エグゼクティブ転職とは?
2010年あたりからよく見かけるようになった「エグゼクティブ転職」というフレーズ。
エグゼクティブ転職とは、上級管理職(経営者、役員など)の転職を指します。
稀に年収800万円以上の求人を指してハイクラス転職とも言われますが、おおむねエグゼクティブ求人と同義とお考えください。
エグゼクティブが転職を選択する理由の多くが、ひとことで言うと「自己実現」となっています。
いまの会社以外で新天地を選ぶとなった際に重視すること
重視すること | 回答割合 |
---|---|
自分が成し遂げたいテーマの実現ができるか | 64.7% |
社会的に意義がある事業、仕事か | 53.3% |
自分のミッションと会社のミッションが合致しているか | 48.5% |
年収が上がるか | 43.5% |
社会に影響を与えられるか | 38.9% |
スキルアップできるか | 32.1% |
組織が安定しているか | 13.6% |
肩書が上がるか | 9.1% |
(引用元:出世ナビ 次世代リーダーの転職学)
エグゼクティブ転職の失敗例は多い
経営者JPが経営者・管理職を対象に行なった調査データによると、エグゼクティブ・ハイクラス転職を失敗だったと感じている方は実に46.8%も存在します。
経営層・管理職が転職後に失敗したと感じたことの有無 | 回答割合 |
---|---|
失敗したと感じたことがない | 53.2% |
失敗したと感じたことがある | 46.8% |
(引用元:出世ナビ 次世代リーダーの転職学)
その最大の理由は「社風が合わなかったから」(16.8%)が最多。
社風のミスマッチを回避してエグゼクティブ転職を成功させるにはどうすれば良いのでしょうか。
ハイクラス求人は外資がほとんど
結論から申し上げますと、2019年現在の日本においてエグゼクティブ転職・ハイクラス求人案件の7割前後が外資系企業です。残りの3割が日系企業となります。
そこでまずは外資系企業へのエグゼクティブ転職の実態を解説します。
終身雇用が崩れてきたとはよく言われますが、外部から上級管理職を登用して部門や部下を任せる日系企業はまだまだ少ないです。
日系の大手企業にお勤めの方でしたらご理解いただけるかと思いますが、すでに管理職ポストは飽和状態です。
35歳前後から同期・後輩との厳しい出世レースにさらされ、ようやく勝ち抜いた生え抜きを出し抜いてまで転職組が採用されるのはよほど特殊なケースです。
部下・後輩の育成や和を重んじる日系企業の企業体質的も障害になって、転職で入社した上司・リーダーに周囲が共感しないという背景もあります。
厚生労働省の調査によりますと、日本の転職市場において求職者に期待されているのは「管理的な仕事」ではなく「専門的・技術的な仕事」であり、この傾向は大企業になればなるほど顕著です。
今後3年間に採用する予定の転職者の職種
管理的な仕事 | 専門的・技術的な仕事 | 事務的な仕事 | 販売の仕事 | サービスの仕事 | 生産工程の仕事 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1,000人以上 | 23.0% | 81.5% | 48.2% | 15.5% | 11.4% | 20.2% |
300人~999人 | 17.3% | 68.1% | 39.8% | 16.1% | 17.7% | 18.1% |
100人~299人 | 15.1% | 55.1% | 29.9% | 20.1% | 18.2% | 19.4% |
30~99人 | 13.8% | 50.0% | 23.7% | 23.5% | 24.9% | 14.8% |
(引用元:厚生労働省 平成27年転職者実態調査の概況)
逆に欧米企業の場合、「管理職」はあくまで職能のひとつであり、必ずしも新卒・生え抜きである必要性は無いという考え方ですから、幹部クラスの社員を外部から登用することに抵抗がありません。
外資系企業社員からしても昨日までのボスが急に変わったり外部からやってきたり当たり前の日常として受け止められています。
また、彼らは「直属のボスが自分の評価を決める」ことが分かっていますから、多くの日本人の想像に反して露骨に上司に媚びを売るのが上手で、中途入社の管理職からすればやりやすい環境といえます。
結果として日系企業による上級管理職の求人は希少で、エグゼクティブ転職・ハイクラス求人案件の多くを外資系企業が占めています。
余談ですが、そのような背景にありなが、ここ数年急速に「ハイクラス転職」「エグゼクティブ求人」というフレーズを見かけるようになった背景には人口が減少する中、欧米の企業文化を根拠にしながらなんとかして転職市場を拡大させたいという人材紹介会社の思惑が見え隠れします。
外資では年収が倍になることも珍しくない
外資系企業からのオファーはおしなべて高額です。
外資の出身者は外資系企業間の渡り鳥となることが多く、日系企業で実績を上げて日本市場を熟知しているエグゼクティブ人材は外資系企業にとって貴重です。
外資系企業は期待度の高い人材に対しては惜しみなく報酬を出します。
実績を上げた方に対してヘッドハンターから現年収の倍近いスカウティング・オファーが届くこともあります。
外資系企業へのエグゼクティブ転職のリスク
高年収は確かに魅力的ですが、外資系企業への転職にはリスクもつきまといます。
成果に対するプレッシャー
外資系企業は成果に対するプレッシャーが強く、目標の未達が続けば年俸ダウンや降格は必至です。
