【連載】大学の施設ってどうやって管理してるの?大学を支える大学職員の仕事内容


ライター:土岐光
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大学のキャンパスは非常に広く、いくつもの施設が建っています。これらの施設や設備は一体どのようにして管理されているのでしょうか。
「キャンパス内の施設管理は外部業者にお任せ」ではなく、大学の施設課という部署で管理されています。

この記事では大学の施設課がどのようにしてキャンパスの施設や設備を管理しているかを解説しています。さらに施設課の大学職員が行っている仕事内容についても紹介します。

結論、施設課の仕事内容は設備の保守点検だけでなく、キャンパス内の施設計画や予算管理、セキュリティ対策など安心してキャンパスライフを過ごすために必要なことをさまざま行っています。

大学の施設や設備を管理するのが施設課の仕事

大学のキャンパスにある施設や設備は施設課が管理しています。大学が所有する施設・設備は非常に数が多く、規模も大きいためとにかくたくさんの仕事があります。

大学の施設課が行っている主な業務は次の6つです。

  • キャンパス内の施設改修計画を立てる
  • 施設設備の建築や補修点検に係わる予算を管理する
  • 施設や設備の定期メンテナンスを行う
  • 防犯対策などのセキュリティ管理をする
  • 施設予約を管理する
  • 地球環境に配慮した環境活動を行う

施設課で行う業務は専門知識が必要で大規模な修繕計画や予算管理が求められます。キャンパスを利用する学生や教職員などすべての人の生活を支える非常に重要な仕事です。

大学の部署は主に教員や学生と日常的に関わる教学系部署と大学経営に関わる法人系部署のふたつに分かれます。
その中で施設課は人事部・経理部・総務部など会社機能を持つ法人系部署のひとつで大学を学校法人の経営面から幅広く支えています。
出典:大学職員になる「あなたが知らない大学職員の仕事内容を紹介!業務で活きる意外なスキル3選

そんな学生が普段知らない施設課はどんな業務をしているのでしょうか?
施設課で働く大学職員の仕事内容を順番に紹介します。

施設課はキャンパス内の施設を管理して改善計画を立てる

施設課はキャンパス内にあるすべての施設を管理し、どこにどれだけの設備があるかを把握しています。大学が教育活動や研究活動を行うために、施設の管理や設備の充実は非常に重要です。キャンパス内の需要に応じて最適な施設の建設や設備の充足を計画することが求められます。

例えば新しい施設を建設するだけでなく、バリアフリー対策などの既存施設のリノベーションやキャンパス内におけるエネルギー効率の向上などを見込んだ改修などを計画します。
キャンパス内の改善計画は施設課で働く大学職員だけが決めるのではなく、全学生を対象とした学生生活アンケートの回答結果や理事会などの方針をもとに施設改善の方針を考えています。

予算管理で限りある資源を有効活用することも施設課の重要な役割

大学の施設を新設するためには数億円規模の予算が必要になります。日常的に発生する施設のメンテナンスや改修費用なども見越して予算管理をしなければいけません。
設備や資材などを発注する際は新たに購入するだけでなく、今ある学内の設備を有効に利活用できないかあらゆる手段を検討します。

施設課の大学職員にとって、限られた予算内で新設や改修メンテナンス、物品購入、リサイクルなどのバランスを考えて適正な予算執行をすることが重要な仕事です。

キャンパス内のあらゆる要望に対して、本年度中に対処するべき内容か、あるいは来年度以降に回しても良い内容かを判断して優先順位を決めてキャンパス内の施設設備計画を行い予算配分や管理をしています。

キャンパス内のあらゆる施設メンテナンスを施設課が行っている

施設課では施設の定期メンテナンスや修繕作業を計画し実施までを担当します。大学のキャンパスが広くなればなるほど定期メンテナンスや修繕にかかるコストは大きくなり、優先順位をつけた計画的なメンテナンスが重要になります。

具体的には次のような定期メンテナンス修繕作業を行ないます。

  • 設備機器の点検や保守
  • 機材やタイル材などの修理
  • 教室などキャンパス内の清掃
  • 池や緑地の維持管理

施設・設備の定期的な点検や保守作業は膨大な作業量になるため、すべてを施設課の大学職員が行うことはなく、学外の専門業者に委託します。

キャンパス内に何機もあるエレベーターの定期点検や緑地の剪定作業、池や水槽の清掃作業、降雪時における定期的な除雪作業などについては専門業者に委託するために仕様書を作成したり契約管理なども行います。

