後者なら、そう思い始めたきっかけどんなものか(今転職を考えていなくても、何か変化を求めようとしたきっかけが必ずあるはず)
- 現職企業でやれていること、面白いと感じていることを聞いた上で、その中で足りていないもの、本当はもっとこれができたらいいのに!と思えるような、プラスアルファの要素は?
Q4.面接官の方に「響く」のってどんなポイント?
A.
少し大げさな言い方になりますが、『私が今日面接に来た理由は~です』と言える方は、強いと思います。これが言えるのは、『今日私がこの仕事をしている理由は~です』と言える人です。
自分が何のために日々を過ごしていて、何のために行動をしているか、何のために人と会っているか。これが分かる人の言葉はいつも的確で、面接官に非常に響きます。
これを元にして、自分の経験、自分のスキルを、事実を元にして話せることが大事です。
事実を基にして話す、というテーマについて、こちらの記事で李さんに詳しくお聞きしたので、ぜひご覧頂きたい。