外資系企業とはいえ日本の法律に従わなければなりませんので一般に想像されているほどレイオフ(解雇)はありませんが、成果が伴わない事業部に対する見切りは早く、任されていた部門ごと撤退・閉鎖といった憂き目に合うことは珍しくありません。
日本市場に理解が無い本社へのアピールが重要
外資系企業はアピール社会です。
特に立ち上げたばかりでトラクション(売上)の無い事業部では「いかに自分と自分のチームが成果に貢献しているか」を本社に対してアピールし続けることが生き残りの鍵です。
また、外資系企業は実質的に欧米の会社の日本支部(販社)なわけですが、目標を指示する本社のメンバーは日本市場に対する理解がありません。
そのためときには日本の文化に合わない理不尽な要求に対してロジカルにはっきりと反論し、自分とチームのポジションを守ることも大切です。
思慮深いことが美徳とされる日本企業の文化とはかなり違う部分なので、日系企業出身社がつまずきやすいポイントです。
なお、外資系企業への転職について詳しく話を聴きたければ、同じく外資系の転職エージェントであるJACリクルートメントの利用がおすすめです。
冒頭にお伝えした通り、エグゼクティブ・ハイクラス転職を失敗だったと感じている方の理由の多くが社風のミスマッチ。日系企業から外資への転職では社風が大きく異なります。
高額な年収だけに惑わされず、外資特有のカルチャーがあなたに合っているかどうかを慎重にご判断ください。
日本企業へのエグゼクティブ転職を目指す場合
それでは外資系企業を避け、数少ない日系企業でのエグゼクティブ転職を希望する場合はどうすれば良いのでしょうか。
鍵は「グローバルでの実績」と「人脈」の2つです。
グローバルでの実績
近年、ハイクラス求人が広がりを見せているのが、日本企業のアジア圏向けビジネスに関わる転職です。
特にアジア圏での駐在経験や、現地法人との折衝経験、新規事業の深耕実績など、アジアグローバルで活躍された実績をお持ちの方はチャンスです。
アジアでの拡販を狙う上場企業やメガベンチャーから裁量権ある職務を好条件でオファーされることも可能です。
こうした日系企業のハイクラス転職案件について相談できるエージェントをお探しの場合は日系ハイクラス求人に特化してサポートしているリクルートダイレクトスカウト(旧:CAREER CARVER)をパートナーに選ぶのがおすすめです。
人脈
結局のところ、30代以上の転職者が期待されているのは「即戦力」として成果を上げることです。
ことエグゼクティブについていえば、いきなり管理職を任せることが難しい日本企業の特性上、個人として若手には真似できない強みが求められます。
その代表例が「人脈」です。
営業職の場合はわかりやすいですが、それ以外にも学会との結びつきが重要な医薬品もしくは医療機器業界や、カンファレンスやセミナーを通じてコミュニティが形成されやすいIT業界など、どんな業種・業界でも「人脈」の重要性は変わりません。
仮にあなたにとってありふれたものであったとしても、ご自身が培った人間関係がそれだけで価値になる職場は意外と身近にあるものです。
(もちろん顧客データの持ち出しはコンプライアンス違反ですのでご注意ください)
「相談すること」の重要性
経営者JPが経営者・管理職を対象に行なった調査データによると、エグゼクティブ・ハイクラスであるほど、ご自身の転職について誰にも相談しない傾向にあるそうです。
転職でまず最初に相談する人
重視すること | 回答割合 |
---|---|
誰にも相談しない | 22.8% |
家族 | 18.6% |
エージェント | 14.4% |
友人 | 13.8% |
知人の経営者 | 7.5% |
メンター | 3.8% |
上司 | 0.9% |
同僚 | 0.1% |
(引用元:出世ナビ 次世代リーダーの転職学)
肩書が上になればなるほど、ご自身の進退について真剣に腹を割って相談できる相手が少ないということなのでしょうか。
これは非常に危険です。
例えば家族。せっかく転職活動の準備をして内定までいただいたのに、いざ転職となった時に奥様から難色を示され、頓挫することは非常に多いのです。(俗に言う嫁ブロック)
特に、転職エージェントの利用を避けるべきではありません。
彼らは前述の通りエグゼクティブ転職の失敗要因としてもっともポピュラーな社風のミスマッチを回避するために有用です。
また、日系企業の非公開求人を見るには転職エージェントを利用するしかありません。
注意しなければいけないのは、斡旋実績をあげたいばかりに希望していない求人ばかりを押し付けてくるエージェントも一定数存在することです。(日系企業を希望しているのに案件が無いために外資系求人ばかりを推薦される、など)
最近ではリクルートダイレクトスカウト(旧:CAREER CARVER)やJACリクルートメントなどエグゼクティブ・ハイクラスの求人に特化した転職エージェントも現れていますので、こうしたサービスがおすすめです。
リクルートダイレクトスカウト(旧:CAREER CARVER)は日系企業への転職に強く、JACリクルートメントは外資系案件が豊富です。
一度エグゼクティブ転職を覚悟すればそれはもう片道切符です。前職へ戻ることは現実的ではありません。
年収や役職だけに惑わされず、自分が成し遂げたいテーマの実現ができるかどうか、ご自身が定年まで活躍できる職場かどうか、第三者にご相談の上で慎重にご判断ください。