このように施設課で働く大学職員にはキャンパス全体を見渡す鳥のような視野と修繕箇所をピンポイントで発見するために虫のような視点の両方が必要になります。

状況に合わせて瞬時に視野や視点を切り替えられる人が施設課の大学職員に向いています。

緊急避難場所の確保やセキュリティ面でキャンパスの安全を確保する

大学の施設を管理する施設課では災害時などの緊急避難場所をキャンパス内に確保し、避難経路の周知を行ないます。万が一に備えて、日頃から避難経路図などをキャンパス内のいたるところに設置することも施設課の仕事です。

大学のキャンパスは地域に開かれた環境のため、防犯カメラや監視カメラの設置などセキュリティ対策が重要です。地域に広く公開するエリアと関係者のみ立ち入りができるエリアを分けてキャンパス管理棟などで監視カメラ映像を確認しています。

学生や教職員だけでなく、地域住民や学外からのお客様などが安心してキャンパスで過ごせる環境を作ることが施設課にとって大切な役割です。

効率的な施設利用をめざして予約管理や貸出業務を行う

施設課ではキャンパス内の施設の予約管理なども行います。各学部が授業を行う教室だけでなく貸会議室や運動スペースの貸し出しなどを行ないます。
主に学生や教職員を中心に貸し出しを行ないますが、民間企業との共同研究など外部のプロジェクトに対しても大学の施設を貸し出しています。

これからは環境に配慮したキャンパス運営が求められる

最近では地球温暖化の影響や環境への配慮からCO2削減や再生可能エネルギーの利用を求める動きが強くなっています。環境に配慮した事業活動を行うことは民間企業だけでなく大学にも求められています。

このような社会的動向を受けて施設課ではこれまで通りの施設管理ではなく、CO2削減や太陽光発電など再生可能エネルギーの利用に向けて新たな取り組みを企画して実行しています。

具体的には寿命の長いLED電球にキャンパス内のライトをすべて交換するなど対策をしています。このほかにもソーラーパネルを設置して得られる再生可能エネルギーをキャンパス内で利用するなど幅広い取り組みを行っています。
最近では「本日の再生可能エネルギー発電量」などの環境に配慮した指数を大学公式ホームページで掲載している大学も数多く見られます。

施設課の大学職員には専門知識だけでなく他者にお願いする能力が求められる

施設課の業務を遂行するために、大学施設管理者はさまざまなスキルや知識を持つ必要があります。施設課で働く大学職員に求められる能力は次の6つです。

  • プロジェクト管理
  • 予算管理
  • 施設保守やメンテナンスの知識と経験
  • コミュニケーション能力
  • 問題解決能力
  • 優先順位をつける判断力

普段当たり前のようにキャンパスで生活していると施設や設備に意識して注目することはありませんが、学生の知らないところで施設課の大学職員が定期点検やメンテナンスを日々行っています。

大学で過ごすすべての人が安心して生活できるようにキャンパス内の隅から隅までを整理して管理することが施設課の仕事です。

大学のキャンパスに行く機会があれば、施設や設備に目を向けて施設課の大学職員がどのような仕事をしているのか想像しながらキャンパスを歩いてみましょう。きっと新たな発見がたくさんあります。

まとめ:施設課は大学の当たり前を支える縁の下の力持ち

施設課ではキャンパス内のすべての施設や設備を管理しています。大学の建物というのは建設費がとてもかかるため、「建てたらそれで完成」と思われがちですが建物にはライフサイクルコスト(LCC)という考え方があります。

建物のライフサイクルコストは竣工後から解体廃棄されるまでの期間に建設費のおよそ3倍から4倍の費用がかかるといわれています。建物の運営や修繕更新を計画的に行うかどうかで発生する費用や寿命は大きく変わります。建物にかかる費用は建設費のほか運営費、一般管理費、保全費、修繕更新費などがあります。
出典:鹿島「建物のライフサイクルコスト(LCC)を知りたい

施設課で働く大学職員は保守点検のためにキャンパス内を歩きまわるため非常に体力が必要になります。さらに新たなキャンパス施設計画などの際は、ただ、ハコモノをつくるのでなく、利用者がどのような目的で利用するかを考え、施設内の動線やレイアウトに至るまでを計画します。
このように施設課では関係する部署と何度も打ち合わせをして計画的な企画立案が必要になります。

通常は注目されることが少ない大学の施設課ですが、その仕事内容は学生を支えるだけでなくキャンパスに訪れるすべての人や近隣の地域住民を支える仕事です。
仕事で取り扱う規模も大きく、影響を与える範囲も広いため物事を大きなスケールで考えたい人にとってやりがいのある仕事です。

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